人とテクノロジーの力で社会課題に向き合う――sembear合同会社が描くデジタル人材育成の未来
sembear合同会社 代表 治田耕太郎 氏
広告業界向けの人材育成と自治体向けのデジタルマーケティング支援を手がけるsembear合同会社。治田耕太郎氏は、広告業界で培った経験を活かし、人材育成を軸とした事業を展開しています。本記事では、事業への想いや組織づくり、今後の展望について伺いました。
目次
人材育成を軸に広がる事業と社会への貢献
――現在の事業内容や特徴について教えてください。
現在は広告代理店向けの人材育成事業と、自治体向けのデジタルマーケティング支援を主な事業としています。
広告代理店向けの人材育成については、おかげさまで多くの企業にご利用いただいています。大手企業の社員育成を担当する機会もあり、人材育成の分野では一定の実績を積み重ねてきました。
また、創業から間もない頃に自治体職員向けのデジタルマーケティング研修をご依頼いただいたことをきっかけに、行政分野の支援も始まりました。現在では山形県から鹿児島県まで、多くの自治体の情報発信やデジタルマーケティングを支援しています。
広告代理店向けの人材育成で培った知見を、自治体向けのデジタルマーケティング支援にも活かせていることは、当社の強みの一つだと思っています。
――会社の理念や大切にしている考え方を教えてください。
当社では「ヒューマニティプラステクノロジー」という言葉を大切にしています。
現在は自治体向けの情報発信支援にも携わっていますが、世の中にはフェイクニュースや誤った情報が数多く存在しています。一方で、行政が発信する正しい情報は地味に見えてしまい、必要な人へ十分に届かないことも少なくありません。
しかし、行政の情報には防災や医療、福祉など、人々の生活に直結するものが数多くあります。本当に必要な情報が届かなければ、大きな不利益につながる可能性もあります。
だからこそ私たちは、単にテクノロジーを導入するだけではなく、それを正しく使いこなせる人材を育てることを重視しています。テクノロジーと人間性の両方がそろって初めて社会に良い影響を与えられる。その考え方を事業の中心に据えています。
テクノロジーに使われるのではなく、使いこなす人を増やしたい
――これまでのキャリアを通じて感じてきたことを教えてください。
長年デジタル広告やテクノロジーの分野に携わる中で強く感じてきたのは、「テクノロジーを使う人」と「テクノロジーに使われる人」がいるということです。
現在はAIが注目されていますが、新しい技術が登場すると、それ自体が目的になってしまうケースも少なくありません。本来は、自分が何を実現したいのかを考え、そのための手段としてテクノロジーを活用するべきだと思っています。
だからこそ、人が人らしく働くためにテクノロジーをどう活用するのか。その考え方をもっと広げていきたいと考えています。
――テクノロジーとの向き合い方で大切にしていることは何でしょうか。
私自身が大切にしているのは、テクノロジーに振り回されないことです。
新しい技術が登場すると、どうしても機能や仕組みに目が向きがちです。しかし、それだけでは本質的な価値は生まれません。大切なのは、その技術によって誰のどんな課題を解決したいのかを考えることだと思っています。
私たちが自治体や企業を支援する際も、ツールの使い方だけを伝えるのではなく、その先の目的や成果まで見据えながら取り組んでいます。
技術はあくまで手段です。人が主体となって使いこなしてこそ、本当の価値が生まれると考えています。
――経営判断の軸になっている価値観を教えてください。
私が経営において大切にしているのは、「人をできないと決めつけないこと」です。
人にはそれぞれ得意なことと苦手なことがあります。周囲から難しいと言われている方でも、何が得意で何が苦手なのかを丁寧に見極め、小さな成功体験を積み重ねることができれば成長していく姿を何度も見てきました。
自治体職員の方々への研修でも同じです。一般的には難しいと思われがちなデジタルマーケティングの分野でも、適切な支援を行えばしっかり成果につながります。
だからこそ、最初から可能性を閉ざさないことを大切にしています。人を信じ、その成長を支援することが、私自身の経営の軸になっています。
フルリモートでも心理的安全性を大切にする組織づくり
――組織運営やコミュニケーションで意識していることを教えてください。
当社は少人数の組織ですが、全国の自治体を支援しています。また、フルリモートで働く会社でもあります。だからこそ、コミュニケーション環境の整備には力を入れています。
単にオンライン会議ができれば良いわけではありません。 同じ空間にいるような感覚で雑談や相談ができる環境を整え、気軽にコミュニケーションが取れる状態をつくっています。
組織として大切にしているのは心理的安全性です。分からないことを聞くのは恥ずかしいことではありませんし、挑戦する中で失敗することも当然あります。できることだけを続けるのではなく、新しいことに挑戦する姿勢を歓迎する文化を育てています。
――採用において重視していることを教えてください。
採用において最も重視しているのは倫理観です。デジタルマーケティングの世界は、やり方次第で短期的な成果を出すこともできます。しかし、本当に相手の価値になる提案なのかを考えられる人でなければならないと思っています。
倫理観だけでなく、それをビジネスとして成立させる視点も重要です。相手にとって本当に意味のある価値を提供できるかを考えながら行動できる人と、一緒に働きたいですね。
AI時代だからこそ、人が活躍できる環境をつくりたい
――今後の展望について教えてください。
大きく2つあります。
1つは広告業界向けの人材育成です。AIの進化によって、これまでと同じ仕事を少ない人数で進められる場面は確実に増えていくと思います。だからこそ、働く人が新しいキャリアを描けるような研修や組織開発の仕組みを広げていきたいと考えています。
もう1つは自治体支援です。フェイクニュースや情報の分断によって、本当に必要な支援が届かないケースが増えています。行政が正しいデジタルマーケティングを実践できれば、社会課題の解決にもつながるはずです。 そうした取り組みを今後も続けていきたいですね。
私たちのサービスは、人材育成や自治体支援の分野で着実に成果を上げています。取り組みの有効性には手応えを感じており、今後はその価値をより多くの方に知っていただくことが大切だと考えています。
変えるべきことを変える姿勢を持ち続けたい
――影響を受けた考え方や大切にしている価値観を教えてください。
特定の人物を挙げることは難しいのですが、歴史上の人物であれば「変えるべきものを変えた人」に共感します。現状維持ではなく、必要な変化を恐れずに実行する姿勢には学ぶことが多いですね。
社会も技術も常に変化しています。その中で大切なのは、流行や技術そのものに振り回されるのではなく、自分たちが何を実現したいのかを見失わないことだと思います。
テクノロジーを活用しながらも、人としての倫理観や価値観を大切にする。その両立こそが、これからの時代に求められる姿ではないでしょうか。