海と牛をつなぐ循環モデルで環境課題に挑む――株式会社カギノワが描く未来

株式会社カギノワ 代表取締役  吉川 真希氏

株式会社カギノワは、海藻「カギケノリ」を活用し、漁業と畜産を結び付ける新たな循環型ビジネスに取り組む企業です。鹿児島県を拠点に、地球温暖化の要因の一つとされる牛由来のメタンガス削減を目指しながら、漁業者や畜産農家の新たな価値創出にも挑戦しています。今回は代表の吉川真希氏に、事業の特徴や創業の経緯、そして今後の展望について伺いました。

鹿児島モデルで実現する「海と牛の未来」

――現在取り組まれている事業について教えてください。

当社は「海と牛の未来をつなぐ」をテーマに、鹿児島県を拠点として事業を展開しています。会社設立は2025年9月ですが、前身の会社は藻類の培養を行う会社のプロジェクトとしてスタートし、その後スピンアウトする形で独立しました。

現在は鹿児島県指宿市の廃校となった小学校の理科室を活用しながら事業を進めています。私たちが取り組んでいるのは、漁業と畜産を「カギケノリ」でつなぎ、循環させる鹿児島モデルの構築です。

――カギケノリとはどのような海藻なのでしょうか。

カギケノリは鹿児島や沖縄などの暖かい海域を中心に生息する海藻です。これまでは特に注目される存在ではありませんでしたが、近年、牛のメタンガス排出を抑制する効果がある海藻として世界的に注目されています。

牛のげっぷにはメタンガスが含まれています。メタンは温室効果ガスの一種であり、二酸化炭素と比較して非常に高い温室効果を持つことが知られています。そこでカギケノリを乾燥させ、飼料添加物として牛に与えることで、メタン排出量を大幅に削減できる可能性があるとされています。

私たちはこのカギケノリを活用し、環境課題の解決と産業の活性化を同時に実現したいと考えています。

漁業と畜産をつなぐ新しい循環の仕組み

――鹿児島モデルの特徴を教えてください。

私たちは漁業関係者の方々と協力しながら、カギケノリの養殖に取り組んでいます。近年は漁業従事者の減少や海洋環境の変化など、多くの課題があります。

そこで漁師の皆さんにカギケノリ養殖へ取り組んでいただくことで、新たな収入源を創出したいと考えています。海藻養殖は魚の養殖と比べて管理負担が少なく、副業的に取り組みやすいという特徴があります。

また、カギケノリは成長過程で海中の二酸化炭素を吸収します。さらに海藻が育つことで小さな生物や魚が集まりやすくなり、海洋環境の改善にもつながります。

収穫したカギケノリは加工され、畜産分野で「温室効果ガス削減効果のある飼料添加物」として利用されます。牛のメタン排出削減だけでなく、飼料効率の向上も期待されています。環境価値を創出しながら、それを収益化する仕組みまで含めて設計している点が特徴です。

環境課題をビジネスの力で解決したい

――事業を立ち上げたきっかけを教えてください。

私はもともとライフサイエンス分野に携わっており、再生医療や細胞加工などの研究に関わっていました。その一方で、以前から環境問題に強い関心を持っていました。

大学時代にはオーストラリアへ留学していました。現地では環境保全への意識が非常に高く、人と自然の関わり方について多くのことを学びました。

日本へ戻ってからは、環境問題の重要性が理解されている一方で、なかなか行動変容につながらない現状に課題を感じていました。そこで、環境に関心がある人だけでなく、そうでない人も自然に参加したくなる仕組みをビジネスとして作れないかと考えていました。

前職では藻類関連事業に携わっており、その中でカギケノリの存在を知りました。そして、漁業者でもある現在の取締役が発信していた動画をきっかけに連絡を取り、この取り組みが始まりました。

鹿児島は畜産と漁業が非常に近い距離にあり、一時産業が盛んな地域です。この地域だからこそ実現できるモデルがあると感じています。

「全員にとって良い未来」を目指して

――会社の理念やビジョンについて教えてください。

私が大切にしているのは「全員にとって良い未来をつくること」です。

気候変動や自然環境の変化は、人間の活動が大きく関わっているとされています。しかし、人間だけが地球上で生きているわけではありません。私たちは他の生命の存在によって支えられています。

だからこそ、人間だけが利益を得るのではなく、生き物や自然環境も含めた「全員にとって良い状態」を目指すことが、本当の意味での持続可能性だと考えています。

そのためには理想論だけではなく、ビジネスとして成立する仕組みが必要です。利益を生みながら環境にも貢献できる循環を作ることで、多くの人が自然に参加できるようになると考えています。

今後の展望と挑戦

――今後の展望について教えてください。

現在はカギケノリを飼料添加物として利用するための登録取得に向けて取り組んでいます。この登録が事業拡大に向けた大きな鍵になります。

そのため、研究機関との連携を進めながら、安全性や有効性に関するデータの取得・蓄積を進めています。

また、当社は天然のカギケノリ資源を豊富に確保しており、登録完了後には速やかに事業展開できる体制づくりを進めています。

さらに海外ではすでに活用が進んでいるため、将来的には海外展開や輸出も視野に入れています。

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