安心を、もっとカジュアルに。IoTとAIで「セキュリティの民主化」を推し進める経営者の挑戦

株式会社Secual 代表取締役 菊池 正和氏

2大大手が市場の大部分を占めてきたホームセキュリティ業界に、スマートなテクノロジーで新風を吹き込んだ株式会社Secual。「安心をもっとカジュアルに」というミッションを掲げ、所得の格差が防犯の格差にならない世界の実現を目指しています。自社開発の安価なセンサーやスマートフォンアプリを活用した手軽なホームセキュリティから、近年ではスマートタウンやスマートシティといった大規模な街全体の安全を守る事業へと急速に拡大を遂げています。 今回は、通信キャリアでの長年の経験を経て同社の舵取りを担う代表取締役CEOの菊池正和氏に、創業の理念や経営判断の軸、組織運営におけるボトムアップの重要性、そしてAI時代の幕開けに伴うこれからの防犯の展望についてお話を伺いました。

「安心をもっとカジュアルに」への想い

――現在の事業内容や強みについて教えてください。

私たちは、社名の由来でもある「セキュリティ(Security)」と「カジュアル(Casual)」を掛け合わせた造語が示す通り、防犯をより身近なものにするサービスを展開しています。 これまでの日本のホームセキュリティ業界は、大手2社を中心としたビジネスとして成長を遂げてきましたが、どうしても富裕層向けの高級なサービスという側面が強くありました。高価な機器を設置し、何かあれば警備員が出動する仕組みのため、月額費用も5000円から7000円ほどに上ります。データを調べてみると、世帯年収が1500万円や2000万円といったご家庭でないとなかなか導入が進んでいないのが現実でした。

「所得の格差がセキュリティの格差になってしまっている」という現状を、私たちは大きな社会課題だと捉えました。

そこで、2010年代以降に急速に普及が進んだスマートフォンやIoT(モノのインターネット)のテクノロジーを活用し、誰もが安価な機械とスマートフォンさえあれば自宅のセキュリティを構築できる「セキュリティの民主化」を目指してスタートしました。 私たちの最大の強みは、一般のユーザー様を強く意識した優れたデザイン性、設置の簡単さ、そして使い勝手の良さを追求し、ハードウェアの設計・開発からシステム、アプリケーションに至るまで、すべてを一気通貫で自社開発している点にあります。家1軒を守るサービスから始まりましたが、家が集まればマンションやアパートになり、集合体になれば街になります。現在ではホームセキュリティにとどまらず、スマートタウンやスマートシティという大きな枠組みの中で、セキュリティを統合的に提供できる企業へと成長を遂げています。

学んだ「自ら燃える」精神

――経営者になられた経緯を教えてください。

もともとは長年KDDIに勤務していました。ガラケー時代からスマートフォンへの過渡期にわたり、長きにわたって商品企画やプロモーション、営業の現場など、さまざまなキャリアを積んできました。 その中で「IoTという新しいテクノロジーを、いかに世の中のために使っていくか」という目線を持つようになったのです。しかし、通信キャリアという既存の巨大な組織の枠組みや、従来の携帯電話ショップの延長線上では、自分が本当にやりきりたいビジネスの形を模索するには限界があるのではないか、と考え始めました。

また、キャリアの中でシリコンバレーに赴く機会も多くあり、現地の多様な企業文化や、熱い思いを持って挑戦している人たちに触れたことも大きかったです。当時は強烈に意識していたわけではありませんが、振り返ると、そうした経験が「自分が外に出て、新しいビジネスをゼロからやる」という選択肢を選ぶ背中を少しずつ押してくれたのだと思います。

――仕事をする上で大切にしている価値観は何でしょうか。

前職のKDDIに長く身を置いていたこともあり、マネジメント層としての期間も含めて、京セラやKDDIの創業者である稲森和夫さんの影響を非常に大きく受けています。彼の著書や発信してきた数多くの言葉のなかでも、私が特に大切にしており、自分自身のフィロソフィー(哲学)の軸となっているのが「自ら燃える」という精神です。

周囲に言われて動くのではなく、いかに自分自身を内側から奮い立たせ、熱い思いを絶やさずに最後までやりきることができるか。予期せぬ壁や困難にぶつかったときほど、この「自ら燃える」という姿勢を強く意識し、自らの意思決定の軸に据えています。

フラットな関係性と「対面」がもたらす肌感覚

――組織運営で意識していることを教えてください。

私たちは現在も少数精鋭のチームで動いています。私自身が非常に「現場主義」な人間であるため、何よりも現場の生の声を直接聞くことを一番大切にしています。 

現在は私が本社にいるため、拠点以外のメンバーや外部とのやり取りはリモートを活用することもありますが、オンラインかオフラインかを問わず、心理的な距離が近く、気軽にアプローチしてもらえるトップでありたいと思っています。

――社員に求める姿勢はどのようなものですか。

私が一緒に働きたいのは、自分の強い思いや信念を持ち、それを最後までやり抜こうとする人です。その熱意や人間性を大切にしているため、最終面接は必ず対面で行っています。

また、トップダウンではなく、現場からのボトムアップで成長できる組織を目指しています。ビジネスは人で成り立つからこそ、一人ひとりを大切にし、自発的に活躍できる環境づくりを何より重視しています。

AIを味方に、守れる箱を大きくしていく未来

――今後の展望や挑戦したいことを教えてください。

今後も私たちは「セキュリティ」を軸に事業を展開していきます。一方で、AIやスマートホームの進化により、安全の定義そのものが大きく変わる時代を迎えています。

これまでの物理的な防犯に加え、今後はサイバー領域での安心・安全も重要になります。Secualとして新たな価値をどう提供できるか、現在も技術開発と検討を進めています。

また、組織運営においてもAI活用は欠かせません。業務効率や働き方が大きく変わる中、私たちは独自のAI活用ガイドラインを整備し、新しい組織づくりにも挑戦しています。

企業の成長には組織づくりの壁がありますが、仲間全員が同じ方向を向いて進める環境づくりが何より重要だと考えています。AI時代における組織のあり方についても、これから真剣に向き合っていきます。

私が起業した原点は、「人の役に立ちたい」という思いです。しかし、一人でできることには限界があります。だからこそSecualという組織を成長させ、より多くの人の安心・安全を支えられる存在を目指しています。

新しいアイデアが生まれる時間

――仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。

私は普段から、朝に歩いたり走ったり、トレーニングをしたりと、意識的に体を動かすようにしています。

実は、そうやって黙々と歩いているときや走っているときほど、「次はこういうことに挑戦してみよう」「あの課題はこうすれば解決できるかもしれない」といった、驚くほど素晴らしいアイデアやブレイクスルーがパッと思い浮かぶことが多いのです。

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