自己検査を、もっと身近に。研究者から経営者へ――「早診完治」を掲げる挑戦

ライフトレック株式会社 代表取締役社長 芝崎太氏

ライフトレック株式会社は、患者さん自身が検査できる「自己検査」を社会に広めることを目指し、高感度な検査技術の開発に取り組むスタートアップです。コロナ禍で抗原検査が身近になったことを背景に、病院へ行く前に自宅や薬局で状態を把握し、適切に医療につなげる仕組みづくりを進めています。

今回は代表取締役社長の芝崎太氏に、事業への思いや経営者としての歩み、組織づくりの考え方、今後の展望について話を伺いました。

自己検査を広める事業と「早診完治」の理念

――現在の事業内容と、理念に込めた思いを教えてください。

コロナ禍を通じて、抗原検査やPCRなど「自分で検査する」ことが身近になりました。一方で、抗原検査は早い段階では感度が十分でない場面もあり、特にインフルエンザで症状が出てすぐの時には、受診しても陰性となり、対応が遅れることがあります。だからこそ、検査をより感度よく、早く見つけられる性能にすることを目的にしています。

自己検査が広がれば、まず薬局や自宅などで検査し、陽性なら医療機関を受診する、陰性なら過度な受診を避けるといった判断がしやすくなります。国も個人も、医療費への負担が増大する中で、健康を自分で守る仕組みが今後最も重要になってきます。

理念として掲げているのが「早診完治」です。早く診断し、完全に治す。早期に見つかれば身体的負担も医療費も抑えられる。そうした状態を実現したいという思いを込めています。

研究者・医師から経営者へ。転機と判断の難しさ

――経営者になったきっかけと、経営で大事にしていることを教えてください。

退職するまでは研究者であり医師で、経営の経験はありませんでした。コロナ禍と重なった退職をきっかけに、抗原検査を届けたいと考え、友人や知人を頼って会社を立ち上げました。輸入や製造管理、ましてや販売方法など分からないことばかりでしたが、周囲の助けを得ながら少しずつ理解し、販路を拡大していき、最終的には200万個の販売を達成できました。

この分野は専門性が分かれており、一人では進められません。ライフトレックでは、厚労省の認可を取得するため、薬剤師資格を持ち製造・品質管理、臨床試験や、特に厚労省への認可申請に詳しいメンバーとチームを組み、事業を進めています。

一方で、患者さんのためになることが、必ずしも事業として成り立つとは限りません。倫理観と経営のバランスを意識しながら、社会性を大事にして判断していきたいと考えています。

少人数チームで進める組織づくりとコミュニケーション

――組織運営で意識していること、これから一緒に働きたい人物像を教えてください。

現在は、3名の職員と専門性のある顧問の10名ほどの小さな体制で、研究所時代から一緒に取り組んできたメンバーが中心です。スタートアップでは、信頼関係のある人と進めることが重要だと考えています。

仕事はできるだけ自主性に任せ、権限も委ねています。分野ごとに役割は異なりますが、各自が自覚を持って動かなければ前に進みません。

コミュニケーションでは、挨拶を大切にし、時々は一緒に食事に行くようにしています。採用では、事業を理解し、同じ思いで働きたい方を重視しています。これまでの経験では、技術は後から身につきますが、やる気と前向きな考え方がないと続きません。

技術を軸に描く、これからの挑戦

――今後、特に力を入れていきたい分野や挑戦について教えてください。

高感度な検査技術を軸に、感染症への備えを進めていくつもりです。将来的なコロナや高病原性鳥インフルエンザなどのパンデミックに備え、性能のよい検査キットを開発し、感染対策に役立てることが一つの目標です。

また、自己検査の分野をさらに広げ、まずは郵送検査、次の段階として患者さん自身が扱えるキットの提供を目指しています。結果が短時間で分かることで、その後の行動を判断しやすくなります。将来的には、認知症やがんの早期発見にもつなげたいという思いがあります。

――現在向き合っている課題についてはいかがでしょうか。

スタートアップのため、マンパワーや資金面など課題は多くあります。加えて、製造や販売、マーケット開拓など初めて取り組む分野も多いため、すべてを自社で完結させるのではなく、共同開発や協業など周囲の力を借りながら進めています。

経営を支えてきた価値観

――ご自身が大切にしている価値観や、影響を受けた言葉はありますか。

尊敬する方はたくさんいますが、特定の一人というよりも、大切にしている言葉があります。それが「一期一会」です。

ビジネスでも研究でも医療でも、そのときに出会った人との縁を大切にしてきました。そうした姿勢で生きてきたからこそ、困ったときに思いがけず助けてもらえることがあったのではないかと感じています。出会いの一つひとつを大事にしたいという思いは、今も変わりません。

日常を切り替えるリフレッシュの時間

――お休みの日は、どのようにリフレッシュされていますか。

リフレッシュ方法は三つあります。一つはゴルフで、65歳で退職してから始めました。上手いわけではありませんが、一緒に始めた妻とスコアよりも歩数を減らすことを楽しんでいます。

もう一つは釣りです。昔から大海原の中で過ごす時間が良い気分転換になっています。

三つ目はロードバイクで、若い頃から続けています。今年は、大学の同級生と一緒に琵琶湖を一周しました。ゆっくりしたペースでしたが、素晴らしい景色の中とても良い経験でした。

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