スポーツ医学の実践で「健康前提社会」を支える――地域に根ざした総合診療のかたち
医療法人社団VITA 理事長/池尻大橋せらクリニック 院長 世良泰氏
池尻大橋せらクリニックは、スポーツ医学の知見を基盤に、地域に根ざした総合的な医療サービスを提供するクリニックです。単なる怪我の治療にとどまらず、運動療法を軸に据えた診療を通じて、患者一人ひとりの生活の質向上を目指しています。本記事では、院長の世良泰氏に、クリニック開業の背景や診療の特徴、経営に対する考え方、そして今後の展望について伺いました。
スポーツ医学の本質を地域医療で実践する
――クリニック開業に至った経緯を教えてください。
もともとスポーツ医学を専攻していましたが、日本ではスポーツ医学というと、プロスポーツチームのドクターや代表チームの医師といったイメージが強いと感じていました。一方で海外では、スポーツ医学は総合診療の一部として位置づけられており、怪我だけでなく日常的な体調不良や生活習慣に関わる問題にも対応する分野です。
こうした考え方に触れる中で、スポーツ医学をより実践的に活かすには、専門病院ではなく地域での開業が適していると考えました。自分の手の届く範囲で、総合的な診療を行いたいという思いから、クリニックの開業に至りました。
――現在の事業の特徴や強みについて教えてください。
当院の特徴は、運動療法を中心に据えた総合的な診療にあります。一般的にスポーツ医学というと整形外科領域を想像されがちですが、実際には医療に対して運動が果たす役割に重きを置いています。例えば、糖尿病などの疾患に対して運動療法を取り入れるなど、治療の一環として身体活動を活用しています。
また、整形外科だけでなく内科領域にも対応しており、日常生活における幅広い健康課題に対して総合的に対応できる体制を整えています。リハビリについても、受け身の治療ではなく、患者自身が主体的に取り組む運動療法を重視しています。
健康を支え、人生の目標を後押しする
――理念やビジョンについて教えてください。
人は何か目標や夢を描くとき、それが健康であることを前提にしています。例えば数年後に実現したいことを考える際に、病気になることを前提にする人はほとんどいません。
だからこそ医療従事者として、健康に寄与することで人々の夢や目標を応援したいと考えています。健康を守ることが、その人の人生を支えることにつながるという思いをビジョンとして掲げています。
――経営者としての歩みについて教えてください。
クリニック開業以前から、株式会社スポーツ医学を設立し、診療だけでなく企業へのコンサルティングなどにも関わってきました。特別なきっかけがあったわけではありませんが、専門性を社会の中でどう活かすかを考える中で、診療以外の形での関わりにも関心を持つようになりました。医療に限らず、専門性を持つ人材がその価値を広く発揮することが重要だと感じています。
誠実さを軸にした組織づくり
――経営判断で大切にしている価値観を教えてください。
医療機関である以上、適切な医療を提供することが大前提ですが、その上で大切にしているのは誠実さです。患者に対してもスタッフに対しても、常に誠実であることを重視しています。経営には当然ながら収益の側面もありますが、特に医療は公共性の高い分野でもあるため、誠実であることが重要だと考えています。
――組織運営やコミュニケーションで意識していることは何でしょうか。
現在、常勤で約20名、非常勤を含めると30〜40名程度の体制で運営しています。規模が大きくないからこそ、日々のコミュニケーションを重視しており、できる限り全員と会話することを意識しています。
また、組織として一方向の指示にならないよう、担当者に裁量を持たせ、考えるところから任せるようにしています。主体的に取り組むことで、より良い医療提供につながると考えています。
さらに、朝のミーティングでは運動療法を重視する方針に基づき、スタッフ全員で体を動かす時間を設けています。
――採用において重視しているポイントを教えてください。
第一印象を大切にしています。メールのやり取りや挨拶など、基本的なコミュニケーションから受ける印象は非常に重要です。また、既存のつながりの中で人柄が分かった方に入職いただくケースも多く、結果としてスムーズな組織運営につながっていると感じています。
医療の枠を超えた価値提供へ
――今後の展望について教えてください。
まずはクリニックとして、より多くの患者に来院いただき、適切な医療を提供することが重要だと考えています。特にスポーツ医学に関心のある方や、運動療法を取り入れたい方に対して、専門性の高い医療を届けていきたいです。
その上で、医療機関を単に増やすのではなく、医療機関があるからこそ実現できる取り組みを広げていきたいと考えています。医療を基盤にしながら、より広い領域で健康に寄与する活動を展開していくことが今後の目標です。
――今後の課題と取り組みについて教えてください。
課題についてはある程度想定はしていますが、実際には取り組んでみないと分からない部分も多いと感じています。医療は初期投資が大きい分野ですが、それ以外の取り組みについては、まずは挑戦してみることを重視しています。さまざまな施策に積極的に取り組み、その中から成果が生まれていけばよいという考え方で進めています。
日常の中で大切にする時間
――お休みの日のリフレッシュ方法を教えてください。
休日は家族と過ごす時間を大切にしています。子どもと一緒に過ごすことで、自然と気持ちがリフレッシュされ、日々の仕事にも良い影響があると感じています。