「美しいものはシンプル」を貫く――TOMO’S CLUBが届ける、見る人に寄り添うデザイン
TOMO’S CLUB 代表 山﨑 仁氏
グラフィックデザインを中心に、印刷物全般のデザインを手がけるTOMO’S CLUB(トモスクラブ)。1988年の独立以来、代表の山﨑仁氏は一人で制作を続け、クライアントとの対話を大切にしながら仕事に向き合ってきました。「美しいものはシンプル」という考えを軸に、見る人の立場に立ったデザインを追求しています。本記事では、独立の経緯やデザインへの想い、仕事への価値観、そしてこれからの展望などについて詳しく伺いました。
見る人に寄り添うシンプルなデザインを追求
――現在取り組まれている事業について教えてください。
現在はグラフィックデザインをメインに活動しています。基本的には印刷物であれば何でも対応しており、ポスターやパンフレットなど幅広く制作しています。また、自宅を拠点に、一人ですべての仕事を進めており、打ち合わせからデザイン制作まですべて自分で対応しているため、お客様との距離が近いのも特徴の一つかもしれません。
独立してから都内を転々としながら仕事を続けてきましたが、気がつけば、非常に長くこの仕事を続けてきました。最初の2〜3年は会社勤めをしていましたが、その後はずっと一人です。
――他社にはない強みはどのような部分でしょうか。
やはり、一人で取り組んでいるという点でしょう。規模が大きい会社ではありませんので、柔軟に動けますし、小回りも利きます。特に近隣のお客様であれば、なるべく直接お会いしてお話を聞くようにしています。
今はオンラインでもやり取りできますが、私は実際に会って話すほうが圧倒的に進捗が早いと思っています。細かいニュアンスも伝わりますし、実際にその場で話がどんどん進むこともありますので、都内くらいであれば、直接伺ったほうがよいと考えています。
――「美しいものはシンプル」という言葉には、どのような想いが込められているのでしょうか。
最初に勤めていた会社では、本当にいろいろな業界のデザインを経験しました。そのなかで、自分には向き不向きがあることに気づいたんです。情報をたくさん詰め込むよりも、必要なものだけを整理し、見る人にとってわかりやすいものを作るほうが、自分には合っていると感じました。
以降はなるべく不要なものを削ぎ落とし、シンプルで見やすいデザインを意識しています。デザインする側の自己満足ではなく、見る人が自然に理解できることが大事なんです。その考え方は、今でも自分のポリシーとして持ち続けています。
私は、デザインは芸術とは違うものだと思っています。芸術作品であれば、自分が表現したいものを作ればよいでしょう。しかしデザインは、お客様が「いいね」と思ってくださって初めて、価値が生まれるものです。だからこそ、自分が満足して終わってはいけないと肝に銘じています。
もちろん、自分なりのこだわりはありますが、それ以上に相手がどう感じるかを大切にしています。見る人がわかりやすいか、お客様のイメージに合っているか――そういった部分を意識しながら、最終的にお客様に喜んでいただけるものを作りたいと思っています。
独立のきっかけと、続けられる理由
――独立された経緯を教えてください。
最初の会社へ入社したころは、ちょうどバブルの真っ最中でした。一つ案件に取り組むだけでもかなり大きな金額が動いていた状況を見て、「これなら独立してもやっていけるのではないか」と思ったのがきっかけです。
もちろん、最初から自信満々だったわけではありません。しかし、会社に所属していなくても、自分の力で仕事をしていける可能性を感じました。そうして1988年に独立し、結果的にそこからずっと一人で続けてきています。
――もともとデザインの道を志されていたのでしょうか。
高校時代は美術部に入っており、当時の先生から「デザインの業界に行ってみれば」と言われたんです。もともと図工や絵を描くことが好きでしたので、「ではやってみようかな」と、その気になったのが始まりです。
今振り返ると、あの時の先生の言葉は大きかったと思います。好きなことを仕事にできたというのは、ありがたいことですね。
――仕事を続ける原動力になっているものは何ですか。
やはり、お客様に喜んでいただけた瞬間ですね。最初にデザイン案を何パターンか提出した際に、「わーっ」と感動してくださることがあるんです。その反応を見ると、「この仕事をやっていてよかったな」と感じます。
いくらこちらがよいと思って提示しても、お客様に伝わらなければそのデザインは使用できません。そのような状況のなかで、自分が考えて作ったものに対して喜んでいただいている姿を見られるのは、本当に嬉しいことです。その感覚が好きだから、長く続けてこられたんだと思います。
長年の信頼を糧に、仕事の幅を広げていく
――人とのコミュニケーションで意識していることはありますか。
もし誰かと一緒に仕事をするとしたら、自分の考えをどんどん出してくれる人がいいですね。「こんなこと言ったら怒られるかな」と遠慮して黙ってしまうのではなく、思ったことをぶつけてくれる人が好きです。
以前、アルバイトをお願いしていたこともありましたが、その時もかなり本音でぶつかり合っていました。言い合いのようになることもありましたが、それくらい率直に話せるほうが、結果的によい仕事ができるんです。だからこそ、ストレートに意見を言い合える関係を大事にしています。
――今後の展望についてお聞かせください。
今は規模の大きな歯科医院のお仕事をいただいており、院長先生と直接やり取りをしながら進めています。長く関わらせていただいているので、今後もその仕事をさらに広げていければと思っています。
また、以前東京でお世話になっていたデザイン会社からも、継続的に仕事をいただいています。展示会のポスターやパンフレット、自動車ディーラーの販促物などを担当させていただいてるんです。今後は、そこからもさらに仕事の幅が広がっていけばと期待しています。
――最後に、これからについてのお考えをお聞かせください。
現在64歳ですが、まだまだこれからもいろんなデザインを手掛けていきたいです。好きな仕事をずっと続けられているというのは、幸せなことなのかなと思っています。
デザインの仕事は大変なこともありますが、それでもお客様に喜んでいただけた時の嬉しさは、いくつになっても変わりません。これからも、自分なりのスタイルを大事にしながら、好きな仕事を続けていければと思っています。