技術と職人を未来へつなぐために――野谷組が描く建設業界の新たなスタンダード

株式会社野谷組 代表取締役社長/CEO 野谷 朋也氏

株式会社野谷組は、躯体工事を中心に、鳶工事や土工工事、鍛冶工事、基礎工事などを手がける建設会社です。設立以来、「未来へ繋ぐ技術と職人」を企業理念に掲げ、職人の技術継承と働く環境の整備に取り組んできました。近年では、SNSを活用した情報発信や採用活動にも力を入れ、若手職人の育成を通じて建設業界に新たな価値を生み出しています。本記事では、代表の野谷朋也氏に、現在の取り組みや創業の背景、今後の展望などについて詳しく伺いました。

躯体工事を軸に、建設業界の新たな価値を創造する

――現在の事業内容について教えてください。

当社では、躯体工事を主軸とした建設事業を展開しています。具体的には、鳶工事や土工工事、鍛冶工事、基礎工事など、建築物の基盤を支える領域を中心に幅広く対応してきました。建物の安全性や品質を左右する重要な工程を担う立場として、一つひとつの現場に真摯に向き合い、着実に実績を積み重ねています。

また、「未来へ繋ぐ技術と職人」を企業理念に掲げ、施工を通じた価値提供に加え、職人の技術を次世代へ継承していくことも重要な使命の一つです。若手人材の育成や働く環境の整備にも継続して力を注ぎ、技術と人の双方を育てながら、時代の変化の中でも社会に求められる企業でありたいと考えています。

――野谷組ならではの強みはどのような点にありますか。

強みは、SNSを活用した発信力と、若手人材の採用・育成です。採用の大半はSNS経由で実現しており、当社の理念や現場の姿を発信することで、多くの共感をいただいています。広告費を抑えられる分、福利厚生や教育制度の充実、職人への還元に充てられることも特徴です。

また、10代・20代の若手職人が多く在籍しており、「なぜこれだけ若い人が集まるのか」と同業他社から驚かれることも少なくありません。ベテランの技術を継承しながら新しい価値観も取り入れていく――その循環こそが、建設業界の未来につながると考えています。

「職人を大切にする会社をつくる」――創業の原点となった問題意識

――創業に至った経緯を教えてください。

私は18歳頃から建設業界で働き、約8年間、職人として現場に立ってきました。そのなかで感じたのは、職人の技術が正当に評価されていない現実です。

待遇や教育体制が十分ではなく、若手が辞めていく姿も数多く見てきました。このままでは業界そのものが縮小してしまう――そんな危機感が、創業のきっかけになりました。

――独立という決断に至った理由を教えてください。

当時勤めていた会社には愛着があり、本来は組織の内側から変革を起こしたいと考えていました。歴史ある会社をさらに発展させ、業界を牽引する存在にしたいという想いもあったからです。しかし、長年築かれてきた仕組みや価値観を変えていくことの難しさも感じていました。

そうしたなかで、周囲からの後押しもあり、一人親方として独立する道を選びました。職人を大切にしながら適正な利益を生み出し、人材育成や待遇改善にも取り組む会社を実現したい――その姿を示すことが、建設業界の新たなロールモデルにつながると考えました。

理念を軸に、建設業界の未来を切り拓く

――経営判断において大切にしていることは何ですか。

何よりも大切にしているのは、企業理念にも掲げている「未来へ繋ぐ技術と職人」 という考え方です。

売上や利益も重要ですが、それはお客様に喜んでいただいた結果です。どれだけ理念を体現し、業界や社会によい影響を与えられたか――その積み重ねが、数字につながると考えています。

――建設業界に対してどのような使命感を持っていますか。

技術を未来へ残すための仕組みづくりにも挑戦していきたいと思っています。

建設業界には、優れた技術を持つ職人が数多くいます。一方で、マネジメントや財務の知識不足によって、技術継承が難しくなっている現実もあります。

だからこそ、技術だけでなく、経営や組織づくりの重要性も発信しながら、職人が誇りを持って働ける業界づくりに取り組んでいきたいと考えています。

対話を重ね、理念に共感する仲間と組織を育てる

――社員とのコミュニケーションで大切にしていることを教えてください。

月1回の1on1面談を継続して実施し、役員や各部署の責任者が社員一人ひとりと直接対話する機会を設けています。現場で感じている課題や将来の目標、キャリアに対する考えなどをていねいにヒアリングし、その内容を組織運営にも反映してきました。

こうした対話の積み重ねは、働き方への満足度向上や離職率の低下にもつながっていると実感しています。経営と現場の距離を近づけ、社員の声を適切に吸い上げていくことが、信頼関係の構築と持続的に成長できる組織づくりの基盤だと考えています。

――採用ではどのような点を重視していますか。

最も重視しているのは、企業理念への共感です。経験やスキルは入社後にも磨いていくことができますが、会社の目指す方向性に共感し、理念を自分事として捉えられるかどうかは簡単に身につくものではありません。だからこそ、採用においては「なぜ野谷組で働きたいのか」を大切にしています。

同じ価値観を共有し、ともに組織をつくっていける人材と出会うことが、持続的な成長につながると考えています。

他業界の学びを、建設業界の変革につなげる

――影響を受けた人物や考え方について教えてください。

建設業界に明確なロールモデルがいたわけではなく、むしろ他業界の経営者から学ぶ機会の方が多かったと感じています。なかでも影響を受けたのが、中古車販売事業を展開するバディカの中野優作社長です。

企業理念を軸に事業を成長させながら業界変革に挑む姿勢には、多くの示唆を得ました。その学びをもとに、1on1面談をはじめとした他業界では一般的な仕組みも積極的に取り入れています。業界の慣習にとらわれず、本質的に価値のあるものを柔軟に実践していくことが、組織の成長につながると考えています。

施工のその先へ――より大きな挑戦で業界に変革を起こす

――今後取り組んでいきたい挑戦について教えてください。

今後は、躯体工事会社としての事業領域をさらに拡大していきたいと考えています。施工機能にとどまらず、建設資材の供給まで含めた一気通貫の体制を構築することで、より大規模な案件にも対応できる事業基盤を整えていく方針です。事業領域を広げることで、業界に対して提供できる価値や影響力も一層高めていけると考えています。

また、SNSを活用した広報活動や物販事業、志を同じくする企業への支援などにも取り組みながら、新たな収益機会の創出にも挑戦しています。建設業界に新しい選択肢を提示し、業界全体の発展につながる存在を目指していきたいですね。

――これから直面する課題にどのように向き合いますか。

会社が成長すれば、新たな課題やリスクも増えていきます。それでも、理念の実現に向けて進む姿勢は変わりません。これまでも仲間とともに乗り越えてきたように、一つひとつの課題と向き合いながら前進していきたいと思っています。

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