社員が安心して働ける会社へ――プラスチック成形で築く持続可能なものづくりのかたち
有限会社勝倉樹脂工業 代表取締役 早丸 敦氏
昭和56年の創業以来、プラスチックの成形加工を手がけてきた有限会社勝倉樹脂工業。汎用樹脂からエンプラまで幅広く対応し、近年はエラストマー樹脂成形にも注力しながら技術力を磨いてきました。現在は製造だけでなく組立や充填までを一貫して行う体制を構築しています。本記事では、代表である早丸氏に事業の特徴や経営の考え方、組織づくり、そして今後の展望について伺いました。
目次
プラスチック成形を軸にした一貫対応のものづくり
――現在の事業内容や特徴について教えてください。
プラスチック製品の製造を行っており、大きさには一定の制限はあるものの、ある程度の製品であれば幅広く対応できます。中でもインジェクション成形を中心に、金型に樹脂を流し込み、冷やして固めることで製品を量産しています。
――他社と比較した際の強みはどのような点にありますか?
当社ではインジェクション成形を中心に製品をつくっていますが、特徴的なのはその後の工程までできる限り自社内で完結させている点です。
一般的には、成形した製品を袋詰めして別の組立工場へ送る流れが多いかと思いますが、当社では組み立てやアッセンブリーまで対応できる体制を整えています。
さらに、容器の製造だけでなく、充填といった工程にも対応しており、製品としての形に近いところまで社内で仕上げることが可能です。この規模でインジェクション成形を行っている会社の中では、対応範囲の広さがひとつの強みになっていると感じています。
事業承継から始まった経営者としての歩み
――会社に入られた経緯と、これまでのキャリアを教えてください。
もともとは別の会社でサラリーマンとして働いていましたが、結婚して2年目くらいのタイミングで義父から声をかけられ、この会社に入ることになりました。
先代は妻の父にあたり、そこで初めて製造業の現場に関わるようになったんです。これまでの経験とは異なる環境ではありましたが、実務に携わりながら仕事を覚えていきました。
――代表に就任された背景にはどのような流れがあったのでしょうか?
代替わりのきっかけとしては、先代の年齢的な事情もありました。当時は従業員が4〜5人ほどの規模で、その中で社長の身内が自分だけだったこともあり、自然な流れで引き継ぐ形になりました。
自ら強く志して経営者になったというよりも、会社の状況の中で役割を担うことになり、現在に至っています。
任せる意識と共有で支える組織づくり
――経営判断の軸となっている価値観を教えてください。
これまでの人生の中で「こうなりたい」と思える人や、尊敬できる方が何人かおり、その人たちに少しでも近づきたいという思いがあります。そのうえで経営という観点では、サラリーマン時代の上司の存在が強く影響しています。自分とは真逆のタイプだったこともあり、その人の考え方や振る舞いを今でも意識しています。
もともと私は「人を使う」ことには苦手意識があり、製造の現場でも何でも自分で抱え込んでしまいがちでした。ただ、それでは組織として成り立ちません。だからこそ、できるだけ人に任せること、まずはやらせてみることを大切にしています。
自分の感覚だけで抱え込むのではなく、周囲に任せながら進めていく姿勢を常に意識していることが、軸と言えるかもしれません。
――社内コミュニケーションで大切にしていることは何ですか?
パートの方を含めても十数人ほどの会社なので、なるべく分業に偏りすぎない体制を大切にしています。誰かが休んだときにも別の人がカバーできるよう、全員が同じ作業を同じレベルで担える状態を目指しているためです。
一方で、納期やお客様の要望は、最初に私のところへ入ってくることが多くあります。そのため、週に1回は全員でミーティングを開き、作業内容やトラブル時の対応、お客様の思いなどを共有するようにしました。会社全体で状況を把握し、みんなで話し合える時間をつくることを大切にしています。
――どのような人材と一緒に働きたいと考えていますか?
一緒に働くうえで大切にしているのは、特別な能力よりも基本的な姿勢です。休まない、遅刻しない、挨拶ができるといった当たり前のことを、きちんと続けられる方と仕事をしたいと考えています。
面接の短い時間だけで、技術や能力を正確に見極めるのは簡単ではありません。だからこそ、まずは真面目に仕事へ向き合えるか、周囲と気持ちよく関われるかを大切に見ています。
技術力を軸に現状維持を目指すこれからの挑戦
――今後取り組みたいことや展望について教えてください。
会社を大きくしたいというよりも、今いる社員が安心して働き続けられる状態を維持したいと考えています。
一方で、ものづくりの分野では同じ製品が長く売れ続けるとは限らないため、新しい製品や素材を常に追い求める必要があります。技術力を高め続けることが、結果的に会社を維持することにつながると感じています。
――現在向き合っている課題とその対応についても教えてください。
コロナ禍では当社の事業内容がニーズと合致し、比較的忙しい時期が続いていました。一方で、その後のタイミングでは業績が思うように伸びない状況も経験しています。
今後に向けては、新しい分野への取り組みを進めるとともに、景気や社会情勢に左右されにくい製品づくりを目指していきたいと考えています。
また、これまで後回しになりがちだった営業にも向き合う必要性を感じています。社員が増えてきた中で事業を維持していくためには、新しいお客様の開拓が欠かせません。そうした点も含めて、営業面の強化に取り組んでいきたいと考えています。
――原材料価格の高騰や供給面での影響はありますか?
原材料の問題は非常に大きく、価格の高騰に加えて入手そのものが難しいケースも増えています。注文をいただいても材料が確保できず、製造に進めない状況が出てしまうこともあり、心苦しさを感じる場面も少なくありません。
また、当社は組み立てや包装まで対応しているため、プラスチックの材料があっても、最終工程で必要となる袋などの資材が不足することもあります。そうした影響が重なり、全体として厳しさを感じているのが現状です。
仕事と生活をつなぐ経営観と日常の過ごし方
――経営の中で「これだけは譲れない」という思いはありますか?
仕事は、社員やその家族の生活を守るためにあるものだと考えています。だからこそ、当社で働く人や関わってくださる方々、その家族が平穏に暮らせる環境を守ることは、経営の中でも大切にしたい部分です。
子どもの入学式など家族の行事があるときは、進んで休んでもらって構いません。そのために働いている面もあると思うので、仕事だけを優先するのではなく、日々の暮らしを大切にできる会社でありたいです。
――お休みの日はどのように過ごされていますか?
以前は草野球をしていましたが、現在はゴルフを楽しんでいます。都内近郊のゴルフ場に行き、仕事とは違う時間を過ごすことで気持ちを切り替えています。