学校を越えて学びを社会へ――子どもの可能性に灯をともす教育の挑戦
一般社団法人 地域創生教育デザイン 代表理事 荒井顕一氏
一般社団法人地域創生教育デザインは、学校という枠にとらわれず、地域や家庭、社会全体に学びの場を広げることを目指す団体です。地域ならではの体験を教育につなげるエデュケーショナル・ツーリズムをはじめ、アート教育、多様な個性を持つ子どもたちへの学習支援という三つの事業を展開しています。本記事では、代表の荒井氏に、団体設立の背景や教育に対する思い、組織運営で大切にしていること、今後の展望について伺いました。
学校を越えて、学びをつなぐ
――団体を立ち上げた経緯について教えてください。
私はもともと、学校の先生をはじめ、教育に関わる仕事を続けてきました。その中で感じていたのが、教育を学校だけが担うようになっているという課題です。家庭や地域が持っていた教育力が少しずつ弱まり、「教育やしつけは学校が行うもの」という考え方が強くなっていました。しかし、本来の教育は学校の中だけで行われるものではありません。また、学びも学生時代だけで終わるものではないと思っています。子どもたちが地域の中で学べる環境をつくり、家庭や地域が持つ教育力を育てたい。そして、大人も含めて学び続ける面白さを感じられる社会にしたいという思いから、一般社団法人を立ち上げました。
――現在の事業内容や特徴について教えてください。
主に三つの事業を手がけています。一つ目は、エデュケーショナルツーリズム事業です。その土地でしかできない豊かな体験や、そこでしか出会えない人との交流を通して、「五感を使って学ぶ」機会をつくっています。
例えば、海のない地域で暮らす子どもを海のある地域へ連れて行ったり、都会の子どもを畑へ連れて行ったりします。子どもたちが生きた体験を得られるだけでなく、受け入れる地域にとっても、自分たちの日常や文化の価値を再発見する機会になります。単なる観光ではなく、”教育的な付加価値”を加えることが特徴です。
二つ目は、アート教育関連事業です。本物の作家や芸術家と一緒にワークショップを行い、子どもたちの感性や創造性を育てています。現代の子どもたちは、学校だけでなく、放課後も塾や習い事があり、非常に忙しく過ごしています。アーティストが持つ緩やかな空気や人生のペースに触れながら、対話を重ね、一つひとつの活動を味わう時間を大切にしています。
三つ目は、多様な個性の学び支援事業です。公認心理師としての経験を活かし、個性の強い子どもや、いわゆるグレーゾーンと呼ばれる子ども、その保護者や教師を支援しています。保護者向けのペアレントトレーニングや、教師向けの授業のユニバーサルデザイン研修、子どもの特性を知るための検査などを通じて、本人の自己理解を深める手助けをしています。
――貴社の理念やビジョンにはどのような思いが込められていますか?
一人ひとりの子どもが、自分の可能性を最大化できる社会をつくりたいと考えています。
この世界のどこかに、自分が活躍できる場所や、安心して呼吸できる場所があると信じられることが大切です。子どもたちが自分のやりたいこと、挑戦してみたいことに取り組み、試行錯誤しながら学べる環境を、社会のさまざまな場所につくっていきたいと思っています。
子どもたちが元気になると、その周りにいる大人も元気になります。教育を通して、社会や日本全体を元気にしていきたいです。
自ら挑戦し、未来を切り開く
――これまでのキャリアについてと、経営者になられた経緯を教えてください。
最初は塾の講師として働き、その後、フリーランスで地方創生の仕事を経験してから、公立学校の教師、そして現在は私立学校の教育に携わっています。
経営者を目指した理由は、自分自身も挑戦する存在でありたいと思ったからです。子どもたちに「何でもできる」「挑戦してみて」と伝えるだけではなく、自分自身も決断し、仕事をつくり、自分の意志と努力で未来を切り開く人生を歩みたいと考えました。その姿勢自体がエネルギーとなり、関わる子どもたちや周囲の人たちに還元できるのではないかと思っています。自分にとっては、経営者というスタイルが合っていると感じ、団体を立ち上げました。
――経営判断で大切にしている価値観は何ですか。
「何をやりたいか」以上に、「誰とやりたいか」を大切にしています。
教育では、何を教わったか、何ができるようになったかだけでなく、誰に教わり、どのような人と出会ったかが心に残ります。経験豊富な先生の授業だけではなく、新人の先生が悩みながら一生懸命準備した授業が、その子の一生の思い出になることもあります。価値は、人とひととの間から生まれるものです。だからこそ、「この人と一緒に仕事をしたい」「この人は面白い」と思える人との出会いを重視しています。
もう一つ意識しているのは、将来自分の人生を振り返った時に、記事になる、良い出来事として語れる選択かどうかです。また、高校生の頃の自分が現在の自分を見た時に、憧れられる生き方をしているかどうかも考えています。
人と人との関係を土台に
――組織運営で意識していることを教えてください。
何よりも、共に働く人たちが仲間であることを大切にしています。
事業を進める中では、仕事上の役割や判断が必要になりますが、その前提として、人とひととの関係があります。仲間であり続けるためには、どのような組織であるべきか、どのような関係でいるべきかを、普段から話し合っています。
――採用する上で社員に求める人物像について教えてください。
一緒にいて楽しい人や、遊び心のある人です。もちろん、仕事に必要な力を備えていることは前提ですが、それに加えて、新しいことに一緒に挑戦したいと思える人を求めています。また、私たちの仕事は人、特に子どもと向き合う仕事です。子どもが好きで、一人ひとりに寄り添えることも大切な要素だと考えています。
子どもの可能性に灯をともす
――今後の展望や挑戦したいことを教えてください。
団体としては、まだ始まったばかりです。そのため、まったく新しい事業を増やすことよりも、現在取り組んでいる事業を成功させることが重要だと考えています。今自分たちが関わっている仕事から着実に信頼を育てていきたいです。
――現状、課題として捉えていることをを教えてください。
教育事業では資金面が大きな課題になります。私たちが提供したいのは、資格取得や合格のように、すぐに成果が見える学びだけではありません。子どもの一生に残る、小さな灯火のような体験をつくりたいと考えています。その成果は、すぐには見えないかもしれません。教育旅行などは多くの人が関わるため、費用もかかります。それでも、子どもたちが自分の可能性を信じ、知らない世界へ踏み出すきっかけとなる教育を届けるために、一つひとつの事業を形にしていきます。
――仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。
最近はバーベキューを楽しんでいます。特に燻製にはまっていて、一人でじっくり燻製料理をつくり、完成したものを周囲の人に振る舞う時間が好きです。
一般社団法人地域創生教育デザイン
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