地域に寄り添う“もう一つの居場所”へ――事故経験から生まれた、かのんの自由診療
株式会社かのん 院長 橋本 禎矩氏
株式会社かのんは、鍼治療を中心とした施術に加え、心理カウンセリングにも対応する治療院です。保険に依存しない自由診療でありながら、誰もが通いやすい価格帯を追求し、地域の人々にとって身近な存在となることを目指しています。院長である橋本禎矩氏は、自身の事故経験をきっかけに独立を決意し、患者と同じ視点に立った施術を大切にしています。本記事では、事業の特徴や開業の背景、今後の展望について伺いました。
患者と同じ目線に立つ治療院
――現在の事業内容と特徴について教えてください。
当院では鍼灸治療院として、主に鍼治療を中心に施術を行っています。鍼や整体を軸とした施術が特徴です。
また近年では、心理カウンセラーの資格も活かし、「悩みを聞いてほしい」といったご相談も増えています。身体の不調だけでなく、心にも寄り添った対応を行っている点が当院の特徴です。
施術や相談は基本的に店舗で完結しており、幅広いお悩みに対応できる体制を整えています。
――業界内での強みはどのような点にありますか。
一番の強みは、自分自身が事故によって後遺症を抱えていることです。今もしびれや痛みが残る体だからこそ、患者さんのつらさを実感として理解できます。施術者としてだけでなく、同じ悩みを持つ立場として寄り添える点は、他にはない特徴だと思っています。
また、当院は保険を使わない自由診療ですが、価格はできるだけ抑えています。保険診療と同等かそれ以下の水準を目指し、「気軽に通える場所」であることを大切にしています。治療院でありながら、ふらっと立ち寄れるような場になれればと考えています。
事故をきっかけに歩み出した経営の道
――事業を始められた背景について教えてください。
この業界に入って13年ほどになりますが、当初は勤務として働いていました。転機となったのは5年前のバイク事故です。首を痛め、左半身に麻痺が残ったことで、働き方を見直さざるを得なくなりました。勤めのままでは周囲に気を遣わせてしまうことも多く、自分のペースで仕事ができる環境をつくりたいと考え、独立を決意しました。
もともと強く経営者を目指していたわけではなく、「いつかできたらいい」という程度の思いでしたが、事故をきっかけに現実的な選択として踏み出した形です。
――これまでのキャリアでターニングポイントとなった出来事はありますか。
大きな転機はやはり交通事故ですが、それ以前にこの業界に入ったことも重要な転機の一つです。工業高校を卒業してから様々な仕事をしていましたが、なかなか自分とあっていないく転々としていました。その後、人と関わる仕事が自分に合っていると感じ、治療の仕事に興味を持ちました。鍼灸整骨院で働きながら学校に通い、技術を身につけてきた経験が今につながっています。
「堅苦しくない」経営が生む信頼関係
――経営をする上で大切にしている考え方は何でしょうか。
現在は一人で運営しているため、大きな組織としての意思決定というよりも、自分の感覚やタイミングを大切にしています。ただ、どんな判断であっても、最終的には人と人との対話を重視しています。直接会って話し、その中で決めていくことを大切にしています。
また、堅苦しい存在にはなりたくないという思いがあります。患者さんにとっても、構えずに来られる場所でありたい。その空気感も経営の中で意識しています。
「何かあったらここに来ればいい」場所へ
――今後の展望について教えてください。
開業してまだ3年ほどのため、まずはより多くの方に知っていただくことが目標です。また、大村市の名物人間になれればいいなと思っています。大きく展開するというよりも、「何かあったらここに来れば何とかなる」と思ってもらえる存在になりたいと考えています。
治療だけでなく、ちょっとした相談や気分転換でも訪れられる場所。地域にとっての“便利な存在”という表現が近いかもしれません。人とのつながりを広げながら、自然と人が集まる場になれれば理想です。
――業界の今後についてどのように見ていますか。
鍼の分野では保険適用が少ないのでどうしても金額が高くなりがちな所と、物価の上昇などの影響を受けやすい状況です。各院がどのような価格設定やメニューを作っていくのかが、今後のポイントになると思います。
また、保険診療を行う分野では制度の厳格化が進んでおり、出店や撤退の動きが活発になる可能性も感じています。業界全体として変化の大きい時期にあると捉えており、その変化に対応していく必要があると考えています。
家族との時間が支える日常
――休日の過ごし方やリフレッシュ方法を教えてください。
休みの日は家の用事を済ませたり、子どもと出かけたりすることが多いです。小学生と保育園の子どもがいるため、一緒に過ごす時間を大切にしています。
とても感謝していますが、子どもの頃は両親が共働きで忙しく、休みが合わなかったこともあり、どこかに連れて行ってもらった記憶がほとんどありません。そのため、子どもたちには寂しい思いをさせたくないという気持ちがあり、今のうちにできるだけ一緒に過ごす時間をつくるようにしています。記憶に残る時期でもあると思うので、できるだけいろいろな場所に連れていくようにしています。
リフレッシュとしては、休日前や休日の晩酌が楽しみです。気持ちを切り替える大切な時間になっています。