古い建物を次世代へつなぐ――文化財保存活用計画が守る、“本物の価値”

文化財保存活用計画株式会社 代表 榮山 慶二氏

文化財保存活用計画株式会社は、重要文化財や登録文化財、寺社仏閣、歴史ある町並みなど、古い建物の保存・修理・活用地域計画の策定に取り組む会社です。企画から設計、施工まで一貫して関わり、伝統工法や職人の技術を守りながら、建物を次の世代へつなぐことを大切にしています。本記事では、代表の榮山慶二氏に、事業への思いや経営の考え方、今後の展望などについて詳しく伺いました。

古い建物を「使い続ける」ための保存活用

――現在の事業内容について教えてください。

当社は、戦前や江戸時代から残る古い建物を中心に、重要文化財や国宝、登録文化財、国・県・市町村が持つ建物などの修理を行っています。大きな目的は、建物をきれいにするだけではなく、「どのように活用し、どうやって使い続けるか」を考えることです。

お寺や神社、仏閣、世界遺産周辺の町並み、文化庁が指定するような地域の再生にも関わっています。地震に耐える力をどのように確保するか、古い建物をどうやって活用するか、そして次の世代まで使えるようにできるか――それが当社の仕事の柱です。

――他社にはない強みはどのような点ですか。

一番の強みは、職人です。伝統を守るためには、宮大工や左官をはじめ様々な昔の伝統工法を続けられる職人を確保し、育てていくことが欠かせません。

古い建物を壊すのは簡単です。しかし、木造建築の建物寿命は最低100年です。長年、残ってきた柱や梁、瓦、建具には価値があります。その価値を所有者に理解していただき、先祖から住み継いできた建物に誇りを持っていただけるようにすることも大切な役目です。

保存とは、単に昔の姿を残すことではないと考えています。ですので当社では、瓦一枚、柱一本についても、使えるかどうか見極めながら次へ活かしていきます。

古い柱についた傷や痕跡も、その家に暮らした人たちの記憶です。効率だけを優先するのではなく、そうした時間の積み重ねまで受け継いでいくことが、本物を残すことだと考えています。

設計から施工まで一貫して向き合う

――会社を立ち上げた経緯を教えてください。

もともとは文化財建造物保存技術協会で20年ほど働き、全国の現場を回っていました。さまざまな建物や職人を見ているうちに、設計・監理だけではなく、施工まで自分たちで関わらなければうまく組み立てられないと感じるようになったんです。そのため、自分で会社を立ち上げて工場を開き、木材を買って乾燥させ、自分たちの職人が加工できる体制を少しずつ整えてきました。創立からは、12年ほどになります。

――経営判断の軸になっている価値観はありますか。

経営に必要な経費を稼ぐことは会社として必要ですが、私自身は「正しいことをすれば、お金はついてくる」と考えています。本物を残すという方向性が正しければ、努力を続けることで道は開けると思っているんです。

右往左往するのではなく、古い建物を残すという一本の筋を通すことが大事です。新しいものを求める社会のなかで、古いもののメリットや価値を理解してもらうのは簡単ではありません。それでも、歴史ある建物は簡単には残せないからこそ、残す価値があるのだと思っています。

町並みもまた同じです。古い建物が残ることで、その町ならではの顔が生まれます。人が訪れ、店に入り、地域の中でお金が回るきっかけにもなります。新しい建物だけではつくれない時間の積み重ねが、町の誇りになっていくのです。

――譲れない想いについてもお聞かせください。

時間については譲れません。今の社会は早さを求めますが、本物を残すには手間と時間が必要です。

壁を塗るにも、木を使うにも、昔の方法では時間がかかります。木は山から切ってすぐ柱にできるものではなく、乾燥させ、時間を置いて使います。漆も下塗り、中塗り、上塗りと何層も重ねます。

古い建物は、町の顔にもなります。自分の町に何を誇れるのか、訪れる観光客・友人たちに何を「自慢できる私たちの町」として紹介できるのか――それをつくるためにも、古いものを残す価値を伝え続けたいと思っています。

職人と向き合い、本物を残す

――職人との関係で大切にしていることは何ですか。

職人には、それぞれの考え方やこだわりがあります。だからこそ、「自分たちは文化財を未来へ残す仕事をしている」という意識を共有することを大切にしています。

文化財の修復は、非常に時間のかかる仕事です。建物一つの修理に5年ほどかかることもあり、木材同士を組み合わせる「仕口」を一つ加工するだけでも一日かかる場合があります。

現代の建築で使われるビスや既製品を使えば早く仕上げることはできますが、昔の建物には、昔ながらの工法があります。たとえば、傷んだ柱もすべて交換するのではなく、使える部分をできる限り残しながら修理していきます。どこを直したのか分からないほど当初材にあわせて自然に修復するには、高い技術と根気が必要です。そうした価値観や技術を、職人たちと共有しながら仕事を進めています。

――一緒に働きたいと感じる人はどのような人ですか。

古いものが好きな人でなければ、この仕事は難しいと思います。若い人には、自分が関わった建物が100年残るかもしれないという喜びを感じてほしいです。一般の建物では、苦労して徹夜で図面を描いても30~50年ほどで建て替えされることもあります。しかし、この仕事では、自分の仕事が長く残っていく可能性があります。

技術では大工や職人の方が上手な部分もあります。そこを尊重しながら、自分でも手本を見せ、考え方を伝えていくことが大切です。

量産できない仕事だからこそ、若い人とつないでいく

――今後の展望や挑戦について教えてください。

そもそもこの仕事は、量産できるものではありません。そのうえ社員も全体で10名ほどですので、多くの仕事を一度に受けることは叶いません。そこで、できれば今後は同じ考え方で取り組みたい人たちと一緒に、少しずつ分業しながら業務を広げていきたいと考えています。

ただ、職人として一人前になるには、10年ほどの時間が必要です。材料も足りなくなっていますし、昔の工法をどのように残すか、職人をどうやって育てるかが大きな課題です。

またこの仕事には、流行りのA Iでは判断できないことも多くあります。古い建物には規格品がなく、木造もあれば、レンガ造、鉄骨、コンクリートなどもあります。神社・寺院・塔など毎回違うものを扱うからこそ、人間の判断が必要です。いつも「何でこんなっているのか?」と自問自答しながら仕事に取り組んでいます。恋や人生と同じく予想はできません。

建物を解体して初めて構造が分かることもあり、現場ごとに状況はまったく異なります。本物を残すためには、経験を積んだ人間の感覚と判断が欠かせません。

今後については、次の世代がどのように受け継いでいってくれるかも気になっています。この仕事は、図面を描き、説得し、材料や職人を手配し、現場まで見ていく必要があります。簡単ではありませんが、だからこそ、残す意味があると思っています。

古い建物や町並みを大切にし、次の世代まで使ってもらえるように、これからも一つひとつ向き合っていきたいです。

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