直営保育園の救世主が仕掛ける、子供たちの命を育むオーダーメイド支援

合同会社KMP 代表取締役 長谷川巖氏

少子化や深刻な人手不足、食材費の高騰など、現代の保育園やこども園を取り巻く環境はかつてない厳しさに直面しています。特に、園の大きな特色であり子供たちの成長の源でもある「給食」の現場では、調理師や栄養士の不足により、直営での運営を断念せざるを得ないケースが急増しています。前職から20年以上にわたり園児向け給食の現場を見つめ続けてきた代表取締役の長谷川巖氏に、起業に込めた想いや独自の事業モデル、そして未来の展望について詳しくお話を伺いました。

園の「手間」をピンポイントで解消するカスタムメイド給食

――現在の事業内容や特徴について教えてください。

私たちは、幼稚園や保育園、認定こども園を対象に、直営給食の運営をオーダーメイドで手助けする「直営サポート事業」を展開しています。具体的には、自社に所属する栄養士が各園の特色に合わせたカスタムメイドの献立を組み立てたり、食材の調達を代行したり、時には私や自社の調理師が現場へ赴いて調理員の指導や衛生管理、運営の仕組み化をアドバイスしたりしています。

前職でも長年、子ども向けのお弁当給食や自園調理の立ち上げ・営業に深く関わってきました。会社や事業が大きくなるにつれて「融通が利かなくなる」という現象が起きてしまいます。

部分的な人手不足や手間に頭を悩ませているのが実情です。であれば、大手がやらない「園が本当に困っているスポットだけをカスタムメイドで手助けする仕組み」を作れば、園独自の特色を守りながら、先生方が保育の質向上に集中できるのではないかと考え、この事業の形にたどり着きました。

拡大よりも、関わる人がやりがいを持てる環境を

――経営者になられた経緯を教えてください。

前職では、私自身がゼロからその直営サポートの事業を立ち上げ、最終的には50軒ほどの園様とお付き合いし、10億円近い売上を立てるまでに拡大させました。しかし、組織が大きくなればなるほどシステム化が進み、自分が理想としていた道筋からズレが生じてしまうのを感じました。こだわりを持つ園長先生方の想いをフォローしきれないもどかしさを抱える中で、それなら小規模でもいいから、土地ごとのかなニーズをしっかりとキャッチできる、真に顧客目線の会社を作りたいと思ったのが一番の動機です。

現在は私の次男も一緒に会社を支えてくれています。彼には主に営業と現場の業務サポートを任せていますが、とにかく特定の園に足を運んで、調理指導から衛生管理の組み立てまで泥臭く現場に入り込んでもらっています。私たちは単なるコンサルタントではありません。

――仕事をする上で大切にしている価値観は何でしょうか。

私は、この会社をむやみやたらに大きくしようとは全く思っていません。それよりも、一定の信頼できる法人さんや施設さんと深く関わり、そこで働くうちの栄養士や調理師が、本当にやりがいを持って生き生きと働ける職場環境を作っていくことを何よりも大切にしています。

私たちのビジネスのキーパーソンは、間違いなく「栄養士」です。単に営業力があるだけでなく、確かな知識と思いやりを持った栄養士がフロントに立ち、園に足を運んで一緒になって園内で食育活動をしたり、園長先生の想いをレシピに反映させたりする。そうした密なお付き合いができる強い組織を作りたいですね。働く人間が「自分の仕事が子供たちの未来を作っているんだ」と誇りを持てる環境を整えることこそが、結果として一番面白い、誰も真似できない独自の強みになっていくと確信しています。

つくばエクスプレス沿線と茨城南部を見据えたエリア戦略

――今後の展望や挑戦したいことを教えてください。

千葉県の北西部や東葛地域、そして茨城県の南部を中心に対象エリアを広げていく計画です。このあたりは、つくばエクスプレス沿線などを中心に、現在でも人口の流入が続いており、保育園が新設・増加傾向にある活気ある地域です。こうした地域で困っている園さんとの商談を増やし、基盤を強固にしていきたいです。

そして、売上をしっかりと伸ばした先、2年以内を目安に達成したい大きな挑戦として、「自社で食材の管理や取りまとめができる倉庫、あるいは小さな工場」を構えたいと考えています。

保育や教育の業界は、体質的に非常に古く、信頼関係を重んじる世界です。園が本当に困ったタイミングで「長谷川さん、助けてほしい」と声をかけていただけるような、密な信頼関係の構築が必要です。

また、私たちの「直営サポート」は、すべてを丸投げしてもらう委託給食とは異なり、調理員さんの雇用主はあくまで施設側です。そのため、都心に近いエリアでの調理員不足に対し、「時給をいくらに設定すれば人が集まるか」といった繊細な提案をお客様に受け入れてもらい、年間の予算管理をどう着地させるかという商談の組み立てが非常に重要になります。この「直営サポート」という仕組みの価値を正しく理解していただき、お客様の気持ちに寄り添いながら、より機能的な仕組みへと洗練させていくことが、今の私たちの心地よい課題ですね。

命の源を作る責任と、自然と向き合う贅沢なリフレッシュの時間

ーー社会や子供たちにどのように貢献していきたいか、お考えをお聞かせください。

私たちが扱っているのは、何よりも「小さな子供たちの食」です。食は子供たちの毎日のエネルギーであり、命の源そのものです。ただお腹を満たせばいいということではなく、子供たちの「長期的な健康維持」にどれだけ留意できるかが、この仕事の最大の使命だと思っています。

現代の保育園では、実は、幼児向けの給食というのは、温度管理一つとっても大人の食事とは全く異なります。スープや汁物は、万が一こぼしてしまったときに大火傷にならないよう、まるでお風呂の温度のような、ぬるめの絶妙な温度設定で提供されています。

しかし同時に、私は子供たちが生活の中でスープをこぼしたり、洋服を汚したりすることは、決して悪いことではなく、成長のための大変貴重な過程だと思っています。そういう体験をすること自体が、まさしく「食育」の本質です。子供たちの健やかな成長を影で支え、健全な社会の土台作りに貢献できるよう安全で想いのこもった給食環境をこれからも守り続けていきます。

――仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。

私のリフレッシュ方法は、何十年も昔から完全につり一択、海での「魚釣り」です。私のメインは磯釣りで昔から釣りが大好きなので、休みがあればいつでも行きたいと思っています。日頃支えてくれている妻との時間も大切ですので毎週行くわけにはいきませんが良いリフレッシュです。

ーー読者の方へメッセージをお願いいたします。

これから起業を考えている方や、一歩を踏み出そうと迷っている方に伝えたいのは、「失敗を恐れず、思いきって動いてしまうことが一番大事だ」ということです。

もちろん、会社員時代のようにのんきに構えているわけにはいきませんし、重責はありますが、組織のしがらみという「変な重し」が取れたことで、自分の理想とするサービスを自分の手でダイレクトにお客様に届けられるようになりました。ぜひ、ご自身の想いを信じて、思いきって新しい世界へ飛び込んでみてください。

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