夢から始まった牧場づくり――一般社団法人北海道うまプロジェクトがつなぐ人と馬の未来

一般社団法人北海道うまプロジェクト  代表 荒井亜紀 氏

北海道で馬とのふれあいや外乗トレッキング事業を展開する一般社団法人北海道うまプロジェクト。荒れ地だった土地を自ら開拓し、多くの人が馬と触れ合える牧場を築き上げてきました。今回は、牧場誕生の経緯や事業への想い、今後の展望について伺いました。

荒れ地から始まった、夢を形にする牧場づくり

――現在の事業内容や、牧場ができるまでの経緯について教えてください。

私たちの牧場は、もともと荒れ地だった土地を購入したところから始まりました。当時は車よりも高い草が生い茂り、ゴミも捨てられているような場所でした。結婚前の娘がそんな土地を買うことに両親は大反対でしたが、「ここで馬を飼いたい」という夢だけは譲れませんでした。

本業を終えた後、毎日暗くなるまで草を刈り、柵を作り、石を拾い続けました。機械も十分ではなかったため、多くの作業を手作業で進めています。少しずつ仲間も増え、一緒に汗を流しながら牧場づくりを続ける中で結婚し、子どもも生まれました。

購入した土地は非常に広く、東京ドーム5〜6個分ほどの規模がありました。全体では20ヘクタールほどあり、そのうち山も含まれています。場所によっては傾斜もあり、一周しようと思えばお弁当を持って歩くような広さです。開拓当初は機械も十分ではなく、石を取り除きながら一本一本手作業で柵を立てていきました。終わりの見えない作業でしたが、馬と暮らす場所を作りたいという気持ちが支えになっていました。

また、活動を続ける中でさまざまな仲間も集まるようになりました。中には旅をしながら立ち寄った人もいて、一緒に作業をしたり食事をしたりしながら時間を過ごしていました。そうした仲間たちと過ごした時間も、牧場づくりの大切な思い出として残っています。 

当時住んでいた家は古く、北海道の冬には家の中で調味料が凍るほどでした。それでも馬とともに生きる毎日は充実していました。現在は自然豊かな環境の中でお客様を迎えられる場所になりましたが、当時から大切にしている湧き水だけは今も残しています。牧場そのものが、私たちの人生の歴史そのものと言えるかもしれません。

誰もが馬と触れ合える場所を目指して

――事業の特徴や強みについて教えてください。

私は競走馬の生産に携わっています。周囲には競走馬牧場が多くありますが、競走馬は一般の方が自由に触れ合える存在ではありません。そこで私たちは、馬が好きな人や興味を持った人が気軽に訪れられる牧場を作りました。

牧場内には年齢も体格も異なる馬がおり、ポニーやミニチュアホースもいます。お客様は自由に馬たちと触れ合うことができます。その中で事業の柱になっているのが外乗トレッキングです。馬に乗って山や自然の中を巡る体験で、多くのお客様に楽しんでいただいています。

私たちは入場料をいただく形ではなく、馬との触れ合いや体験を通じて牧場の魅力を感じてもらうことを大切にしています。放牧地の中へ入って馬たちの様子を間近で見られることも特徴の一つです。大きな馬から小さな馬まで、それぞれ異なる個性を持つ馬たちと過ごせる環境は、多くの方に喜ばれています。

ただ、こうした事業は簡単に始められるものではありません。安全にお客様を乗せられる馬を育てる必要がありますし、そもそも穏やかな性格の馬を見極める力も求められます。馬の性格は簡単には変わりません。だからこそ、長年培ってきた経験を活かしながら、安全第一の牧場づくりを続けてきました。30年間積み重ねてきたその姿勢こそが、私たちの強みだと思っています。

馬とともに生きる楽しさを次の世代へ伝えたい

――経営者として大切にしている価値観を教えてください。

私自身、若い頃から馬の世界に夢中でした。仲間と昼夜を問わず馬について語り合い、同じ時間を共有してきました。今振り返ると、本当に濃い青春だったと思います。働いていたというより、好きなことに没頭していた感覚に近いですね。

当時は寝る時間を惜しむほど馬中心の生活を送っていました。馬の世話をしながら仲間と語り合い、時には恋愛をしたり、それぞれの人生を重ねたりしながら過ごしていました。馬を中心に集まった仲間たちと過ごした時間は、今でも大切な思い出です。私自身、その世界に飛び込んだからこそ、多くの経験や出会いを得ることができました。 

だからこそ今は、その楽しさを次の世代に伝える側になりました。馬好きな人たちが集まり、一緒に時間を過ごすことで見える世界があります。その魅力をもっと知ってもらいたいと思っています。

私たちは利益だけを追い求めてきたわけではありません。いただいたお金は馬たちのために使い、より良い馬を育てることに注いできました。その結果、エンデュランス競技において全日本チャンピオンとなった馬も誕生しています。

もちろん時代は変わり、価値観も多様になりました。それでも馬を愛する気持ちは変わりません。これからも馬と人がつながる場を守り続けたいと思っています。

仲間を信じて任せる組織運営と、競技普及への挑戦

――組織運営や今後の展望について教えてください。

コミュニケーションでは、必要以上に会議を増やさないことを意識しています。現在はLINE WORKSを活用し、スケジュール共有を中心に運営しています。長時間議論するよりも、やるべきことを明確にして実行する方が私たちには合っていました。

私は基本的に人を信じて任せるタイプです。過去には事業全体を担当者へ一任したこともありました。現在は娘と共同で運営していますが、それぞれの考え方を尊重しながら進めています。

今後は馬とのふれあいを広げることに加え、エンデュランス競技の普及にも力を入れていきたいと考えています。選手の育成やサポートしてくれる人を増やしながら、競技に関わる人たちの輪を広げていきたいですね。 

さらに、一般社団法人北海道馬プロジェクトの活動も続けています。会員の皆さんと協力しながら山の中に馬の道を作り、現在では長距離のコースを整備してきました。日本では珍しい取り組みですが、この活動を未来へ残していきたいと思っています。

師匠から学んだ姿勢と、自分らしいリフレッシュ

――プライベートやリフレッシュ方法について教えてください。

私には師匠と呼べる方が何人かいます。共通しているのは、その道で結果を残してきた方々だということです。そして皆さん、本当に仕事に真剣です。自分に厳しく、きっちりとした生活を送っている姿を見て、多くのことを学んできました。

リフレッシュについては、昔から一人で街を歩くことが好きでした。何も考えずに歩き、自分の好きなものを見つける時間は良い気分転換になっていました。そうした時間の積み重ねの中で、土地を購入したり、家を整えたり、自分の理想とする環境づくりも進めてきました。

振り返ると、自分なりにやりたいことへ全力で挑戦してきた人生だったと思います。だからこそ今後は、自分が築いてきたものをどう次の世代へつないでいくかも考える時期に入っています。馬とともに歩んできた時間を大切にしながら、これからも多くの人に馬の魅力を伝え続けていきたいですね。

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