人とテクノロジーの架け橋へ。AIとロボットで「ゆとり」を創造する若き挑戦者の志

人とテクノロジーの架け橋へ。AIとロボットで「ゆとり」を創造する若き挑戦者の志

合同会社ORBY 代表 鈴木麻友氏

テクノロジーの進化が加速する現代、効率化の波は私たちの生活を劇的に変えつつあります。しかし、その一方で「時間のなさ」が心の余裕を奪い、人と人との関係性を希薄にさせている側面も否定できません。「テクノロジーを通して人を豊かにする」を理念に掲げる合同会社ORBY(オービー)は、AIやロボット技術を駆使して単なる自動化に留まらない、人間の「優しさ」を引き出すための時間創出に挑んでいます。

代表の鈴木麻友氏は、体育学部卒業という異色のバックグラウンドを持ちながら、独学と実戦でITスキルを磨き上げ、20代という若さで起業しました。彼女が目指すのは、画面の中だけで完結するAIではなく、物理的な実体を持ち、人の理解者として寄り添う「フィジカルAI」の世界。静岡の地方都市で目にした高齢者の移動課題等を原動力に、地球規模の視点で未来を描く鈴木氏に、その経営哲学と目指すべき社会の姿を伺いました。

現場DXから、未来のフィジカルAIへ

——「テクノロジーで革新を実現するワンストップパートナー」という理念を掲げていらっしゃいますが、具体的な事業内容と強みを教えてください。

ORBYは、インフラ・建設・製造・物流などの現場を持つ企業に対し、AIとテクノロジーで現場業務を可視化・効率化・構造化する会社です。現在は、交通量調査の自動化、映像・画像を活用した点検や判定支援、帳票・図面業務の効率化、現場データの整理・活用基盤づくりなどに取り組んでいます。

私たちが解決したいのは、単なるデジタル化ではなく、人手不足、技術継承、業務負荷、データ分散、属人化といった現場の根本課題です。現場にある映像・画像・帳票・センサーデータをAIで整理し、使える情報に変えることで、判断支援や自動化につなげています。

ORBYの強みは、現場課題起点で設計すること、PoCから導入・運用まで一気通貫で伴走すること、そして現場DXの先にある遠隔支援・半自動化・ロボット活用まで見据えていることです。

私たちは単なる開発会社ではなく、お客様の最後まで手を離さない理解者として、革新を実現するワンストップパートナーでありたいと考えています。そして、テクノロジーで現場の負担を減らし、そこで生まれた時間や余白を、More Time More Heart(心のゆとり)につなげることを目指しています。

体育学部からの転身。独学で切り拓いた「自分にしかできない」社会貢献

——体育学部卒業からIT分野での起業という経歴は非常にユニークですが、どのような想いで経営の道に進まれたのでしょうか。

大学時代までは、スポーツを通じて「つらいときに思い出してもらえる存在になりたい」と考えていました。しかし、プロの道が叶わなかったとき、私は改めて「自分には何ができるのか」を深く問い直しました。
その頃、明確に「これが好きだ」と言えるものは多くありませんでしたが、逆に「こうはなりたくない」という思いははっきりしていました。たとえば、相手を最後まで信じられない人にはなりたくない。自分の得意分野だけを基準にして、人の可能性を勝手に決めつける人にもなりたくない。振り返れば、スポーツをしていた頃から、イチローさんやジャック・マーさんのように、人に希望を与えられる存在への憧れがあったのだと思います。
そして、そのような存在になるためには、体力や視野、資本を持ち、より大きな形で社会にメッセージを届けられる立場になる必要があると考えるようになりました。その思いが、起業家を志す原点になりました。
実際に当時、「孫正義さんのような人になりたい」と口にして、スポーツをきっぱり辞めたことを今でも覚えています。
その後、社会に大きな価値を生み出すには、テクノロジーという大きな市場で勝負したいと考えるようになりました。また、「人格を持つ法人」として事業を営むことができれば、個人としてよりも大きなインパクトを社会に与え、より多くの人の理解者になれるのではないかとも考えました。

そうした想いをさらに強くした出来事が、地元・静岡で目にした高齢者の運転事故のニュースでした。地方では公共交通機関が十分でなく、スーパーへ行くだけでも車を運転せざるを得ない地域があります。その現実を考えると、被害者の方が苦しいのはもちろんですが、加害者になってしまった高齢者の方もまた、選択肢がない中で起きた悲劇だったのかもしれません。
私はそのとき、テクノロジーがあれば、こうした不幸は未然に防げる可能性があるのではないかと強く感じました。
それにもかかわらず、なぜ日本ではまだ十分に普及していないのか。
「誰かがやるのを待つのではなく、自分がやらなければならない」
そう腹を決めた瞬間、起業への不安も、ITを学び続けることへの苦痛も、いつの間にか消えていました。

