こどもが“こどもらしくいられる場所”をつくるために

株式会社こどもとくらし 代表 赤川 幸子氏

東京都港区を拠点に、認可外保育施設の運営と子育て支援活動を行う株式会社こどもとくらし。代表の赤川幸子氏は、航空会社のCAから一転、子どもの育ちに寄り添う保育者・経営者へと歩みを進めました。子どもが「泣いたり笑ったりしながら子どもらしく過ごせる環境」を守りたいという思いを軸に、小規模で丁寧な保育環境づくりを続けています。今回はその理念、歩んできたキャリア、組織づくり、そして今後の展望について伺いました。

こどもが“こどもらしくいられる”保育を追求する事業内容

――まず、事業内容をお聞かせください。

私たちは東京都の認可外保育施設として、未就学児のお子さんをお預かりする保育事業を中心にしています。掲げているのは、子どもが本来持っている力を大切にしながら「こどもらしく過ごせる時間」を保証することです。泣いたり笑ったり、夢中になったりする“こども時代の当たり前”が、実は今の社会では守られにくくなっています。そこを丁寧に支えたいというのが私たちの軸です。

また、親子向けのクラスや郊外施設「シュタイナーガーデン九十九里」を活用した畑の会・キャンプなど、家族が自然の中で過ごせる体験も提供しています。商業施設で“与えられる”楽しさではなく、自分たちで喜びを見つける体験こそ、こどもと親の心を育てるものだと感じています。

CAから保育の世界へ──キャリアの大きな転機

――まったく異なる業界からの創業ですが、どのような経緯があったのでしょうか。

社会人のスタートは日本航空のCAでした。子どもに関わる仕事をするなんて1ミリも考えていなかったんです。転機は、娘が小学校のときに「学校に行きたくない」と言い続けた時期にありました。悩みながら手に取った本が、偶然シュタイナー教育の本で、私が“こども時代はこうあってほしい”と感じていた価値観が整理されて書かれていたことに衝撃を受けました。そこから学び始め、気づけば深くのめり込んでいったのです。

そして2008年、物件探しの「趣味」が高じていたことも後押しし、小さな1LDKの物件を借りて園を開きました。融資のノウハウもなく、企業セミナーに通いながら事業計画を整えたり、オーナーさんに契約を1か月待っていただいたり、さまざまな人に支えられながらのスタートでした。最初の園児は兄弟2人。そこから少しずつ、地域に根を張っていきました。

小規模だからこそ叶う「向き合う保育」

――組織づくりやスタッフとの関係で大切にしていることはありますか。

現在はスタッフが12名ほど。規模としてはとても小さいですが、そのぶん保育の質に対して妥協がありません。国が定める配置基準より多くのスタッフを置き、1クラスに必ず2〜3名を配置しています。丁寧に子どもと向き合うためには、十分な大人の数が必要だと考えているからです。

園では“親子の時間”も重視しています。例えば畑の会やキャンプでは親子が自然以外何もない場所で共にテントを張り火を熾し料理をして過ごす。これは日常ではできない親子時間になります。子どもが寝た後に保護者の方と焚き火を囲んで話すこともあります。そこで初めて悩みを語ってくださる方も多く、家族をまるごと支えることが保育者の仕事だと感じます。

未来への展望──オンラインで子育て支援を広げる

――今後の展望について教えてください。

保育の場はこれからも変わらず守り続けたい場所です。その上で、今後はオンラインを活用した子育て講座や情報発信を広げていきたいと思っています。こどもは日々、親に瞬時の判断を迫ってきますよね。“この行動は止めるべき?”“見守るべき?”など、迷う場面は数えきれません。そうした日常の小さな悩みにも、私たちの経験を届けていきたいです。

教育サービスが多様化し、幼児期から習い事や英語教育に注目が集まっていますが、私たちはその流れとは少し距離を置いています。幼児期こそ、体をしっかり使って遊び、自然の中で五感を育てる時間をたっぷり過ごすべきだと考えているからです。子どもが“まっすぐ未来に向かっていける力”は、幼児期の過ごし方で大きく変わっていくと思います。

心を整える時間──自然と踊りがくれるリフレッシュ

――お仕事以外で、大切にされている習慣やリフレッシュ方法はありますか。

仕事でも使っている郊外の自然スペースがありますが、実はその場所は、私自身が「こういう場所で過ごしたい」と思って探し当てたところなんです。畑仕事をしたり、土に触れたりしていると、体は疲れていても心がとても軽くなるんですね。疲れているときに行っても、不思議と気持ちのいい元気が戻ってくる場所で、私にとっては大切なリフレッシュになっています。

畑では季節ごとにいろいろな野菜を育てています。近くの農家さんに教えていただきながら、ナスやピーマンのような夏野菜から、とても美味しく深い味わいの根菜まで、本当にさまざまなものを少しずつ。以前はそばを育てたこともあり、収穫したそばの実を皆でひたすらこつこつと脱穀して、殻をふーっと飛ばして粉だけを集め、最後にそば打ちをする——そんな体験もしました。自然の厳しさや、食べ物が手元に届くまでの尊さを改めて感じられる、貴重な時間でした。

ただ、畑やキャンプのような活動はどうしても“仕事と地続き”に考えてしまう自分がいます。「これ、こどもたちとやったらどうだろう」とつい思ってしまうんですね。そこで、“仕事を完全に忘れる時間をつくりたい”と思って始めたのがフラダンスです(笑)。海の雰囲気やのびやかな動きに惹かれて始めた、まだ超初心者の習い事ですが、その時間だけは仕事のことを考えずにいられる。私にとって、とても貴重な切り替えの時間になっています。

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