生活に寄り添う一枚を描く――画家・本部琢己氏が追い求める“嘘のない絵”

アートホンブ 画家 本部 琢己氏

油絵を通して、人物や動物を描き続けているアートホンブの本部琢己氏。展示作品の販売に加え、依頼者の思いや暮らしに寄り添ったオーダー制作にも取り組んでいます。特にペットや家族を題材にした作品には、単なる肖像画ではなく、その人が見ている世界や感情まで映し出したいという思いが込められています。本記事では、本部氏が絵を描く理由や作品制作へのこだわり、今後の展望について伺いました。

人物や動物を通して、暮らしに馴染む絵を描く

――現在の事業内容について教えてください。

現在は、油絵作品の展示販売とオーダー制作を中心に活動しています。依頼を受けて「こういう絵を描いてほしい」とご相談いただくことも多く、完成した作品を見て喜んでいただけることにやりがいを感じています。

展示している作品を気に入って購入してくださるお客様もいらっしゃいますが、自分としては、依頼者の方が本当に喜べる作品を届けたいという思いが強くあります。そのため、注文制作には特に力を入れています。

――作品制作において、こだわっている点を教えてください。

人物画や動物の絵を描くことが得意だと思っています。特にペットを描いてほしいという依頼では、実際に喜んでくださったお客様もいらっしゃいました。

写真という形でも思い出は残せますが、油絵にはまた違った魅力があります。絵として空間に置かれることで、生活の中に自然と馴染み、時間をかけて存在感を持っていく感覚があるんです。いつも一緒にいたいと思う動物が、絵として購入者のそばにいてくれたら、自分も嬉しいですね。

また、単に見た目を再現するのではなく、その人や動物が持つ空気感まで描きたいと思っています。依頼者の方がどんな気持ちでその存在を見つめているのか、そこを大切にしています。

“自分の表現”を求めて選んだ絵の道

――絵の道に進まれたきっかけを教えてください。

学生時代に将来について考えたとき、大きな組織の中で働くことに、どこか違和感を持っていました。もちろん会社員として働いた経験もありますが、自分が「こうしたほうがいい」と思ったことを、自分の考えで形にしたいという思いが強かったんです。

音楽にも興味はありましたが、油絵は一人で向き合いながら、自分の感覚で作品を作り上げることができます。そのスタイルが、自分には合っていると感じました。

もともとはデザイン関係の仕事も考えていましたが、油絵にはまた別の価値があると思っています。自分の描いた作品を、長く持ち続けてくださる方と出会えたら嬉しいですね。作品を自分の子どものように感じることもあります。

――現在はお一人で活動されていますが、組織化についてはどうお考えですか。

自分は、絵に没頭している時間が一番心が安定しているんです。逆に、お金や経理のことばかり考えるようになると、頭が混乱してしまう部分もあります。

そのため、大きな組織を作るというよりは、一人でお客様と向き合いながら、少しずつ世界を広げていきたいと考えています。

依頼者が見ている“世界”を描きたい

――お客様とのコミュニケーションで大切にしていることは何でしょうか。

以前、「お母様を描いてほしい」という依頼をいただいたことがありました。その際には、お母様がどんな暮らしをしているのか、家族にとってどんな存在なのかを詳しく伺いました。

普段どんな服を着ているのか、どんな性格なのか、どんなエピソードがあるのか。そういった背景を知ることで、ただ似ているだけではない、その人らしい絵になると思っています。

ペットを描く場合でも同じです。どんなふうに飼われているのか、どんな時間を一緒に過ごしているのかを想像しながら描いています。

自分の主観だけで描くのではなく、依頼者が見ている世界を、色を使って表現したい。そこを一番大事にしています。

――展示や個展では、直接お客様と接する機会も多いのでしょうか。

福岡で個展を開催した際には、実際にお客様と直接お話ししながら、作品を見ていただいていました。

「どんな絵を描いてほしいですか」という会話から始まり、その要望に100%、200%応えたいと思っています。お客様との対話そのものが、自分にとって大きな楽しみでもあります。

お客様との出会いが、新たな表現を生み出す

――今後、挑戦していきたいことを教えてください。

今は人物や動物を中心に描いていますが、お客様から予想外の依頼をいただくこともあります。たとえば、犬や猫を描いていると説明していたのに、「爬虫類を描いてほしい」と依頼されたこともありました。

それまで描いたことはなかったのですが、実際に挑戦してみると、自分の表現の幅が広がっていく感覚がありました。

お客様との出会いや会話の中から、新しい題材や発見が生まれるんです。自分が「こうしていきたい」と決めるというより、お客様がどんな言葉をくださるかによって、自分自身が成長していく感覚があります。

――現在感じている課題についても教えてください。

生活をしていく以上、作品が売れることも大切だとは思っています。ただ、自分の絵を商売のためだけに扱うことには葛藤があります。

好きなことを続けたい気持ちと、仕事として成り立たせること。その間でずっと揺れている感覚がありますね。

無理に売り込んでいくよりも、本当に気に入ってくださった方に作品を届けたい。そういう気持ちが強いです。

“嘘をつかない絵”を描き続けたい

――これだけは譲れないという思いを教えてください。

嘘をつかないことです。

売れればいいという感覚で、派手に飾り立てた作品を作るのは好きではありません。たとえ売れなくても、自分は絵を描き続けたいと思っています。

豪華な空間を演出するよりも、普通の家庭の風景の中にある温かさを描きたいんです。テーブルがあって、家族がいて、ペットがいる。そういう生活の一部として自然に馴染む絵を描いていきたいと思っています。

また、自然の色彩にも強く惹かれています。花の鮮やかな色を見ると、自分もそのくらい明るい色彩を絵で表現したいと思うんです。

人は時に気持ちが沈んでしまうこともありますが、そんなときに、明るい色の絵が少しでも心を和らげる存在になれたら嬉しいですね。

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