地域の資源を活かし、持続可能な暮らしをつくる――大月の未来を支える挑戦
NPO法人大月地域資源活用協議会 会長 森下誠氏 事務局長 岩瀬文人氏
豊かな自然に囲まれた地域でありながら、人口減少や高齢化といった課題に直面する高知県幡多郡大月町。そうした現状の中で、「地域資源を活かしながら持続可能な暮らしを実現したい」という想いのもと活動しているのが、NPO法人大月地域資源活用協議会です。今回は、会長の森下誠氏と事務局長の岩瀬文人氏に、活動の背景や取り組み内容、そしてこれからの展望についてお話を伺いました。
地域の可能性を引き出す“よろず屋”的な活動
――現在の事業内容について教えてください。
当団体はNPO法人として、地域活性化、いわゆる町おこしに関わるさまざまな取り組みを行っています。ただ、特定の一つの事業に絞るというよりも、地域の中で「やりたいことがあるけれど一歩踏み出せない」という人たちを支え、みんなで形にしていくような活動が中心です。
小さな町では、個人だけで何かを始めるのは難しい場面が多くあります。そうした方々に参加してもらい、協力しながら実現していく。それが私たちの基本的なスタンスです。そのため、年ごとに主な取り組みは変わっていきます。
現在特に力を入れているのが、木質バイオマスの活用です。地域には豊富な山林資源があるため、それを単なる木材としてではなく、脱炭素や暮らしの質の向上につなげていけないかと考えています。山を適切に管理することで、土砂流出を防ぎ、美しい海を守ることにもつながります。
また、町からの委託で草刈りなどの維持管理を行ったり、子育て世代の母親たちが集まって支え合う場をつくったりと、本当に多様な活動を展開しています。観光についても、地域資源を損なわない形で持続可能な体験型の取り組みを模索しています。
――活動の根底にある考え方を教えてください。
すべての取り組みに共通しているのは、「持続可能性」です。自然や地域の暮らしを守りながら、無理のない形で続けていくことを大切にしています。単なる観光振興ではなく、そこに住み続けられる環境を整えることが目的です。
地域への想いが原点――活動のスタートと背景
――活動を始めたきっかけについて教えてください。
もともと大月出身ですが、長く外で暮らした後、定年を機に戻ってきました。そのときに「地元のために何かしたい」という想いが芽生えました。ただ、何をすればよいのか分からず、試行錯誤する中で活動が始まったのがきっかけです。
特に意識していたのは、昔から住んでいる人だけでなく、新しく移住してきた人たちが暮らしやすい環境をつくることです。実際に活動に関わる中で、移住者や高齢者それぞれのニーズが見えてきました。個人では限界があるため、組織として取り組む必要性を感じ、法人化に至りました。
一方で、地域に関わる中で多くの人に支えられてきた経験も大きな原動力です。以前は海の生き物に関する研究施設に関わっていましたが、その活動を通じて地域の方々に多く助けてもらいました。その恩返しとして、地域に貢献したいという気持ちが活動の出発点になっています。
また、地方ではボランティアだけで活動を続けることは難しい現実があります。生活を成り立たせるための「なりわい」としての側面も大切にしながら、持続的に活動できる仕組みづくりを意識しています。
――どのようなメンバーで活動が始まったのでしょうか。
最初は10人ほどのメンバーでスタートしました。町のまちづくりに関わる中で出会った人たちや、自然や地域に関心を持つ人たちが集まり、「何かやりたい」という共通の想いでつながっていきました。
当初は、個人で活動していた人をサポートする形から始まりましたが、団体としての枠組みを持つことで、より大きな取り組みへと発展していきました。現在では会員や関係者を含め、数十人規模で活動しています。
自然と共にある暮らし――地域の魅力と課題
――地域の魅力について教えてください。
この地域の魅力は、何と言っても自然と共にある暮らしです。海と山がすぐそばにあり、昔ながらの生活の風景が今も残っています。雑木林の中を歩けるような環境や、自由に遊べる自然が身近にある点は大きな特徴です。
一方で、移住者がその魅力を十分に享受するには、地元の理解や協力が欠かせません。山や土地には所有者があり、自由に使えるわけではないため、地域との関係性が重要になります。地元の人が間に入り、橋渡しをすることで、初めてその価値が活かされていきます。
――活動における課題はどのような点にありますか。
最も大きな課題は、「価値に対する認識の違い」です。外から来た人は価値を見出しているものでも、地元の人にとっては当たり前すぎて価値がないと感じられていることがあります。
例えば、山林資源は多く存在していますが、それを活用しようとする人と、所有している人の間で意識がかみ合わないケースが多くあります。このギャップをどう埋めるかが、大きなテーマです。
今後は、木材を炭やチップとして活用するなど、新しい使い方も含めて、資源の価値を再発見していく必要があります。そのためには、地域内外の人が協力し合える仕組みづくりが欠かせません。
地域の未来をつくる――これからの展望
――今後取り組んでいきたいことを教えてください。
これからは、地域にある資源を「使える形」にしていくことが重要だと考えています。山や農地など、現在は使われていない資源を、移住者や新しい発想を持つ人たちに活用してもらえる仕組みをつくりたいです。
過去には、開拓農民に土地を与えることで地域が活性化した事例もありました。そうした仕組みを現代に合った形で再構築し、移住者が主体的に関われる環境を整えることができれば、新たな活力が生まれるのではないかと考えています。
また、地域の中で眠っている資源の価値を見直し、それを活かした新しいなりわいを創出していくことも大きなテーマです。地元の人と外から来た人が協力し、それぞれの強みを活かせる関係性を築いていきたいと思っています。
――読者へのメッセージをお願いします。
地域の魅力は、インターネットだけで全てを伝えることができません。実際に足を運び、地元の人と触れ合うことで初めて感じられるものがあります。
また、この地域には「お金だけでは測れない豊かさ」があります。人とのつながりや、物々交換のような暮らし、自然と共にある日常など、都会では得にくい価値が存在しています。
そうした豊かさを大切にしながら、地域の未来をつくっていきたいと考えています。ぜひ一度、現地に訪れてその空気を感じていただければと思います。