賢さよりも「優しさ」を。個性を武器に変え、共に羽ばたくチーム作り

——組織を運営する上で、社員の皆さんと接する際に大切にされていることは何でしょうか。

「賢いよりも優しい方が難しい」という言葉を大切にしています。知識や技術は努力で積み上げられますが、優しさは日々の心の余裕や柔軟性に左右される変数のようなものです。だからこそ、社員の皆さんにとって、まず私自身が一番の理解者でありたいと思っています。スタートアップですのでストレートな意見交換も行いますが、個人の人格を否定せず、感情的な圧力をかけないよう意識しています。「嫌いだから注意する」というのはあってはならないですし、注意するのであればその方のいいところを50個言ってあげれるような人間でありたいです。

また、私は社員の皆さんに「私よりも得をして、私よりも羽ばたいてほしい」と本気で願っています。 ORBYはそれぞれの個性を武器に変える場所でありたい。たとえ過去に否定された経験や苦い思いを持っていたとしても、それを深みとして捉え、テクノロジーというナイフを人を傷つけるためではなく、未来を切り拓く彫刻刀として扱えるような、人間性の豊かなチームを目指しています。

物理的な実体を持つAIが孤独を救う。エネルギー分野への進出も見据えて

——今後の展望や、20年、30年先に見据えているビジョンについてお聞かせください。

ORBYの今後の展望としては、まず直近では、画像・動画判定、遠隔支援・遠隔操作、そして現場に蓄積されてきた無形の知見やノウハウをシステムとして可視化・再現可能にすることで、一部業務の自動化や技術継承の仕組みづくりに取り組んでいきたいと考えています。人手不足や属人化が進む中で、現場の経験や判断を「人に依存するもの」のまま残すのではなく、「次の世代に引き継げる資産」に変えていくことが、今の社会には必要だと感じているからです。
その先の未来では、ソフトウェアの領域にとどまらず、ヒューマノイドロボットをはじめとするハードウェアともつながり、物理空間における業務そのものの自動化や、より高度な技術継承・保全の分野にも挑戦していきたいと考えています。

現場DXの延長線上には、単なる効率化ではなく、「人がやらなくても回る社会インフラ」をどう実装するかという大きなテーマがあると考えています。
さらに20年、30年という長い時間軸で見ると、AIやロボットが社会インフラとして当たり前に存在する時代が来ると思っています。

そうなったときに重要になるのは、それらをどう賢く動かすかだけではなく、何によって動かすかです。人にとっての食料が重要であるように、機械にとってのエネルギー資源の価値はますます高まっていくはずです。

だからこそ将来的には、AIやロボットを支えるエネルギーの分野にも視野を広げていきたいと考えています。地上でつくるべきもの、太陽光のように活用できるもの、あるいは安全性の観点から地球外で扱うべきものも出てくるかもしれません。まだ構想段階ではありますが、それくらい長い視点で未来を見ています。

私が描く究極の未来は、フィジカルAIが社会の中を自然に動き回り、人を支え、安全を守り、危険や犯罪さえ未然に防げるような世界です。
もちろん、まだ実現できていないことはたくさんあります。ですが、焦らず、諦めず、ひたすら積み上げていけば、未来は少しずつ現実になると信じています。

そして経営者としては、事業をつくるだけでなく、挑戦し続ける姿そのものを通じて、次の世代に何かを感じてもらえる存在でありたいと思っています。
少し大きなことを言ってしまったかもしれませんが、言ったからにはもう後戻りできないので、ちゃんとやり切ります。
※求められるものに応じて私たちも変化していくため、やり続ける中で今お話ししていることが少し変わることもあるかもしれません。それでも、遠くを目指すからこそ、周りの皆さまへの感謝を忘れず、これからも精進しながら進んでまいります。

愛犬とのダッシュで心身を解放。未知の文化に触れることが最高のインプット

——多忙な毎日の中で、どのようにリフレッシュされていますか。

実はあまりリフレッシュが得意な方ではないのですが、愛犬と過ごす時間は特別です。もともと体を動かすのが好きなので、愛犬と一緒に家の周りを50メートル走のような猛スピードでダッシュしています。一気にエネルギーを発散させることで、頭がクリアになりますね。

また、街中で海外の方を見かけると、翻訳ツールを使いながら自分から積極的に話しかけることもあります。自分とは全く異なる文化や食生活、価値観を目の当たりにすると、自分の知らない世界がまだこんなにあるんだと実感でき、それが最高のリフレッシュとインプットになります。人と関わり、新しい発見をすることが、私のエネルギーの源泉なのかもしれません。

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