粋でカッコいい商社をつくる──0から事業を生み出し続けるイービストレードの挑戦
イービストレード株式会社 代表取締役 寺井 良治 氏
インターネット黎明期に誕生し、一度は事業モデル崩壊という危機を迎えながらも、再建を果たし独自の進化を遂げてきたイービストレード株式会社。現在は「小さな総合商社」として、多様な事業を展開しています。本記事では、同社の歩みや価値観、組織のあり方、そして未来への展望について寺井良治氏に伺いました。
目次
事業モデル崩壊から再構築へ──「小さな総合商社」という現在地
――現在の事業内容について教えてください。
当社は2000年3月に設立され、現在26年目になります。もともとは日商岩井とNTTグループのジョイントベンチャーとして、eコマース事業を軸に立ち上げました。当時は「ネット総合商社」という位置づけで、非常に注目を集めていた存在です。ただ、立ち上げ直後にITバブルが崩壊し、事業モデル自体が成り立たなくなりました。華やかなスタートとは裏腹に、実態としては何も残らない状態に近かったといえます。
そこから「何ができるのか」「何をやるべきか」「何をやりたいのか」を整理し、一つひとつ事業を積み上げてきました。現在、複数の事業領域を展開する企業へと進化し、キャラクターグッズの製造から空港向け検査装置、さらには地雷探知機に至るまで、いわゆる“百貨店型”の総合商社として幅広い商品を取り扱っています。
また、単なるトレーディングにとどまらず、水流技術を応用した環境事業、微細藻類の培養を行うバイオ事業、プロスポーツチームと連携したメディカル事業など、多様な分野で新規事業の創出にも取り組んでいます。こうした事業の立ち上げに必要な総合的な機能を社内に備えていることから、規模こそ大きくはありませんが、“総合商社”を標榜し、柔軟かつ独自性のある事業展開を進めています。
「カッコ悪さ」から始まった原点──主体的に生きるという選択
――これまでのキャリアについて教えてください。
実は、 私はもともと商社に入りたくて入社したわけではありません。理系出身で研究の道に進むことに強い違和感を抱える様になり 、消去法のような形で商社を選びました。入社後は化学品の営業部門に配属されましたが、当時の自分の働き方に対しては、どこか「野暮だな」と感じるところがありました。
メーカーと顧客の間に立つ役割は重要である一方、自分自身の意思や価値が反映されている実感が薄く、主体性を持てていなかったんです。数十億規模の取引に関わっていても、どこか“流れている仕事を担当している だけ”という感覚が拭えませんでした。その違和感が、自分の中でずっと引っかかっていました。
――仕事観や転機について教えてください。
大きな転機となったのは、バンコク駐在時に出会った上司の存在です。 その方は、いわゆるゴマすり型の営業を苦手とし、自ら事業を立ち上げて主体者として動くことを好むタイプの商社マンでした。ときには反面教師と感じる場面もありましたが、良い意味で我儘で、どこか粋なその働き方に強い衝撃を受けました。 この出会いをきっかけに、私の仕事観は大きく変わっていきました。
イービストレードに関わることになったのも偶然でしたが、「新事業創造」という理念に触れたとき、自分のやりたいことと重なると感じました。最初は何もない状態からのスタートでしたが、だからこそ自分の意思で事業を作れる環境に魅力を感じ、覚悟を決めて取り組むようになりました。
社長の仕事はシンプル──「会社を潰さない」という責任
――組織運営で大切にしていることを教えてください。
正直に言うと、社長という役割について私自身は明確な“答え” を持っているわけではありません。ただ、一つだけ強く意識していることがあります。それは「会社を潰さないこと」です。これは先輩から言われた言葉ですが、非常に本質的だと感じています。どんな意思決定も最終的にはそこに行き着きますし、その責任を負っているのが社長だと思っています。形式的なマネジメントよりも、状況に応じて判断し続けることのほうが重要だと考えています。その積み重ねが、結果として組織を支えていくものだと思っています。
――社員との関係性や社内の雰囲気について教えてください。
社員との関係については、無理にコントロールしようとはしていません。自分が大切にしている価値観を自然に共有していくことのほうが大事だと考えています。特に「粋でカッコいい」という感覚は、会社全体の軸になっています。これは見た目の話ではなく、自分の仕事に誇りを持てるかどうかという意味です。主体的に動き、自分の判断で価値を生み出していく。その姿勢が社内にも伝わっていると感じています。結果として、上下関係だけに依存しない、前向きで風通しの良い雰囲気が生まれているのではないかと思います。
失敗の先にしか事業は生まれない──挑戦し続ける理由
――今後の展望について教えてください。
これまで多くの事業を立ち上げてきましたが、すべてが順調にいったわけではありません。実際には、今残っている事業の何倍もの挑戦があり、その中で形にならなかったものも数多くあります。ただ、それらは失敗ではなく、すべて過程だと捉えています。試行錯誤の積み重ねがあるからこそ、現在の事業につながっているという実感があります。
今後も新しい事業を生み出し続けていきたいと考えています。そのために大切にしているのが、「ホラを吹くこと」です。最初に大きな構想を掲げ、それを実現するために動き続ける。その過程で現実に近づけていくことが、新しい価値を生む原動力になります。ホラと嘘は違い、後から実現する覚悟があるかどうかが重要だと思っています。
また、事業を広げていくうえでは、技術や商品そのものだけでなく、それをどう届けるかという視点も欠かせません。良いものが自然に売れるわけではなく、仕組みとして成立させる必要があります。その意味で、これからも“売る仕組みを作る”という役割を強化していきたいと考えています。新たな領域にも積極的に挑戦しながら、価値を形にしていく取り組みを続けていきます。
仕事そのものがリフレッシュ──爽快感を求めて働く
――リフレッシュ方法について教えてください。
私は仕事において“爽快感”を大切にしています。実体験として、初めてその爽快感を強く味わったのは、数億円規模の案件ではなく、むしろ1千万円の案件でした。 この経験から、「仕事の面白さは規模の大小に左右されるものではない」というのが、今の私の率直な思いです。だからこそ、やみくもに会社の規模拡大を追うのではなく、“なんでもできる”商社として、爽快感のある事業を創り出すことを追求しています。 その結果、働くこと自体が私にとってのリフレッシュになっているのです。
――趣味やプライベートで大切にしていることはありますか。
長年、ゴールデンレトリバーを飼っていて、それが大きな癒やしでした。25年ほど一緒に過ごしてきましたが、最近亡くなってしまい、今は少し喪失感があります。それでも、あの時間は自分にとってかけがえのないものでした。
また、スポーツ観戦も好きで、野球やサッカー、ラグビーなど幅広く見ています。ただ、どうしてもビジネスの視点で捉えてしまうこともあり、試合の進め方や組織の動きから学ぶことも多いです。
こうした時間も含めて、仕事と地続きでつながっている感覚があります。これからも、その感覚を大切にしながら日々の仕事に向き合っていきたいと考えています。