木造建築で都市の未来と価値を切り拓く

株式会社 山路哲生建築設計事務所 代表取締役 山路哲生

株式会社山路哲生建築設計事務所は、建築を中心に、インテリアや都市計画、小さな家具に至るまで、境界を設けずにものづくりに取り組む建築設計事務所です。地域の歴史や文化、素材を尊重しながら、それらを現代的な価値観で再編集することを大切にしています。代表の山路哲生氏は、幼少期から自然の中でものづくりに親しみ、その延長線上に建築という仕事を見出しました。今回は、建築家としての原点や、同社が掲げる「混ざる建築」という考え方、組織づくり、今後の展望について伺いました。

都市に残る建築をつくり続ける

――現在の事業内容や特徴について教えてください。

私たちは、建築を作ることを中心に、小さな家具から、インテリア、建築、都市に関わるものづくりまでを、境界なく横断的に作っていくことが特徴です。一つひとつの建築では、地域の歴史や文化、素材などを尊重しながら、それを現代的な価値観で再編集することを意識しています。その上で、もう少し広い視点として考えているのが、都市に雑居性を生み出すということです。我々はそれを「混ざる建築」と呼んでいます。

具体的な事例の一つが、銀座にできた「銀座高木ビル」です。頂部4層が木造の、鉄骨とのハイブリッドによる12階建ての混構造のビルで、林野庁長官賞なども頂いております。この建物は当時、東寺五重塔を超えて、380年ぶりに日本一の高層木造建築になった物件でもあります。現在はそれを数センチ上回る木造建築ができているため日本一ではありませんが、重要なのはそこではありません。木造の高層化は、近代以降、長い間ほとんど更新されてきませんでした。日本には京都や奈良を中心に、歴史的な木造建築が数多くあります。にもかかわらず、その価値は近代において大きく発展しなかったと感じています。建築の構造は、基本的には木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造のたった三つです。都市を歩いていると目に入る建物の多くは、4階から10階程度の商業ビルやマンションで、それらのほとんどが鉄骨造や鉄筋コンクリート造で作られています。一方で、木造は概ね2階建て以下の住宅のみに使用されてきました。つまり、都市の大半の構成要素である商業ビルと木造建築が、ほとんど混ざってこなかったのです。私たちは、12階建てのビルの中で、それらを混ぜることを試みました。都市の価値を作るという意味で、木造の建物が都市に増えていくことは、森林大国日本にとって重要なアイデンティティの構築になるのではないかと考えています。

楽しさの延長にある建築人生

――建築家を志したきっかけを教えてください。

建築家になりたいと思ったのは、幼少期の環境が大きかったと思います。私は香川県で育ちました。360度山に囲まれたような環境で、数十歩歩けばカブトムシが取れたり、魚が釣れたりするような場所でした。祖父からカマやスキ、クワ、小刀などの使い方を教わり、自然の中で遊ぶことが日常でした。小学生の頃には基地を作ったり、ツリーハウスを作ったりしていました。神社の大きな神木の上にツリーハウスを作って、先生に怒られたこともあります。そういうふうに、現実世界の中でフィジカルにモノを作ることが日常の中にありました。工作することに抵抗がなく、当たり前のように取り組んでいたのです。その延長線上で、地球上で最も大きい工作が建築だと思い至りました。高校も理系で、ものづくりが好きだったので、建築士という職業を見つけた時に、これが天職なのだろうと感じました。小学生の頃からずっと楽しくやってきたことを、今も続けている感覚です。

――経営判断をする上での軸になっている考えは何ですか。

良い建築を作ることができるかどうか、に尽きます。良い建築を作り、良い都市を作っていくために何ができるか。それが大きな判断基準です。都市を変えていくためには、大きな建築も作らなければなりません。そのために大きなチームを作ることが、組織を作っていくうえでの判断基準になっています。

建築家集団としての組織づくり

――組織運営で意識していることを教えてください。

私たちの会社に参画してくれるスタッフは、将来建築家になりたい、自分の作家性を発揮したいという意思を持っている人が多いです。そのため、あまり上下関係のない建築家集団になることを重視しています。時にはトップダウンで方向性を示す場合もあります。ただ基本的には、個々人が自分の作家性を持ち、前進していく状況を作るようにしています。

そのために重要なのは、できるだけ無駄な時間を作ることです。効率化しすぎないことを大切にしています。効率化すると、短い時間でパフォーマンスを出すような仕事の仕方になり、早く終わらせることが目的になってしまいます。しかし、本当に良いものを作るためには、リサーチし、考えて、一見関係ないようなことまで掘り込んだうえで、アイデアを出したり、技術力を発揮したりすることが大切です。

また、それぞれのプロジェクトに対して全員が進行状況を共有する機会を作っています。互いにアドバイスし合える関係性も大切にしています。一人で黙々と作業に集中しがちですが、声かけをしながら、他のプロジェクトにも参加しやすい状況を作っています。オフィスもワンルームで、社長室のようなものはありません。なるべくフラットな環境を作ろうとしています。

――人材採用において最も重視している点はありますか?

建築が好きであること、そしていい人であることです。建築に費やす時間は長く、あまりオンオフがありません。弊社では年間4回の長期休みがあるのですが、そこでなるべく旅行に行くことをスタッフには勧めています。日々の生活や行動、旅行や遊び、人とのコミュニケーションも、良い建築を作るうえで大切になります。色々な都市や街、地域に行き、様々なものを見て、体験してほしいと話しています。

一つでも多く価値ある建築を

――今後の展望や挑戦したいことを教えてください。

今やっていることを、粛々とやっていきます。建築は一つ作るだけでも、数年かかることがあります。前職では隈研吾さんの事務所に所属し、渋谷スクランブルスクエアを担当していましたが、計画段階から10年ほどかかりました。そう考えると、人生はとても短いです。だからこそ、「混ざる建築」を一つでも多く実現し、都市に雑居性を生み出していきたいと思っています。

ただ、一つひとつ建築を作るだけでは、都市への影響力を広げるには限界があります。そこで現在取り組んでいるのが、70種類の設計の手法をデザインコードとして体系化し、それを全国の工務店に提供することです。現在、そのデザインコードを工務店に提供するサービスを行っており、全国で約40社の加盟店が参加してくれています。設計を届けることで、少しでも多くの良い建築を作っていければと考えています。

――仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。

子どもとサッカーをすることがリフレッシュの一つです。サッカーは見ることも、やることも好きです。子どもと一緒にサッカーをするときは本気でやるので、リフレッシュというより仕事ができないほどに疲れることもありますが、楽しみの一つになっています。

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