AIと3D計測で作業姿勢を可視化し、腰痛予防の現場改善へ

株式会社バイオネット研究所 代表取締役/博士 新川 隆朗氏

計測分野を中心としたソフトウェアを開発し、2010年の創業以来、顕微鏡の画像処理や科学機器向けの分析ソフトウェアなど、専門性の高い開発を手がけてきました。現在はAIと3Dカメラを活用し、作業姿勢の負荷を可視化する「ポスチェック」を展開しています。製造現場で働く人が多様化するなか、経験や目視だけに頼らず、姿勢の負荷を客観的に測る仕組みを提供する新川氏に事業内容や創業のきっかけ、リフレッシュの方法について伺いました。

計測ソフトウェアで現場の課題を可視化する

――現在の事業内容について教えてください。

当社は、計測に関わるソフトウェアを開発しています。創業当初は受託開発が中心で、案件ごとにさまざまな計測システムをつくってきました。

例えば、トンネル工事中の壁面の膨らみを3Dカメラで測り、出水事故の兆候を捉えるためのシステムを開発しました。このほか、顕微鏡画像の処理ソフトや、科学機器で得られたデータを比較的簡単に分析するソフトウェアも手がけています。

――自社製品の「ポスチェック」は、どのようなシステムですか。

当社のポスチェックは、AIと3Dカメラを使い、作業姿勢の負荷をリアルタイムで測るシステムです。従来は人が目視で姿勢を確認していましたが、常に見続けることはできません。判定基準が人によって変わるという課題もあるのが事実です。

現在は、食品、自動車、科学機器など、さまざまな製造現場でデモや計測を行っています。障害物が多い場所、暗い場所、太陽光が入る場所もあるため、実際の使用環境を確認しながら改良しています。

ある企業では、工場内の14工程をすべて計測しました。負荷の高い姿勢が確認された箇所には投資を行い、約1年をかけて作業を改善しています。改善後に再び計測し、負荷の高い数値がなくなったことも確認できました。

定年前の独立と技術に誠実な経営

――創業を決めたきっかけを教えてください。

私は以前、理科学機器のメーカーに約30年間勤め、59歳の定年を迎える直前に退職して、2010年に当社を設立しました。

創業したときに考えていたのは、ソフトウェアによって次世代の産業をつくらなければ、日本は世界のなかで自立して商売をすることが難しくなるのではないかということです。日本のソフトウェア産業は、注文を受けてつくる仕事が中心です。

一方、海外には、自然科学や設計の基盤となるソフトウェアがあります。日本でも、科学技術を活用したソフトウェアを産業として成立させたいと考えました。夢は大きく持ちながら、組織は小さく始めたというイメージです。

――経営で大切にしていることは何ですか。

大切にしているのは、将来を予想することです。1年先だけでなく、2年、3年、5年先までの売り上げや資金の見通しを数字にし、Excelの表にまとめています。

将来を正確に見通せるわけではありません。今日受注できたことや、受注できなかったことが、数ヵ月後や数年後の資金繰りにどう影響するかを考えています。状況が変われば、毎日のように数字を修正します。

もう1つ、必ず守りたいのが、技術に対して誠実であることです。できることとできないことを曖昧にせず、実際の現場を自分の目で見て判断しています。

情報を開き、自律して働ける組織をつくる

――社員とのコミュニケーションで心がけていることを教えてください。

現在の社員は6人です。コロナ禍を機に在宅勤務へ移行し、遠方に住む社員もいるため、基本的なやり取りはWebで行っています。

私は、なるべく自分から情報を出すようにしているため、週の初めには、これから2週間の私の予定を全員へメールで共有します。そして、週に1回は全員でWeb会議を実施してきました。

小規模な組織ですから、重要なことは全員で直接話しています。離れて働いていても、必要な情報を共有し、話しやすい環境を整えることが大切です。

――採用する場合、どのような人を求めていますか。

指示を待つのではなく、自主的に仕事を進められる人です。小規模な組織では、指示を出す人が常にいるわけではありません。自分で仕事を見つけ、動けることが必要です。

職種としては、技術を理解した上で営業ができる人を求めています。現在は私を含む2人で営業を担当していますが、新しい製品をつくり販売するためには、技術営業の力をさらに強化する必要があります。

計測の先にある改善まで支援する

――現在取り組んでいる開発について教えてください。

当社は東京都の助成を受け、より広い空間で複数の人の姿勢負荷をリアルタイムに確認できるシステムを開発しています。3年間の計画のうち1年半が終わり、残り1年半で試作を完成させる予定です。

――計測後の改善をどのように支援していきますか。

これまでは、当社にはシステムエンジニアしかいないため、改善方法を顧客自身に考えていただくしかありませんでした。そこで、人間工学を30年以上研究し、大学教授を退任した名誉教授の協力を得て、2026年4月からコンサルテーション事業を始めました。

これからは、計測結果を示すだけで終わらず、腰痛予防という最終的な課題の解決まで支援できる体制をつくります。2027年1月には、ラスベガスで開催されるCESへの出展も決まっています。ポスチェックを持ち込み、アメリカ市場でどのように受け止められるのかを確かめる予定です。

2024年に韓国で開催された国際人間工学会に参加した際には、腰痛を起こさせない職場を設計することが、世界の共通認識になっていると感じました。日本でどのようなビジネスとして成立させるかは課題ですが、客観的な計測と予防の必要性は高まると考えています。

雑木林の散歩で自然への関心を深める

――仕事を離れた時間は、どのように過ごしていますか。

私は休日もパソコンの前にいることが多いのですが、1年ほど前から散歩を始めました。八王子の自宅近くには雑木林があり、歩きながら木の名前を覚えています。

最初はドングリの種類を葉の形から見分けるところから始め、今は花にも関心が広がりました。散歩を始めた頃は、拾ったドングリをポケットに入れて帰ることもありました。

――散歩ではAIをどのように活用していますか。

スマートフォンで植物を撮影し、AIに判定させています。そうして感じるのは、この1年半ほどの間にも、AIによる分類はかなり詳しくなったということです。

ときにはAIの判定が違い、自分の判断のほうが正しいこともあります。そうした発見を楽しみながら、子どものような気持ちで散歩を続けています。

Contact usお問い合わせ

    お問い合わせ内容
    氏名
    会社名

    ※会社・組織に属さない方は「個人」とお書きくだい

    役職

    ※会社・組織に属さない方は「一般」をお選びください

    メールアドレス
    電話番号
    どこでお知りになりましたか?
    お問い合わせ内容

    プライバシーポリシーに同意して内容を送信してください。