保育を通じて町の未来を育てる――地域と共に歩むこども園の挑戦
中央こども園 園長 木元 慎之助 氏
中央こども園は、広い園庭と自然豊かな環境を活かし、子どもたちがのびのびと遊び、挑戦できる環境づくりを大切にしているこども園です。
本記事では園長の木元慎之助氏にお話を伺い、現在の取り組みや経営の考え方、今後の展望について伺いました。
のびのび育つ挑戦の場
――中央こども園の特徴や、大切にしていることを教えてください。
一番の特徴は、広い園庭です。自然豊かな環境の中で、子どもたちが思いきり体を動かしながら、自分でチャレンジできる場所になっています。
園庭には、保育者や職員、保護者が一緒につくった遊具があります。板や丸太、ロープなどを使って、子どもたちが登ったり、渡ったり、考えながら遊べる仕掛けをつくっています。「こういう仕掛けがあったら子どもたちは楽しいよね」と話し合い、実際に形にしています。
正直に言えば、そうした遊具には危ない面もあります。ただ、子どもたちはその中で、自分で「これは危ないかもしれない」「ここから先はやめておこう」と判断する力を身につけていきます。大人が近づきすぎて守ってしまうと、子ども自身が危険を察知する力が育ちにくくなります。小さな怪我や失敗を経験することで、将来もっと大きな怪我を防ぐ力にもつながると考えています。
大切にしているのは、挑戦と失敗をたくさんできる環境をつくることです。保育の世界では、テストなどでは測れない力を「非認知能力」と呼ぶことがあります。子どもたちには、できないことに挑戦したり、悔しいと思ったり、友だちの姿を見て自分もやってみようと思ったりする経験を重ねてほしいと思っています。
また、ある時は地域の方に来てもらい、味噌づくりをしたこともあります。大豆を揉み、匂いを感じ、味噌がどうやってできるのかを知る。そうした食育も、地域ならではの取り組みだと思います。
そしてある時は田んぼに入って泥遊びをします。子どもたちが泥まみれになって遊ぶような体験は、なかなか都会ではできないことです。
町の未来へ種をまく仕事
――保育・福祉の分野に進まれたきっかけを教えてください。
父が理事長ということもありますが、私自身は地元に戻るつもりは全くありませんでした。高校生までは大分県で育ち、大学は早稲田大学に進学しました。その後はIT企業に入り、メディアの動画制作などの仕事をして2023年までの約10年間は東京で過ごしました。会社員として働いたり、個人事業主として動画制作をしたり、中高生向けのキャリア教育に関わるNPO団体の活動にも携わったりしていました。
2023年12月に地元へ戻りましたが、すぐに園に関わったわけではなく、自分の会社を立ち上げ、クリエイティブの仕事をしていました。自分が培ってきた動画やクリエイティブの力で、野菜やお店の魅力をもっと伝えたいと思っていました。
園長になったきっかけは、まず前任の園長が退任したことです。もう一つは、保育や教育の業界に大きな可能性を感じたことです。
大分県杵築市は、消滅可能性都市に選ばれるなど、子どもの数が減っている地域です。自分が育った町がなくなっていくのは悲しいですし、子どもの頃に見ていた祭りの景色なども少しずつなくなっていると感じています。町のらしさを取り戻したい、地域をよくしたいという思いがありました。
映像やクリエイティブの仕事も、世の中をよくしたいという思いで取り組んできました。保育もまた、未来に向けた種まきができる、とても可能性のある仕事です。さらに、街づくりにもつながる。そう考え、園に関わることを決断しました。
現場を知り、園を前へ進める
――職員の皆さんとの関わりで、大切にしていることはありますか。
本音で話すことです。無駄な気遣いや周りの目よりも、子どもたちのために、園としてのサービスをよくすることに集中してほしいと思っています。だからこそ、遠回しではなく、対等に対話することを意識しています。
また私は保育の経験がゼロの状態で園長になりました。だからこそ、学ばせてほしいという姿勢を大切にしています。実際に0歳から5歳まで、すべてのクラスに入り、子どもたちがどんな遊びをして、どのように一日を過ごしているのかを見ました。先生たちにも「これはなぜしたんですか」「どういう意味があるんですか」と質問しました。
その中で、先生たちが一人ひとりの子どもを本当によく見ていることを知りました。「この子はこうだから、こういう声かけをした」というように、細かく考えて関わっている姿を見て、とても尊敬しました。
一方で、民間企業出身だからこそ見えることもあります。保育業界には紙の文化が多く残り、業務の効率化が進んでいない面もあります。保育の部分は学びながら、これまでの経験を活かして、業務を効率化できるところは変えていきたいと思っています。
地域で支える新しい園のかたち
――今後の展望や挑戦したいことを教えてください。
大きく二つあります。
一つは、中央こども園を、単なるこども園や保育園としてだけでなく、地域の子育て支援の拠点のような場所にしていくことです。子どもの数が増えにくい地域では、こども園や保育園も縮小していく傾向があります。だからこそ、園が地域の中で果たす役割を広げていきたいと考えており、子育て支援の「多機能型コミュニティ」のような場にしていきたいと考えています。地域のおじいちゃん、おばあちゃん、小、中、高校生などが園に来て、子どもたちと遊んだり、出会いが生まれたりする場にしたいです。
今、発達に特性のある子どもたちも増えています。現状では、そうした子どもたちは別の施設に行くことが多いですが、言葉の発達が少し遅い子や、いわゆるグレーとされる子どもたちもいます。その子たちにとって、別の施設に行く意味がよく分からないこともあると思います。だからこそ、児童発達支援の分野にも取り組んでいきたいです。言葉を話せるようにしたり、感覚機能を育てたりする療育の分野を園の中に取り入れ、発達に特性のある子どもたちも同じ園の中で受け止められるようにしたいと考えています。
もう一つは、そうした園のあり方が形になり、ブランドとして他の地域にも広げていくことです。園を増やしどんどん拡大していきたいということではなく、この地域で得た、のびのびと生きられる保育、個性を伸ばしていける子育ての方針やコンセプトを、他の地域にも還元していきたいという思いです。子どもたちが自分らしく育ち、地域の人たちが関わり合いながら支えていく。中央こども園は、そんな新しい園のかたちを目指しながら、これからも地域とともに歩みを進めていきます。
――仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。
趣味としては、地域のサッカーチームをつくっています。クラブチームではありませんが、大学生、高校生、社会人が交流できる場になればと思い、異なる世代が関われるサッカーチームを運営しています。ただ楽しくやるだけではなく、その日ごとにテーマを決めてサッカーをする「テーマサッカー」として取り組んでいます。