地域と食の本質に向き合う――夢まるGaRDeNが描く「本当に安全な食」のかたち
株式会社夢まるGaRDeN 代表 牛越 紀幸氏
鹿児島県・種子島に拠点を構える株式会社夢まるGaRDeNは、養鶏から加工・販売までを一貫して手がける農業事業者です。鶏の飼育から卵・鶏肉の提供までを自社で完結させる体制を築き、一般消費者および卸先へ商品を届けています。今回の取材では、代表の牛越紀幸氏に、事業の成り立ちや経営に至る背景、そして食に対する強い想いについて伺いました。
一貫生産で届ける、こだわりの卵と鶏肉
――現在の事業内容について教えてください。
鶏を育て、その鶏から卵と肉を生産し、自社で商品化してお客様に届けるところまでを一貫して行っています。生産から販売までを自分たちの手で完結させることで、品質を担保しながら商品を提供しています。
――主なお客様について教えてください。
主なお客様は一般の個人の方になります。あわせて卸売も行っており、業者様への販売もあります。割合としては卸と小売が半々程度です。
サラリーマン時代の違和感から農業の道へ
――経営の道に進まれたきっかけを教えてください。
もともとサラリーマンとして働いていましたが、子どもと過ごす時間を犠牲にして働くことに疑問を感じていました。生活のために働くのであれば、自分たちで食べるものを作る方がいいのではないかと考えるようになり、農業を志しました。
しかし、農家の出身でない人間が新たに農業を始めるにはハードルが高く、調べていく中で種子島は比較的参入しやすい環境であることが分かり、移住を決意しました。その後、農業を辞めたいという方と出会い、タイミングが一致したことで第三者承継という形で事業を引き継ぎました。農業を始めるために種子島へ来た結果、養鶏業を引き継ぐことになったという流れです。
――事業承継において印象的だったことはありますか。
売買契約を結んで事業を引き継ぎましたが、前事業者の財務状況が開示されないという条件がありました。通常であれば判断材料として重要な情報ですが、その条件を受け入れたことは反省点でもあります。ただ、その条件があったからこそ現在の規模の事業を引き継ぐことができたとも考えており、結果的には大きな価値があったと感じています。
夫婦二人三脚で支える現場と経営
――現在の組織体制について教えてください。
現在は夫婦二人で運営しています。妻は主に配達業務と、鶏を食肉に加工する工程を担当しています。私は経理や仕入れ、鶏の世話、畑の管理など、生産と運営全般を担っています。ほぼすべての工程を自分たちで行っている状況です。
――日々の業務の中で意識されていることはありますか。
生産から販売までを自分たちで担っているため、一つひとつの工程に責任を持つことを大切にしています。効率だけでなく、自分たちが納得できる品質を維持することを重視しています。
小規模農家としての生き残り戦略
――今後の展望について教えてください。
小規模農家が生き残るためには、販売先の拡大が不可欠です。特にJAに依存せずに事業を続けていくためには、自分たちで販路を広げていく必要があります。そのため、卸売と小売の両面で顧客を増やしていきたいと考えています。
また、自社の強みをより多くの方に知っていただくために、SNSマーケティングの活用も検討しています。費用対効果の面でも有効な手段だと考えており、今後は積極的に取り組んでいきたい分野です。
――どのような取引先を開拓していきたいとお考えですか。
素材にこだわる飲食店や菓子店など、商品の価値を理解していただける方とご縁を築きたいと考えています。単に卵であればよいという需要ではなく、品質や背景に価値を見出していただけるお客様に届けたいという想いがあります。
――現在の課題について教えてください。
島内の需要には限界があり、すでに頭打ちの状態です。そのため、島外への販路拡大が大きな課題となっています。ただし、営業活動にはコストがかかるため、効率的なアプローチ方法を模索している段階です。どのように認知を広げ、価値を伝えていくかが今後の重要なテーマです。
「安全」の本質を問い直す――食への強い想い
――事業を通じて実現したい社会について教えてください。
食の生産に関わる中で、日本の食品に関する規制や実態に疑問を感じるようになりました。海外では使用が制限されているものが日本では認められているケースもあり、消費者がその実態を知らないまま食品を選んでいる現状があります。
例えば養鶏業では、飼料に薬剤が含まれていることも一般的です。効率を重視した生産体制の中で、それが当たり前になっていますが、私たちはそうした方法を採用せず、投薬に頼らない生産を行っています。
国が定める「安全」と、自分たちが考える「安全」は必ずしも一致しません。私たちは、できる限り自然に近く、余計なものを含まない食品こそが本来の安全であると考えています。
現在の市場では、価格の安さが重視されがちですが、その結果として品質の高い商品が選ばれなくなる可能性もあります。消費者一人ひとりが選択を見直し、価値あるものに対して対価を支払う意識を持つことが、日本の農業や食の未来を支えることにつながると考えています。
読者へのメッセージ
――最後に読者へのメッセージをお願いします。
日本でも数少ない、投薬ゼロで平飼いによる養鶏を行っている農家です。ストレスの少ない環境で育てた鶏から生まれる卵と鶏肉には、品質に自信があります。ご興味をお持ちいただけましたら、ぜひ一度お問い合わせください。