“本を出す”その先へ――出版を通して人の人生に寄り添う株式会社鳳葉社の挑戦

株式会社鳳葉社 代表取締役 仲田 葉子氏

株式会社鳳葉社は、シェア出版という形を通じて、まだ世の中に広く知られていない人々の想いや人生を本として届ける出版社です。2025年3月に設立されたばかりの小さな出版社ながら、単なる出版事業にとどまらず、「本を書くことで自分自身と向き合う」という独自の価値を提供しています。代表の仲田葉子氏は、24年以上にわたりカメラマンとして活動し、多くの人のプロフィール撮影やブランディング支援に携わってきました。その経験をもとに立ち上げた出版事業には、どのような想いが込められているのでしょうか。今回は、現在の取り組みや今後の展望について伺いました。

出版を通じて“まだ知られていない人”を世の中へ届ける

――現在の事業内容について教えてください。

当社は出版業を行っています。ただ、一般的な出版社のように「本をたくさん売る」という考え方とは少し違っています。私自身、もともとはカメラマンとして活動していたのですが、仕事を通じて「もっと世の中に知られてもいいのに」と感じる方々に数多く出会ってきました。

プロフィール撮影やブランディング支援をしている中で、売上が伸びたり認知が広がったりする方もいらっしゃる一方で、写真だけでは限界があると感じていたんです。そんな時に、「出版は多くの人に認知してもらうための非常に良いツールになるのではないか」と思い、出版社を立ち上げました。

現在は「シェア出版」という形で共著スタイルの本づくりを行っています。本来、一人で本を出版するには多額の費用がかかりますが、複数人で制作することで一人あたりの負担を抑え、本を出しやすくしています。また、一人で出版するよりも多くの人に届きやすくなるため、売上や認知拡大にもつながっています。

実際に出版された方の中には、認知が広がり売上が倍になった方もいらっしゃいます。本を“名刺代わり”として活用していただき、その方自身の価値を広げていくことを目的に活動しています。

本を書くことで、自分自身と向き合う

――鳳葉社の出版には、他社とは違う特徴があるそうですね。

私が本当にやりたいのは、「本を出すこと」そのものではありません。出版を通じて、自分自身と向き合っていただくことなんです。

文章を書くという行為は、自分の弱さや痛み、過去の経験と向き合うことでもあります。だからこそ、とても苦しい作業でもあります。ですが、その過程を経ることで、人は大きく変化していくんです。

第一弾として出版した『美は、絶望の花びら』では、過去の絶望や苦しみを乗り越え、現在活動している女性たちの人生を描きました。ただ、中には自分の弱さを世の中に出すことに抵抗を感じる方もいらっしゃいました。

それでも、「本当にそれでいいの?」と問いかけながら、一緒に向き合っていきます。自分を偽ったままでは、本当の意味で人の心には届かないからです。

執筆期間中に人生が大きく変わる方も多く、離婚や体調不良を経験される方もいれば、逆に大きなチャンスを掴まれる方もいます。本の内容そのものが途中で大きく変化していくことも珍しくありません。このプロジェクトはいったい何なのだろうと言われることもありますが、それほど人の内面に深く関わるものになっています。

カメラマンとして培った“本質を見る力”

――出版事業の前は、長年カメラマンとして活動されていたそうですね。

24年以上カメラマンとして活動してきました。スタジオも15年ほど運営していて、妊婦さんや赤ちゃん、七五三などの家族写真を中心に撮影していました。コロナ禍以降は、起業家の方のプロフィール写真やお見合い写真なども多く手がけてきました。

ただ、私は単に写真を撮るだけではなく、その人が「どう生きたいのか」という部分まで掘り下げていくんです。撮影前にはカウンセリングも行います。

例えば、「信頼感があるように見せたい」「細く見えるように撮ってほしい」といった言葉が出た時には、一度立ち止まってもらいます。なぜなら、“どう見られたいか”ではなく、“自分自身がどうありたいか”が大切だからです。

無理に理想像を演じても、結局うまくいかなくなってしまうんです。本当の自分と向き合い、その人らしさを引き出すことを大事にしてきました。その延長線上に、今の出版事業があると思っています。

小さな出版社だからこそできる挑戦

――今後の展望について教えてください。

現在は一人で出版社を運営しています。企画、編集、デザイン、写真撮影、イベント運営まで、ほとんどを自分一人で行っているため、正直とても大変です。

出版という仕事は、やればやるほど収益になるわけではなく、どうなるかわからない部分も多い世界です。だからこそ、どんな著者と一緒に本をつくるかは非常に重要になります。

大手出版社であれば、すでに有名な方にオファーを出せますが、私たちのような小さな出版社ではそうはいきません。だからこそ、「もう一歩で大きく飛躍できる人」の背中を押したいと思っています。

今後は出版社としてさらに力をつけ、もっと多くの著者を応援できる環境を整えていきたいです。現在はシェア出版が中心ですが、将来的には、私自身が「この人の本を世に出したい」と思える方へ声をかけられるような出版社になりたいと思っています。

また、第二弾となる『美は、孤独の刃』も進行中で、今度は男性7名による共著となっています。女性版と男性版を対になるような形で展開していく予定です。

コミュニティづくりから広がった可能性

――これまでの経験で印象に残っていることはありますか。

スタジオを始めた頃は、いきなり撮影スタジオを持つのではなく、親子カフェを併設する形でスタートしました。まず地域のコミュニティをつくり、そこから撮影につなげていったんです。

平日にカフェへ来てくださったお客様が、土日に家族で撮影に来てくださるようになり、少しずつ顧客が増えていきました。カフェは敷居が低く、人が集まりやすい場所だったので、多くの出会いがありました。

結果として地域とのつながりも広がり、15年経った今でもご縁が続いています。最初から「無理だ」と決めつけず、別の角度から挑戦することが大切だと感じています。

“できない”と決めつけず、別の方法を探してほしい

――最後に、これから起業を目指す方へメッセージをお願いします。

何か新しいことを始める時、多くの人は「できない」と思ってしまうと思います。特に、スタジオ経営のように大きなリスクを伴うものは不安も大きいはずです。

でも、方法は一つではありません。私もカフェという全く別の切り口からコミュニティを作り、そこからスタジオへとつなげていきました。

だからこそ、「無理だ」と決めつけず、違う視点や別のベクトルで考えてみてほしいです。遠回りに見えても、その経験が後から大きな力になることもあります。

これからも出版を通じて、一人ひとりの人生や想いに寄り添いながら、多くの人の背中を押していきたいと思っています。

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