介護の“ひとりのしんどさ”をなくしたい──現場から生まれた認知症デイサービスのかたち

株式会社ともの家 代表取締役 増谷友子 氏

認知症対応型デイサービスを運営する株式会社ともの家。利用には医師の診断が必要という特性を持ち、認知症の方に特化したケアを提供しています。本記事では、事業を立ち上げた背景や現場での実感、組織づくり、そして地域との向き合い方について増谷友子氏に伺いました。

“自分が困った”から始まった事業──認知症デイサービスの現在地

――現在の事業内容について教えてください。

うちは認知症対応型のデイサービスをやっています。認知症の診断を病院で受けていないと利用できない仕組みなので、誰でも受け入れられるわけではないんです。診断がない方はお断りすることになります。

でも認知症の方同士で過ごす環境がとても良いと実感しています。同じことを何度繰り返しても、誰も責めないし、自然と受け入れられる。そういう空気の中で過ごすことで、利用者さん自身が穏やかにいられるんですよね。

実際にここで過ごされている時は、本当に落ち着いている方が多いです。怒ったりする方もほとんどいませんし、みなさん自然体で過ごされています。初めて来られた方も、周りが認知症の方だと気づかないくらい、違和感なく馴染まれることが多いんです。

認知症って、外から見てすぐ分かるものばかりではないので、こういう環境があることで安心して過ごせるんじゃないかなと思っています。

「ひとりで介護するのがしんどい」──起業の原点と決断の背景

――起業されたきっかけについて教えてください。

いろんなことが重なっているんですけど、一番大きかったのは家族の介護ですね。姑が脳梗塞で半身麻痺になって、家での介護が難しくて入所していたんです。

そのときに「広い家と広いトイレがあれば家で見られるんじゃないか」と思ったのが一つのきっかけでした。それと同時に、介護って本当に大変で、ひとりで抱えるにはしんどいものだと実感しました。誰か助けてくれる人がいたらいいのに、って。

自分自身が「ひとりでやるのは無理だな」と思ったからこそ、だったら仕事として関わればできるんじゃないかと考えたんです。私が困っていたから、同じように困っている人の助けになるんじゃないかという思いがありました。

もともとは准看護師として働いていて、44歳のときに正看護師資格を取り直した経験もあって、「やりたいなら動くしかない」と思えたのも大きかったですね。一緒にやってくれる先輩がいたことも後押しになりました。

最初は漠然とデイサービスをやろうと思っていたんですが、地域の状況的に一般的なデイサービスは難しいと言われて、認知症対応型に切り替えた流れです。結果的に、自分たちの経験とも合っていたので、今の形になりました。

振り返ると、自分の中の「困った」という気持ちが、そのまま事業の形になったように思います。同じように悩んでいる人に寄り添える場所をつくりたい、その一心でここまで続けてきました。

スタッフが動く職場をつくる──組織と現場の空気感

――組織づくりについて教えてください。

今は全部で10人の体制でやっています。私を含めて看護師が3人、介護福祉士が5人で、あとはスタッフがいます。

正直、ここまで続けてこられたのはスタッフのおかげだと思っています。うちのメンバーは、言われたことだけやるんじゃなくて、自分で考えて動いてくれるんです。何か提案すると、それに対して必ずアイデアを出してくれるし、行動にも移してくれる。

なかなかこういう職場には出会えないと思っているので、この環境は守りたいという気持ちが強いですね。だからこそ、この場所をなくしたくないという思いがあります。

経営としては楽ではなくて、私自身の給料が出るときと出ないときがあるくらいの状態です。でも、それでも続けたいと思えるのは、やっぱりこのチームがあるからだと思っています。

うまくいっているかと言われたら大成功ではないですけど、どうにか回しながらやっている、というのが正直なところです。

日々の現場でも、ちょっとした声かけや気づきをスタッフ同士で共有しながら動いてくれていて、その積み重ねが利用者さんの安心につながっていると感じています。誰か一人に負担が偏るのではなく、自然と支え合える空気があるのは大きいですね。この関係性があるからこそ、厳しい状況でも踏ん張れるし、もう少し続けてみようと思える。そんな職場であり続けたいと考えています。

地域に“知ってもらう”ことから──これからの展望と課題

――今後の展望について教えてください。

地域密着型なので、まずは存在を知ってもらうことが一番大事だと思っています。実際、同じ地域の人でも、認知症対応型のデイサービスと普通のデイサービスの違いを知らない方が多いんです。

だからこそ、認知症についての理解を広げていきたいという思いがあります。その取り組みの一つとして、年に一回お祭りのようなイベントを開いています。近所の方が気軽に入れるようにして、施設の雰囲気を見てもらうんです。

デイサービスって、入ったことがない人にとっては敷居が高い場所なので、その壁を少しでもなくしたいという気持ちがあります。今年は10周年なので、また開催する予定です。

一方で、地域密着型ならではの課題もあります。利用できるのが限られた地域の方だけなので、どうしても利用者数に制限が出てしまう。人口が少ない地域だと、経営的には厳しい部分もあります。

それでも、この地域で必要とされている場所だと思っているので、簡単にやめるという選択はできません。できる形を探しながら、続けていきたいと思っています。

実際に現場にいると、「もっと早く知っていればよかった」と言われることも多くて、まだまだ届いていないと感じる場面があります。だからこそ、一つひとつの出会いやきっかけを大切にしながら、少しずつ認知症やデイサービスへの理解が広がっていけば嬉しいですね。派手なことはできませんが、地域の中で顔の見える関係を積み重ねながら、必要とされる場所であり続けたいと考えています。

非日常に身を置く時間──自分を整えるリフレッシュ方法

――リフレッシュ方法について教えてください。

年に何回かディズニーランドに行くのが一番の楽しみですね。ランドもシーも両方行きます。2泊3日で、3日間しっかり遊びます。

とにかくずっと歩いているので、体は疲れるんですけど、逆に体調が良くなる感じがあるんですよ。不思議なんですけど、あの空間にいるだけで気持ちが切り替わります。

好きなのはやっぱり世界観ですね。音楽も空気も、日常とは全然違う場所にいるような感覚になるんです。乗り物も好きですけど、それ以上にあの空間そのものが好きなんだと思います。

現実から少し離れる時間があることで、また日常に戻って頑張ろうと思える。その繰り返しで、ここまでやってきた気がします。

普段はどうしても仕事のことが頭から離れないんですけど、あそこにいる間だけは自然と気持ちがほどけていくんですよね。好きなものにしっかり浸かる時間があることで、自分の中の余白が戻ってくるような感覚があります。これからもそういう時間を大切にしながら、仕事と向き合っていきたいです。

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