“現場の声をつなぐ”プロヘルプデスク人材育成――傾聴とITリテラシーで企業を支える挑戦

一般社団法人プロヘルプデスク協会 代表理事 夏目 哲子氏

一般社団法人プロヘルプデスク協会は、企業向けのITコンサルティングやDX支援、プロヘルプデスク人材の育成事業を展開しています。製造業や運送業、土木関連企業などを中心に、システム導入支援や業務改善、IT教育など幅広い支援を実施。単なるITサポートにとどまらず、「現場の声を聞ける人材」の育成にも力を入れています。今回は、代表理事の夏目哲子氏に、創業の経緯や事業への想い、今後の展望について伺いました。

“現場の困りごと”に寄り添うコンサルティング事業

――現在の事業内容について教えてください。

現在のメイン事業はコンサルティングです。製造業や土木、運送業などのお客様が多く、企業へ伺いながら、業務上の不都合やシステム面の課題をヒアリングしています。

「システムがうまく動いていない」「システム会社との間に立ってほしい」といった相談も多く、企業側の話を傾聴しながら、システム会社と一緒に改善提案を行っています。

そのほか、ITセミナーや教育事業も展開しています。企業から「プロヘルプデスク人材」を育成したいという依頼を受け、企業向け研修を行ったり、ITセミナーをきっかけに教室やeラーニングへ参加いただいたりしています。

――一般社団法人として立ち上げた理由を教えてください。

「プロヘルプデスク」という名称で商標登録を取得しており、将来的に資格化したいという想いがありました。

株式会社にするか一般社団法人にするか悩んでいた際、商工会議所の中小企業診断士の先生から、「資格発行なら一般社団法人の方がよいのでは」とアドバイスをいただき、一般社団法人として立ち上げました。

現在は実際にプロヘルプデスク資格の発行も行っています。

“困っている企業を助けたい”から始まった創業

――創業までの経緯についてお聞かせください。

2019年に個人事業として創業しました。最初は事務所を持たず、「パソコン事務サポート『ちょこんと』」という形で法人向けの業務改善支援を行っていました。

企業から依頼を受け、現場へ伺いながら業務改善やDX支援を実施していたのですが、製造業向けの販売管理システムをゼロから構築する案件にも携わるようになりました。

その後、地元では女性でBtoB向けの支援をしている人が少なかったこともあり、市役所関連の創業支援にも関わるようになりました。

さらに、「いつかパソコン教室をやりたい」と話していたところ、周囲の方から机やロッカーなどを譲っていただき、2021年にパソコン教室を開設しました。

――パソコン教室にはどのような特徴がありますか。

一般的なカリキュラム型の教室とは少し違います。完全予約制・マンツーマン形式で、「やりたいことを持ってきてください」というスタイルにしています。

私は以前から企業の情報システム部門でヘルプデスク業務を行っており、不具合対応やトラブルシューティングを数多く経験してきました。そのため、その場で問題を解決できることが強みになっています。

「会社で使う資料を効率化したい」「月初業務を自動化したい」「システム会社への依頼方法を教えてほしい」など、相談内容は本当にさまざまです。

一般的な低価格のパソコン教室とは異なり、“実務課題を解決する場”として運営しています。

企業に必要なのは“現場を理解できるヘルプデスク人材”

――今後の展望について教えてください。

これまで多くの企業を見てきて感じるのは、「システムを導入したいけれど、何をどう依頼すればいいかわからない」という企業が非常に多いことです。

システム会社から難しい言葉で説明され、そのまま契約してしまった結果、高額な費用をかけても現場で使えないシステムになってしまうケースもあります。

だからこそ、現場の声をきちんと聞き、実際に業務を行う人たちの意見を理解した上で提案できる人材を増やしたいと考えています。

また、AIやセキュリティ分野へのリテラシー向上にも力を入れていきたいです。

最近では、AIツールへ社内情報を入力してしまう企業も少なくありません。しかし、情報が外部へ流出するリスクを十分理解していないケースも多いと感じています。

「便利だから使う」だけではなく、「どんなリスクがあるのか」を理解した上で使える人材を育てたい。そのために、ITリテラシーを高めながら、社内へ正しく説明できる人材を育成していきたいと思っています。

――3年後にはどのような組織を目指していますか。

プロヘルプデスクとして実力のある人材を育て、企業へ送り出せる仕組みを作っていきたいと考えています。

実際に人材派遣会社から「ヘルプデスク人材が足りない」という声も多くいただいています。しかし、技術だけでなく、メンタル面でも強い人材は決して多くありません。

企業の中には専任のヘルプデスクを置けない会社も多く、総務や製造担当者が兼任しているケースもあります。そうした企業へ、必要な時に支援できる人材を増やしていきたいです。

“思い”だけではなく、事業として成立するかを考える

――休日の過ごし方やリフレッシュ方法を教えてください。

パソコン教室には、仕事や人生に悩みを抱えた方も多く来られます。話を聞いているうちに、「誰かいい人いない?」と相談されることもあり、人と人をつなぐことを自然とやるようになりました。

異性同士だけでなく、同性の友人関係をつなぐこともあります。食事へ行ったり、悩み相談を聞いたりする時間が多いですね。

「夜に相談へ行ってもいいですか?」と連絡をいただき、数時間じっくり話を聞くこともあります。そうして気持ちが軽くなって帰っていく姿を見ると、少しでも力になれたのかなと思います。

――最後に、これから起業する方へメッセージをお願いします。

起業相談を受けていると、「思い」だけで始めてしまう方を多く見てきました。

もちろん想いは大切です。ただ、それだけでは事業は続きません。自分の事業をきちんと言葉で説明できるか、本当にお金を生む仕組みになっているかを考えることが大切だと思っています。

また、公共機関や支援者など、バックアップしてくれる人たちをきちんと見つけながら進めることも重要です。

「好きだからやる」だけではなく、「自分の得意が、誰かの役に立ち、事業として成立するか」をしっかり考えてほしいですね。

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