人的資本経営を働く環境から実装する――ライフワークスタイルラボが描く「らしく働く」社会
株式会社ライフワークスタイルラボ 取締役社長 公本樹祥氏
株式会社ライフワークスタイルラボは、経営の想いを行動と働く環境に実装する会社です。オフィスを単なる箱や物として捉えるのではなく、そこで働く人の行動や関係性、企業らしさまで含めて組織成長という経営の手ごたえを提供しています。本記事では、公本樹祥氏に、事業の成り立ちや経営に込める思い、今後の展望について伺いました。
顧客側に立ち、採用・成長・定着を運用・浸透させる
――会社の立ち上げに至った経緯を教えてください。
2010年に、オフィス移転・構築のプロジェクトマネジメント会社として株式会社ティーズブレインが立ち上がりました。きっかけは、オフィス移転の現場で感じていた違和感です。物件選びや設計、工事などの各工程で、どうしても業者側の都合や利益が優先されやすく、本来重視すべきお客様企業の目的が後回しになっているケースが多くありました。
本来、オフィス移転は業績向上や採用・組織成長・定着といった事業成長のために行うものです。そこで、特定の商品や施工を売るのではなく、お客様の立場で目的から整理し、無駄なコストを抑えながら質の高い形で実現する必要があると考えました。
――現在の事業の特徴はどのような点にありますか。
現在の事業の特徴は、オフィスを「つくって終わり」にしない点にあります。見た目やレイアウトだけで設計すると、時間が経つにつれて本来の目的から外れ、使われ方が変わってしまうことが多くあります。結果として、無駄なコストや非効率が生まれるケースも少なくありません。
こうした課題を背景に、「働く環境は人的資本経営のラストワンマイル」という考え方を軸にしています。働き方やコミュニケーション、組織の特徴まで含めて設計し、会議室の使い方や人の動きが自然に生まれる配置など、運用まで見据えた環境づくりを行っています。単なる空間づくりではなく、人や組織の成長につながる働く環境を提供している点が特徴です。
また、採用・成長・定着を阻む「心理的契約のズレ」を解消し、会社・仕事・自分に夢中になれる組織をつくることも、当社が重視しているテーマです。制度、1on1、研修、出社施策など、人的資本への投資を行っていても、「なぜかうまくはまらない」という違和感を抱える企業は少なくありません。
こうした場合、具体的な施策を急いで進める前に、「何のために必要なのか」「本当の課題は何か」「どのような組織を目指すのか」を整理することが重要です。当社では、この土台をつくる「組織成長Phase0デザイン」を提供しています。組織の課題や目指す姿をストーリーとして整理し、ぶれない意思決定の軸をつくることで、その後の施策が形だけで終わらない状態を目指します。
東京大学大学院経済学研究科稲水准教授との共同研究・監修から開発した独自サーベイ「モバサク」を通じて、会社と社員の間にある「ズレの構造」を可視化し、経営者や責任者が組織課題に振り回されず、業績向上に集中できる状態を支援しています。実際に、顧客の88%から「直近3年間、業績が伸び続けている」との声をいただいています。
「らしく働く」で日本を進める
――理念やビジョンには、どのような思いが込められていますか。
会社ごとに働き方や求める人材は異なるため、画一的な方法では解決できないと考えています。それぞれの会社や個人に合った働き方を実現し、企業の活力を高めることで、日本全体の元気につなげたいという思いがあります。そのため「らしく働くで日本を進める」というパーパスを掲げています。
――経営の道に進まれた背景を教えてください。
幼い頃、病弱であった私の生命を、親をはじめとする多くの大人たちが懸命に働いて支えてくれました。その経験から、働く人が報われる社会をつくりたいと考えるようになりました。広告会社で企業支援に携わってきましたが、社会環境の変化を経て、外側からの支援だけでなく、働く人や働く環境そのものに関わる必要性を感じ、現在の事業に参画し経営に携わるようになりました。
クリーン&フェアを判断基準に
――経営判断の軸になっている価値観を教えてください。
大事にしているのは、100%お客様側で考えることです。マネタイズを考えると、自社に有利なことを考えがちですが、それがお客様の利益になるとは限りません。
私たちは、お客様が不利益を被らないようにお守りする立場です。そのため、特定の調達先や資本関係によって忖度が生まれるようなことは一切しないと決めています。説明責任を果たし、透明性と公正性を持ってサービスを提供する。「クリーン&フェア」が、私たちの判断基準です。
――社内コミュニケーションで大切にしていることは何でしょうか。
役職はありますが、基本的には階層をつくらず、議論の過程では忖度なくアイデアを出し合うことを大切にしています。心理的安全性やフラットな関係性を意識しています。
特徴的なのは、360度評価だけではなく、360度目標設定をしていることです。一人ひとりがなぜ弊社で働くのか、将来どうなりたいのか、会社の期待と自分の目標はリンクしているか、今期のKGI・KPIをどう達成するのかを全員が理解したうえで組織運営をしています。組織の目標と個人の目標がずれないように、公明正大に進めることを重視しています。社長である私の目標も一番若い社員から、「もっとできますよね!?」なんて言われます(笑)。
――採用や育成で重視していることはありますか。
私たちは、理念と成果の二つにコミットすることを大切にしています。スキルがあっても、理念や成果に共感できない方とは一緒に働くことが難しいと考えています。
採用時にも、理念や業務プロセスに共感できるかを重視します。アカウンタビリティを持ち、透明性を保って仕事ができること。自分の仕事を抱え込まず、決められたワークフローを逸脱しないこと。そうした姿勢を持つ方と一緒に働きたいと思っています。
人的資本経営を、働く環境から実装する
――今後の展望や挑戦について教えてください。
人的資本経営に取り組む企業は増えていますが、制度だけでは十分に機能しないと感じています。本当に実現するには、働く環境まで含めて設計する必要があります。働く環境は一部門の役割ではなく、採用や生産性にも関わる経営のテーマとして、全社で取り組むべきものです。私たちは、働く環境と人づくりを一体で支援し、継続的に成長できる企業を増やしていきたいと考えています。
――今後の課題と、その取り組みについて教えてください。
考え方自体は評価されつつありますが、まだまだ知名度も低く認知拡大の段階です。また、既存の業界とは異なる立場になるため、価値が伝わりにくい面もあります。そのため、営業や認知の強化を進めながら、丁寧に説明を重ねていく必要があります。今後は、こちらから売り込むだけでなく、相談ベースで選ばれる状態をつくることが課題です。
希少な命と向き合い、生きる本質を見つめる
――尊敬している人物や影響を受けた方はいますか。
私が目指しているのは、土光敏夫さんです。社員が寝ている間に経営者がどれだけ働けるかを体現され、結果も残された方だと思っています。
”メザシの土光さん”と呼ばれるような質素な生活をされ、華美なものを排除し、社員やお客様のために資本を使う。そのスタイルがとても好きです。
――お休みの日のリフレッシュ方法を教えてください。
私の名字である「公本」は、全国で13軒しかない絶滅危惧姓です。自分がこの世に生を受けた意味を考えると、人生でどれだけ希少価値を出せるかを意識しています。
休日には、子ども関連のボランティアをしています。
趣味は、クマムシというマイクロモンスターを採取して育てることです。目に見えない微生物ですが、どんな外部環境であっても適応し生き延びる存在です。苔の中からクマムシを探し、採取して育てる中で、生きることの本質を感じています。質素に、生きることそのものを見つめる時間が、自分にとってのリフレッシュになっています。