見えない部分にこそ誠実さを。現場で培った技術と信頼を守り続ける塗装会社の歩み
有限会社平間 代表取締役 平間 弘之 氏
中学卒業後すぐに塗装業界へ入り、十代の頃から現場で技術を磨いてきた平間氏。時代の変化、独立、法人化、経営上の苦労を重ねながらも、変わらず大切にしてきたのは「手抜き工事をしない」という誠実な姿勢です。現在は塗装工事にとどまらず、外装工事を一式で受注できる体制を整え、現場の品質を守りながら会社を運営しています。職人の技術が大きく変化してきた時代を知る平間氏に、会社の強み、仕事への考え方、組織づくり、今後の展望について伺いました。
目次
見積もりに表れない一手間まで、誠実に積み重ねる
——会社として大切にしていることを教えてください。
塗装の仕事には、外から見えにくい部分があります。たとえば、見積もりでは三回塗りとなっていても、悪い業者であれば二回で終わらせてしまうこともできてしまいます。お客様には分かりづらいところだからこそ、そこをどう誠実に行うかが大事だと思っています。
また、見積もりに書かれていない細かい部分でも、「ここをもう一手間かければ、もっと仕上がりが良くなる」と感じる場面があります。
そうしたプライスレスなサービスを、自然にできる会社でありたいと考えています。従業員には口うるさく伝えることもありますが、それはお客様に安心していただける仕事をするためです。
——他社にはない、御社の強みは何でしょうか。
当社には一級塗装技能士が複数在籍しています。ただ、今の塗装業界では、資格試験で求められる内容と実際の現場で行う仕事に少し違いが出てきているとも感じます。
昔は大きな扉を刷毛で塗ったり、天井も刷毛で仕上げたり、住宅の周りに丸太で足場を組んだりしていました。今は道具も材料も便利になり、仕事のやり方も大きく変わっています。そのような時代を経験してきたことは、今の仕事にも生きていると思います。
十五歳で飛び込んだ塗装の世界。現場で磨いた技術と生き方
——この業界に入られたきっかけを教えてください。
私は中学を卒業して、すぐにこの業界に入りました。ちょうどバブルの頃で、当時の社長さんや親方衆はいい車に乗り、いい服を着て、毎晩のように豪遊しているように見えました。十五、十六歳の自分には、それがとても格好よく見えたんです。
十九歳の頃には車と道具を買い、仲間と一緒に、今でいう孫請けのような形で仕事を始めました。しかし、バブルの崩壊とともに、若造が簡単にやっていけるほど甘い世界ではないことを知り、一度会社勤めに戻りました。
——一度会社員として働き、また独立したのはどういった経緯があったのでしょうか。
改めて独立したのは三十代前半です。当時勤めていた会社も忙しく、年収もそれなりにいただいていました。ただ、会社が縮小する流れになり、給料を下げざるを得ない状況になったのです。
その中で、社長からは私だけ今までの年収を維持するから残ってほしいと言われました。もちろん守られた立場でいた方がいいことは分かっていました。ただ、それでは自分のスタイルを通せなくなると思ったのです。
「お前は守られているからいいだろう」となってしまう。そう感じて、もう一度自分でやることを決めました。
経営者になっても、腰を低く、誠実に向き合う
——経営するうえで大切にしている価値観は何でしょうか。
やはり、従業員や仲間がいなければ成し遂げられない仕事だということです。だからこそ、ガチガチに管理するのではなく、一人ひとりが責任感を持って仕事ができるようにしたいと考えています。
もちろん、私も現場をチェックしに行くようにはしていますが、取引先に対しても、指示をいただいたら誠実にこなすことを大切にしています。
それから、なるべく腰を低く接することも心がけています。相手が年上でも年下でも、取引先の管理の方が若い方であっても、偉そうにしないようにしています。
社長という立場になると、どうしても生意気な雰囲気が出てしまうこともあると思います。そこは特に気をつけています。
縦ではなく、丸の組織へ。一人ひとりが責任を持つ体制
——社内のコミュニケーションで意識していることを教えてください。
以前はみんなで食事をしたり、飲み会を開いたりしていました。ただ、ここ数年は一切やめました。従業員は従業員であると同時に、一個人でもあります。プライベートにはなるべく入らないようにしています。
忘年会や新年会も、やった方がいいのかなと思うことはあります。ただ、そうしたところにお金を使うよりも、道具や手当に回すようにしています。一人ひとりに自分の仕事への責任感を持ってもらい、各現場を責任を持ってこなしてもらう体制です。
私が代表ではありますが、その次はみんな平らという感覚に近いです。中心になる人はいますが、縦の組織というより、丸の組織のような形で運営しています。
結果を出し続ける人には、手当で返すことも意識しています。一方で、うまく業績が残せないこともあります。本来は深く追求するべき場面もあるのかもしれませんが、「次で何とかしろ」という大きな目で見ることもあります。
また、数年前から外国人実習生も受け入れています。彼らはとても一生懸命に頑張ってくれます。その姿勢が、社内に良い相乗効果を生んでいる部分もあると思います。
拡大よりも、守ること。積み上げてきた品質を下げない
——今後の展望や、これから取り組んでいきたいことを教えてください。
ありがたいことに、現在は塗装だけでなく、外装工事を一式で受注できる状態になっています。ただ、今後については、あまり大きく拡大するつもりはありません。今は世界情勢の影響で塗料の出荷に影響が出ることもあるからです。
新しいことに手を出したい気持ちがないわけではありません。ただ、まずは現状維持が第一です。会社が耐えられる状態をつくり、余力が増えてきたときには何かに挑戦してみたいという思いはあります。今の状態を維持できれば、従業員のみんなの生活も守れると思っています。
——平間さんが感じる課題について教えてください。
課題としては、今まで培ってきたものを下げないことです。仕事のレベルを下げず、なおかつコストも抑える。
そして、職人一人ひとりが、サービスだと分からないくらいの小さなサービスを自然にできるようになること。それができれば、この業界でやっていけるのではないかと思っています。
仕事を離れた時間が、また現場へ向かう力になる
——お休みの日は、どのようにリフレッシュされていますか。
趣味は多い方です。休みの日はゴルフをしたり、バイクに乗ったりしています。個人的にはアメ横も好きで、昼から飲み歩くこともあります。いろいろなお店と顔なじみになっていて、あちこちに顔を出しながら過ごしています。夜より安く済むのもいいところです。
また、犬と遊んだり、旅行したりすることもあります。旅先でも周りの人と友達になれるタイプなので、そういう時間も自分にとってはリフレッシュになっています。
仕事では現場や会社のことを考える時間が多いですが、そうした時間があるからこそ、また日々の仕事に向き合えるのだと思います。