現場に立ち、業界を変える――ウェディングに本気で向き合い続ける理由
株式会社TTK 代表取締役 徳永勤氏
結婚式という人生の節目に関わる仕事は、華やかなイメージの一方で、業界特有の慣習や構造的な課題も多く抱えています。株式会社TTKは、ウェディング業界に特化したコンサルティングを軸に、現場に深く入り込みながら業界の在り方そのものと向き合ってきました。さらに近年では、フォトウェディング事業にも注力し、新たな選択肢を新郎新婦に届けています。
本記事では、代表の徳永勤氏に、これまでの歩みや経営にかける想い、そして業界の未来について伺いました。
目次
現場で感じた違和感が、独立と事業の原点になった
――リクルート時代のご経験について教えてください。
もともと私はリクルートで営業をしていました。営業成績にはかなり恵まれていて、全社MVPなど、社内でもらえる賞はほとんど経験させてもらいました。周囲から見れば、順風満帆な営業人生だったと思います。
ただ、成果を出せば出すほど、心のどこかで違和感が膨らんでいきました。「これは自分が優秀だから売れているのか、それともリクルートという会社の力なのか」。その問いが、頭から離れなくなったんです。
――評価される環境にいながら、なぜ違和感を覚えたのでしょうか。
営業として結果を出し、評価されること自体はありがたかったです。ただ、会社の看板があるからこそ成立している成果なのではないか、という思いが拭えませんでした。このまま同じ環境にい続けることが、自分にとって本当に成長なのか疑問を持つようになりました。
もっと厳しい環境で、自分の力がどこまで通用するのかを試したい。そう考えるようになったのが、次の一歩を考え始めたきっかけです。
――その後、ウェディング業界に入られた経緯を教えてください。
次に選んだのが、ウェディングの口コミサイトを立ち上げる会社でした。いわゆる超ベンチャー企業です。創業期から関わり、営業として現場を回りながら、結婚式場やホテルと向き合う日々が始まりました。
当時は、結婚式場選びといえば、情報誌に掲載されている式場の中から選ぶのが当たり前の時代でした。口コミという切り口で業界を変えようという考え方は、まだ珍しかったと思います。
現場を回る中で強く感じたのは、「有名な結婚式場=良い結婚式場ではない」という現実です。広告宣伝費をかけて露出が多い式場が必ずしも良い結婚式をしているわけではない。一方で、知名度は低くても、新郎新婦に真摯に向き合い、素晴らしい結婚式をつくっている式場がたくさんありました。営業として現場を見れば見るほど、そのギャップが気になるようになりました。
――独立を決断した理由を教えてください。
私が向き合いたかったのは、株主ではありません。結婚式場や新郎新婦、そして現場で必死に頑張っているプランナーたちです。その人たちのために、自分の時間と力を使いたい。そう考えたとき、独立する以外の選択肢はありませんでした。上場会社を離れ、結婚式場やホテル向けのコンサルティング事業を立ち上げたのが、今から12年前のことです。
机上の空論では終わらせない、現場型コンサルティングの強み
――御社の事業の特徴を教えてください。
正直に言うと、「コンサルティング」という言葉はあまり好きではありません。これまでのキャリアの中で、うさんくさいコンサルタントをたくさん見てきました。私がやっているのは、資料を作ってアドバイスをすることではありません。自分自身が現場に立ち、実際にお客様の接客をすることです。
――現場に立つことを、なぜそこまで重視しているのでしょうか。
人は、言葉だけでは育たないと思っているからです。どうやって新郎新婦と向き合うのか、どういう言葉をかけるのか、どういう間で話すのか。それは現場でしか伝えられません。自分が売上をつくり、そのプロセスをそのままOJTとして見せる。それが一番の教育だと思っています。
――成果についても具体的に教えてください。
例えば、毎月コンサルティングフィーをいただくのであれば、それ以上の売上を必ず現場で返します。それができないのであれば、コンサルティングを名乗る資格はないと思っています。結婚式の成約率は、業界全体では30〜40%台が一般的です。その中で、弊社が関わる現場では、常に70%以上の成約率を維持しています。これは理論ではなく、現場で積み重ねてきた結果です。
――人材教育との関係性についてはどうお考えですか。
人材教育は中長期で考えられがちですが、私は短期施策として同時に進められるものだと考えています。売上をつくりながら人を育てる。その両立ができることが、弊社の強みだと思っています。
上場経験を経て定まった、経営判断の軸と価値観
――経営判断の軸になっている価値観を教えてください。
一番大切にしているのは、「必ずクライアントを稼がせる」ということです。それができない仕事は、基本的にやりません。もう一つは、三方よしのビジネスであることです。クライアントだけが儲かるのではなく、そのパートナー企業も喜び、その先にいる新郎新婦が幸せになる。その循環がない仕事には、あまり意味を感じません。
――上場経験は、今の経営スタイルにどう影響していますか。
上場するまでは、「業界を変える」という想いだけで突き進んでいました。それはそれで、非常に充実した時間でした。ただ、上場後に数字や株価を意識する時間が増えたことで、自分の軸がどこにあるのかを見つめ直すきっかけになりました。今は、現場に近い場所で、顔が見える相手と仕事をすることを大切にしています。
恩師の言葉がつくった覚悟と、ブレない行動指針
――これまでのキャリアで、強く影響を受けた言葉はありますか。
リクルート時代に教育してくれた恩師から言われた「死ぬ気でやれ。でも死なないから」という言葉です。この言葉を聞いたとき、本気で取り組んでも人は簡単には壊れないんだと感じました。それ以降、中途半端にやることが一番失礼だと思うようになりました。
――もう一つ、印象に残っている言葉があるそうですね。
「どんなに良いことをしても半分は敵、半分は味方だ」という言葉です。成果を出せば、必ず妬みや陰口は出てきます。でも、何をしても半分は味方だと分かってから、人の評価に振り回されなくなりました。この考え方は、独立後の意思決定や行動の支えになっています。
信用と行動で成り立つ、少数精鋭の組織づくりと人材観
――組織体制について教えてください。
厳選したメンバーのみで、単に人員を確保するのではなく「成果を出せるかどうか」を基準にパートナーを選定しています。細かな指示や管理をするのではなく、一人ひとりが自律的に考え行動する、セルフマネジメント型の体制で完全に信用していますが、その前提として、目指す方向性や価値観が一致しているかをコミュニケーションを通じてしっかりと確認しています。このプロセスが安心して仕事を任せられるチームづくりの基盤だと考えています。
――組織を率いる上で、意識していることはありますか。
自分が誰よりも動くことです。自分がやらずに指示だけを出すのではなく、まず自分がやる。その姿を見て、自然と周囲が助けてくれる関係性をつくりたいと考えています。
コミュニケーションで大事にしているのは、会いに行くことです。メンバーはそれぞれクライアント先が違うので、時間ができたらこちらから会いに行くようにしています。
仕事と向き合い続けるための、リフレッシュと切り替え
――お休みの日はどのように過ごしていますか。
サッカーをしに行ったり、温泉に入ったりしています。体を動かすことで頭が整理されますし、温泉に入って何も考えない時間をつくることで、気持ちがリセットされます。
しっかりリフレッシュするからこそ、また現場に向き合える。経営を続けていく上で、切り替えの時間は欠かせないものだと感じています。