AI時代に求められる“人間らしさ”とは――アナログの土台を大切に、中小企業DXを支えるトラストの挑戦

株式会社トラスト 代表取締役 浦川 守氏

株式会社トラストは、岡山県倉敷市を拠点にソフトウェア開発を手がける企業です。創業から28年にわたり、エンドユーザーと直接向き合いながら、システム開発を通じて企業の課題解決に取り組んできました。近年では、中小企業向けのDX支援やAI活用を見据えた人材育成にも注力し、単なるシステム導入にとどまらない伴走型の支援を展開しています。本記事では、代表の浦川守氏に、事業内容や経営哲学、今後の展望などについて詳しく伺いました。

エンドユーザーと直接向き合う“伴走型”の開発支援

――現在の事業内容について教えてください。

当社は創業から28年になるソフトウェアの開発会社です。岡山を中心に事業を展開していますが、長年続けてきたなかで、現在では東京をはじめとする県外のお客様との取引もあります。

一般的なソフトウェア会社では、大手企業から二次請け、三次請けとして案件を受ける形が多いかと思いますが、当社では、エンドユーザー様と直接仕事をさせていただくスタイルを取っています。お客様の現場に入り込み、一緒に課題を整理しながら、入り口から出口まで一貫して対応していく“伴走型”の支援です。

また、28年間さまざまな業界の支援を経験してきたことで、業種ごとの知見も蓄積されてきました。医療分野のシステム開発にも携わるなど、金融以外はほとんど経験しており、25年以上お付き合いが続いている企業様もあります。

――他社にはない強みはどういった点にありますか。

現在は中小企業向けのDX支援にも力を入れており、特にAIを活用したDXを進めていくなかで、単にシステムを導入するのではなく、人材育成まで含めた支援を行っている点が特徴です。

当社だけで対応できる範囲には限界があるため、お客様の会社のなかで人材を育成し、その人が中心となってさらに社内で人材を育てていく“卒業型”の仕組みを考えました。期間は1年半〜3年ほどを想定しており、一定ラインまでの人材育成を保証する形にしています。

また、現在のソリューション業界では、成果保証がないケースが少なくありません。しかし当社では、投資した部分について成果を出すことを大切にしています。加えて、座学だけで終わる研修ではなく、お客様の会社に必要なプログラムを実際に作りながら学んでいく点も特徴です。完成したものはそのまま実務で活用でき、自社で改善していくこともできます。

自然観を軸にした経営哲学

――経営の道に進まれたきっかけを教えてください。 

もともと独立したいという想いはあり、以前勤めていた会社の経営状況の変化をきっかけに、独立を決意しました。

前職はコンピューター専門の会社ではありませんでしたが、そのなかでシステム開発の部署に所属していました。そこでの経験が、現在の仕事にもつながっています。

――経営判断の軸になっている価値観はありますか。

中心にあるのは、「自然」という考え方です。自然は循環していますし、何億年も続いてきました。人間もそのなかで生きている存在です。

私はこれまで、宗教や脳科学など、さまざまな分野を勉強してきました。そのなかで感じたのは、やはり自然がベースにあるということです。本来、生き物は自然に合わせて変化していきます。しかし、人間だけが自然を変えようとしてしまう――そこに今の社会の歪みがあるのではないかと感じています。

経営についても、「売上をどう伸ばすか」より、「人としてどう生きるか」を大切にしています。自分の得意なことを活かしながら、どう成長していけるか――その実践の場として仕事があり、経営があると考えています。

アナログを土台にしたデジタル化への考え方

――理念やビジョンに込められている想いを教えてください。 

コンピューターというのは、アナログをデジタルに変えるものだと思っています。もともと人が手作業で行っていたことを、コンピューター化したりロボット化したりしているわけです。

だからこそ、土台となるアナログを大切にしなければ、本当の意味でのデジタル化はできません。アナログを無視したままシステム化を進めてしまえば、根のない木のような状態になります。見た目は立派でも、土台が弱ければ簡単に倒れてしまうでしょう。

当社では、創業以来ずっと、その“根”の部分を大事にしてきました。AIが急速に発展している今だからこそ、なおさら基礎が重要だと思っています。

AIは非常に便利ですが、基礎そのものを教えてくれるわけではありません。詰め込まれた情報は膨大ですが、それを積み上げる過程はアナログなんです。

基礎がないままAIだけを使ってしまうことには危うさも感じています。これからは、AIをどう使うかだけではなく、人としてどう考え、どう判断するかが重要になる時代だと思っています。

“協業”を大切にした組織づくり

――社員とのコミュニケーションで大切にしていることはありますか。

現在は社員が取引先で作業していることが多く、報告中心になっています。以前は20人近くいた時期もありましたが、そのころは仕事中心で、残業も当たり前のような環境でした。今振り返ると、働く人への思いやりや、「一緒にやっていく」という意識が十分ではなかったように思います。

――一緒に働きたいと思う人材像を教えてください。

私が大切にしているのは、「競」ではなく、協力の意味での「協業」です。最近は協業といいながら、実際に一緒に仕事を始めると競争になってしまうケースも見られます。利益が出た瞬間に取り合いになってしまうようでは、本当の意味での「協業」ではありません。

一緒に仕事をする人たちには、「取り合いではなく、分かち合いをしましょう」と伝えています。相手のことを中心に考えながら、一緒に成長していける関係を築きたいと思っています。

AI時代だからこそ、人間らしさを追求する

――最後に、今後の展望についてお聞かせください。

現在進めている中小企業向けのサービスを、今後さらに広げていきたいと考えています。県外企業との関わりも増えていくと思いますが、そのなかで課題になるのは、オンライン中心になることで、人間関係や肌感覚が薄れてしまう点です。

これまでは直接会いながら進めてきたからこそ築けた部分がたくさんありました。だからこそ、デジタルを使いながらも、どのようにアナログの温度感を伝えていくかを模索していきたいです。

また、人数が限られているため、今後はさまざまな方と協力しながら進めていく必要があります。本当の意味での“協業”ができる仲間を増やしながら、中小企業の力になれる仕組みを広げていきたいです。

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