海のない地域で魚の価値を届け続ける――4代目が描く合資会社魚ぎの再成長と次の一手

合資会社魚ぎ 代表社員(CEO) 内藤彰俊氏

合資会社魚ぎは、魚屋を主軸に、イートイン・飲食、EC販売まで幅広く手がける会社です。長い歴史を受け継ぎながら、時代の変化に合わせて事業を磨き、近年は新たな取り組みにも挑戦しています。4代目として経営を担う内藤彰俊氏は、家業の伝統を背負いながらも、店舗づくりや顧客との関係づくりに独自の工夫を重ねてきました。本記事では、現在の事業内容や経営の転機、今後の展望、そして経営者として大切にしている思いについて伺いました。

魚屋を軸に、飲食とECまで広げる事業展開

――現在の事業内容について教えてください。

メインは魚屋です。それに合わせて、イートインや飲食もやっています。あと、アパレルとか、ECで販売している商品もあります。やっぱり中心にあるのは魚屋なんですけど、それだけじゃなくて、お客様との接点をいろいろ持てるように取り組んでいます。

――ホームページにあった「魚のサブスク」とは、どのような取り組みなのでしょうか。

魚屋のサブスクは、年間を通して毎月ひとつ企画をつくって、お客様に店頭で受け取っていただく仕組みです。例えば3月ならひな祭りの時期なので、ちらし寿司セットを用意しています。4月なら入学式のシーズンなので、鯛を使ったアクアパッツァが作れるセットを考えたりしています。

うちは配送ではなくて、あくまでお店に取りに来てもらう形にしています。というのも、もともと顧客づくりというか、ファンをつくりたいという思いがあったからです。とにかくお店に来てもらって、魚を買って、家で家族みんなで食べてもらう。楽しい食卓をつくってもらいたい、というのがコンセプトですね。

――お客様は法人と個人、どちらが多いのでしょうか。

金額ベースで言うと、やっぱり法人の卸のほうが多いです。魚屋の業務としては、そちらが大きな柱になっています。ただ、日々顔を合わせたり、やり取りをしたりするのは、一般の小売りのお客様も多いですね。

法人のお客様でいうと、飲食店だけじゃなくて、病院や介護施設などにも卸しています。あとは、代々やっている天然鮎の競りがあって、時期になると東京や愛知のほうのお店にも卸しています。地域のお客様に支えられながら、広い範囲にも魚を届けている形です。

4代目として生まれ育ち、自然に進んだ経営の道

――経営の道に進まれたきっかけを教えてください。

私は4代目なんですけど、もう本当に子どもの頃から、お客様に「4代目ちゃん、4代目ちゃん」って呼ばれて育ってきたんです。自分の名前で呼ばれるより、そっちのほうが印象に残っているくらいですね。

だから、自分で強く「この道を選んだ」というよりは、もう最初から線路が引いてあって、その上を進んできた感覚です。うまい具合に道を決められていたというか、自然とそうなったという感じですね。

――代表になられてから、最も印象に残っている出来事は何ですか。

やっぱり社長になったことそのものですね。規定路線ではあったんですけど、きっかけは父が目の前で倒れたことでした。当時、父が社長で、今は会長なんですが、本当に突然倒れてしまって。処置が早かったので、その後は大きな後遺症もなく戻ってきたんですけど、そのときに「もう社長を譲るわ」と言われたんです。

なので、何かしっかり準備して引き継いだというより、父の病気がきっかけで社長になった形でした。自分の中では、あれが一番大きな出来事だったと思います。

子どもの頃に見た魚屋の勢いと、社長になって知った経営の難しさ

――社長になる前と後で、会社への見え方に変化はありましたか。

ありましたね。子どもの頃の魚屋って、本当にものすごく忙しかったんです。当時は今の年商の10倍くらい忙しかった感覚がありますし、社員も本当に多かったです。現金商売だったので、銀行さんが1日に2回、3回と集金に来るような状況でした。

学校から帰ってくると、事務の人や母親から「お札の束をつくって」「小銭を数えて」と頼まれて、それをやると100円のお小遣いがもらえる、みたいなのが日課でした。その100円を握って駄菓子屋に行く、そんな子ども時代でしたね。

でも、自分が社長になってみると、もちろん時代も違いますし、当時のような状況ではありません。魚ってこんなに大変なんだな、お金を稼ぐってこんなに大変なんだな、というのはすごく感じました。子どもの頃に見ていた景色と、経営者として今見ている景色は、かなり違いますね。

――現在の組織体制について教えてください。

経営陣という意味では、ほぼ私ひとりです。会長はいますが、日々の経営は私が担っています。従業員は、パート・アルバイトも含めて7人です。大きい会社ではないので、一人ひとりの役割はすごく大きいですね。

――いま抱えている課題は何でしょうか。

一番大きいのは人材です。魚屋の仕事って、すごく専門職な部分があるんですよね。システマチックにできるものではなくて、その日その時の状況で動かないといけないですし、お客様対応も、魚に対する対応も、柔軟さが必要です。

だから、うまく対応できなくて辞めてしまう方もいます。店頭に立ってくれる人ももちろん必要なんですけど、それだけじゃなくて、事務や経理をしっかりやってくれる人も欲しいです。今は妻がほぼ経理をやってくれているんですが、それを支えられる人がいてくれるとありがたいですね。

それと、私自身が最近は市場のことや学校関係、地域のことなどで外に出る機会が増えているんです。役職もいろいろいただいているので、営業時間中に店を離れないといけないこともあります。そういうときに、私がいなくても現場を盛り上げて、しっかり回してくれるスタッフがもう少しいてくれるとありがたいなと思っています。

次の店舗づくりと、家族・社員を守る経営へ

――今後の展望について教えてください。

ありがたいことに、私の代になってから少しずつ盛り返してきている部分があります。だからこそ、次の展開も考えています。実は自社ビルの2階が、これまで物置のようになっていたんですが、そこを改装して次の店舗を増やしたいという計画があります。

イメージとしては飲食ですね。設計図もすでに来ていて、あとは銀行融資や人の問題が整えば、できるだけ近いうちに進めたいと思っています。

3年後の売上イメージでいうと、今の1.5倍くらいにはしたいですし、その新しい店舗がうまくいけば1.8倍くらいまでいってくれたら、という気持ちもあります。

――お休みの日はどのように過ごされていますか。

もともとタイヤのついたものが好きなんです。若い頃は免許を取る前から自転車に乗っていましたし、当時からマウンテンバイクで山を下るのが好きでした。バイクも好きですし、車も好きですね。

今は子どもも大きくなってきたので、車で出かけることが多くなりました。趣味の車と家族の車と、という感じです。あと冬はずっとスノーボードをやっていて、もう30年以上になります。これは今でも大事な趣味ですね。

最近は、家族で旅行に行くのもすごく楽しいです。先月の2月頭に家族9人で沖縄に行きました。暖かくて過ごしやすかったですし、やっぱり沖縄はいいなと改めて思いました。年に1回は行けるようになりたいね、と家族でも話しています。

外で食事をするときも、以前は肉料理を選ぶことが多かったんですが、最近は魚料理を選ぶようになりました。年齢的なこともあるんですけど、やっぱり勉強になるんです。この魚をこういうふうに使うんだ、という発見があるので、自分の店の飲食にも使えますし、卸先のお客様にもフィードバックできます。そういう意味でも、魚料理を選ぶことが増えましたね。

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