在宅就労と福祉DXで「働く選択肢のある社会」を目指す――フリークの挑戦
株式会社フリーク 代表 鈴木 勇太氏
株式会社フリークは、障害やさまざまな理由で通所が難しい方に向けた在宅就労支援に取り組む企業です。就労継続支援事業所への仕事の提供に加え、福祉現場の記録から請求までを一貫して支える業務システム「OFFCO(オフィコ)」を、全国50以上の事業所に提供しています。「通えないと働けない」という前提そのものを問い直してきた同社 。2026年4月に代表に就任した鈴木勇太氏に、事業の特徴や組織づくり、今後の展望、仕事と家庭について伺いました。
目次
在宅就労という新たな選択肢を支える
――現在の事業内容について教えてください。
当社は、在宅勤務に特化した就労支援サービスを展開しています。障害やさまざまな理由で働くことが難しい方に向け、全国の就労継続支援事業所へ仕事を提供しています。
就労継続支援というと、これまでは事業所に通い 、商品の箱詰めやカウント、袋詰めといった作業に取り組むのが一般的でした。しかし、精神的な理由で外出することが難しい方や、身体的な事情で外出が困難な方もいます。そうした方々に本当に必要な支援ができているのかという問題意識と、コロナ禍を背景に、在宅での就労支援にも取り組むようになりました。
制度上、いまも通所が支援の中心であることに変わりはありません。ただ、一定の要件を満たせば在宅での支援も認められています。その要件を事業所が満たし、在宅支援を無理なく続けられる環境を整えること。そこが当社の役割です。
――「オフィコ」とは、どのようなサービスでしょうか。
福祉業界では、利用者の記録などを紙で管理するなど、まだアナログな部分が多く残っています。そこで、福祉のDX化を目的に生まれたのが「オフィコ」です。
利用者の出退勤記録をはじめ、業務日誌や在宅支援の内容など、必要な情報を管理できます。また、さまざまな加算に対応した記録も行える仕組みです。
さらに、支援実績から国保連(国民健康保険団体連合会)への請求データをCSVで出力し、電子請求受付システムにそのまま取り込み請求までつなげられます。記録から請求までを一貫して支援できる点が特徴です。
事務作業を減らし、利用者と向き合う時間を生み出す
――DX化によって、どのような変化を目指しているのでしょうか。
単に時代に合わせてDX化することが目的ではありません。スタッフの事務作業を簡略化することが大きな目的です。
月末の締め作業や日々の帳票確認には、どうしても時間がかかります。そこに多くのリソースを割いてしまうと、本来大切にしてほしい利用者さんと関わる時間が少なくなってしまいます。そのため、事務作業を効率化して、利用者さんへの支援により多くの時間を使ってもらいたいという思いがあります。
導入当初は、紙媒体で管理してきたスタッフの方々が新しいシステムに移行することに戸惑いの声もいただきました。無理に一度で切り替えるのではなく、使える機能から少しずつ移していく。その進め方を、事業所と一緒に考えています。
――現在、どのような形でサービスを広げていますか。
おかげさまで、50を超える事業所にご利用いただいています。多いのは事業所同士のつながりやご紹介です。現場の「使ってよかった」という声が、そのまま次の導入につながっています。
営業は現在、私が中心になってオンラインで行っています。全国の事業所を対象にできることも、オンラインで提供できるサービスならではの強みだと思っています。
入社1年半で代表へ――「任せる」文化が人を育てる
――代表に就任された経緯を教えてください。
私はもともとプロのカメラマンをしていましたが、家庭環境の変化などをきっかけに仕事を見直し、フリークに入社しました。入社時から、将来的にはリーダーになってほしいとは言われていました。
入社当時は福祉の知識もシステムの知識もありませんでしたが、システムベンダーと事業所の間に入り、折衝する仕事を担当しました。必要な知識を自分で勉強しながら取り組み、入社3カ月ほどでオフィコのプロジェクトリーダーを任せてもらいました。
フリークには、仕事を一人で完結させるのではなく、チームに渡していく文化があります。自分の成果ではなく、チームの成果として仕事を進め、メンバーを成長させる。その考え方が、現在の自分にもつながっています。
前代表から代表就任の話をいただいたのは年末でした。正直、不安はありました。ただ、これまで求められたことにはできる限り応えてきましたし、この会社が何を大切にしているかは、現場で分かっているつもりでしたので「私でよければやります」と答えました。そして、2026年4月に代表へ就任しました。
――組織づくりで大切にしていることは何でしょうか。
当社では、リーダーの在り方を「ひまわり型」と表現しています。リーダーが先頭に立って引っ張るのではなく、チームの中心にいて、みんなが同じ方向を見る。私一人ではなく、チームとして成果を出すことを大切にしています。
コミュニケーションでは、会話から新しい発見やものが生まれると考えています。定例のミーティングだけでなく、何気ない会話も大切にしています。
在宅勤務ができる会社なので 、全員が毎日顔を合わせるわけではありません。だからこそ、毎日の朝礼では役職に関係なく全員に発言してもらい、それぞれが今日何をするのかを共有しています。
「働く選択肢のある社会」を実現するために
――今後、取り組んでいきたいことを教えてください。
当社は、事業所が利用者さんを直接支援するのに対して、間接的に支援している立場だと考えています。オフィコだけでなく、利用者さんが社会復帰や一般就労に向けて取り組める仕事を提供しています。
課題もはっきりしています。50を超える事業所にご利用いただいていますので、お届けすべき仕事の量は相当なものになります。案件を継続的に獲得していくことが、これからの最大の課題です。
しかも、必要なのは量だけではありません。 利用者さんの中には、ホームページ制作や動画制作などクリエイティブな仕事に挑戦したい方もいれば、データ収集など同じ作業に集中して取り組みたい方もいます。障害や特性もさまざまです。
だからこそ、当社のビジョンである「どんな障害があっても、働く選択肢のある社会」を実現するために、さまざまな仕事を提供できる環境をつくっていきたいと考えています。
家族との時間と会話を大切に
――休日はどのようにリフレッシュされていますか。
基本的には子どもと過ごしています。子どもが3人いて、上から高校2年生、中学3年生、4歳です。特に4歳の子どもとは、休みの日に一緒に遊んだり、習い事の発表会を見に行ったりしています。
カメラマンだったこともあって、子どもを撮影するのも好きです。趣味のピアノとドラムも続けていて 、家でも演奏しています。最近は4歳の子どもが興味を持ち始めたので、そのうち一緒に演奏できたらいいな。
親が無理にやらせるのではなく、親が楽しんでいる姿を見て、子どもが主体的に興味を持ってくれるのが一番だと思っています。
仕事でも家庭でも、会話からいろいろなものが生まれると考えています。これからも福祉への理解が社会全体で高まり、その先で利用者さんに提供できる仕事が増えていけばと思います。
そして将来的には会社を大きくし、私たち自身が障害者雇用にも力を入れていきたいです。言葉だけではなく、実際に行動することで、障害のある方が働く選択肢を増やすことにつなげていきたいと考えています。