身体を変える先にある、自信と未来。山口倫子さんが貫く「人生に寄り添う」エステのかたち
株式会社Mahora 代表取締役 山口 倫子 氏
女性専用のバストケアサロンとして始まり、現在はオールジェンダー対応へと舵を切った山口氏。ご自身の経験を原点に起業し、施術そのものではなく、その先にある、お客様の「自信」や「人生の変化」に目を向けて事業を続けてきました。現在の事業に込めている想い、経営者になったきっかけ、組織づくりで感じた難しさ、そして将来見据える大きなビジョンについて伺いました。
目次
身体を変えることが目的ではなく、自信と未来のための手段
——現在の事業では、どのような理念やビジョンを大切にされていますか。
ボディを変えること自体が目的ではなく、施術を通してお客様が自分に自信を持ち、その先の未来をより良くすることを大切にしています。
お身体が変わるのはあくまで手段。その方の人生に少しでも良い影響を与えたいという想いでサービスを提供しています。だからこそ、施術だけではなく、メンタル面でもお悩みに寄り添い、相談に乗ったりすることも大事にしています。
——現在のサロンの特徴について教えてください。
もともとは女性専用のバストケアサロンとして始めましたが、今はオールジェンダーを受け入れる方針にしています。きっかけは、男性の声で「女性としてバストケアを受けたい」というお電話をいただいたことでした。ジェンダーの方だったのだと思います。
その時は他のお客様のことも考えて受け入れることができなかったのですが、色々と考えた結果、“オールジェンダーズ”に方向転換し、トランスジェンダーの方も含め、どの性別の方でも堂々と来られる場所を作ろうと決めました。
実際に、MtFの方だけでなく、スポーツジムに通ったり、ボディビルの男性が美筋づくりをしたいというニーズにも対応しています。
——現在の経営状況や取り組みについてはいかがですか。
経営にはどうしても浮き沈みがあるので、安定化は常に課題として向き合っています。そうした中で、今の事業とは別のことにも取り組んでいます。
今後、伸びる基幹産業である“再生科学や再生医療”に関わる領域でも活動していて、美容にもつながる面はありますが、今のサロンとはまた別の取り組みです。事業の柱を複数持つことも経営を安定させる重要な視点だと思っています。
46歳での起業。原点にあったのは、自分自身の経験
——起業されたきっかけを教えてください。
私自身、現在はシングルマザーです。結婚していた時、元夫から「おまえの体に魅力がないから浮気した」と言われた経験がありました。離婚後、次の恋愛に進みたくても、自分の体に魅力がないと思ってしまったら前に進めないと感じて、まずはバストをどうにかしたいと思ったのです。
探してみると、隣県の栃木県にバスト専門のお店があり、通ってみたら本当にすごいと感じました。群馬県の女性も救ってあげたい!と思い、46歳で起業したという経緯です。
——最初から独立を目指していたのでしょうか。
いいえ、まったく考えていませんでした。そもそも、自分がサロンを経営するなんて思ってもみなかったです。母子家庭ということもあり、子どもを育てる中で失敗するのは怖かったので、会社員として働きながら、平日の夜と土日だけエステの仕事をしていました。いわゆるダブルワークです。
そうしているうちに、会社員としての収入よりもエステの収入のほうが多くなってきて、エステの先輩から「一本にしたらどうか」とアドバイスをいただいたことがきっかけで、この仕事に絞りました。
——続けられた理由は何だったのでしょうか。
身体の負担はあったかもしれませんが、それ以上に、やりたいことができている充実感がありました。お客様から「ありがとう」と仰っていただけるのも大きかったですね。
そうすると自分の気持ちも上がりますし、楽しく働けるんです。自分の波動が上がるような感覚で取り組めていたので、思ったほど疲れを感じずに続けてこられたのだと思います。
人を雇う難しさを知ったからこそ、お客様への向き合い方を大切にしたい
——組織づくりやスタッフとの関係では、どのようなことを意識していましたか。
独立当初は一人で始めたのですが、その後、複数人雇用した経験があります。私の方針やビジョンと、スタッフの気持ちに少しずつズレが生じ、結果的に辞めることになりました。スタッフのことを想ってやっていることが伝わらないというジレンマに悩んだ時期もあります。お客様を心から大切にしたいと思える人材がなかなか見つからず、現在はスタッフを雇わず一人で経営兼施術をしています。
——スタッフとの関係で難しさを感じたことはありますか。
ありました。何でも意見を言ってほしいという形で、言いやすい環境をつくったつもりだったのですが、それが結果として難しさにもつながりました。
私が経営者としてこういう方針でやりたいと伝えても、そこに対して反発が出ることもありましたし、衝突したこともありました。私のマネジメント能力の低さだとも思っています。人との関わり方や距離感の取り方は、本当に難しいと感じ、雇用の大変さを痛感しました。
エステをツールにして、その先にある大きな夢を形にしたい
——今後、挑戦していきたいことを教えてください。
エステの志事(仕事)は、私にとって目的ではなく、あくまでも“ツール”です。本当に大きな目標(ビジョン)は、児童養護施設や母子支援施設の子ども達が海外留学できる道を作ることです。
以前、施設でボランティアをしていたことがあるのですが、その中に、留学をしたいが親もいないしお金もないという理由で海外留学を諦めていた子がいました。そういう子どもたちが夢を諦めなくてすむような道を作りたいんです。
——なぜ海外という視点なのでしょうか。
留学したいという想いを持っている子どもたちがいるからです。そうした子たちが海外で学び、さらに日本に戻ってきた時、働く場所の選択肢も広げたいと思っています。
もし私が海外にエステサロンを持てたら、そこでも働けますよね。施設で育った子ども達が夢を持てる世界をつくりたい。私の中では、それが大きなビジョンです。
感謝と直感を大切にしながら、五感を研ぎ澄ませる
——経営者として譲れない価値観は何ですか。
感謝を常に持つことです。誰かに何かをしてもらったから感謝するということではなく、今あるものに感謝することを大切にしています。
ご縁があってお話しできることも感謝ですし、今生きていること、生かされていること、健康なことなど、その一つひとつに感謝することを意識しています。
——リフレッシュ方法や日常で大切にしていることを教えてください。
温泉にゆっくり浸かることです。露天風呂でアーシングをしたり、瞑想をしたりもします。また、自然に触れるなど、五感を大切にしたいと思っています。目が見えること、耳が聞こえること、話せること、匂いを感じられることは当たり前ではないと思っているからです。
自然の中で鳥のさえずりを聞いたり、風に触れたり、そうした感覚をきちんと受け取ることを意識しています。五感を研ぎ澄ませることで、自分の直感も高まっていくように感じています。それが、結果的に良いお志事(仕事)、良い経営、大きな未来に繋がると考えています。