子どもも親も「行きたくなる場所」へ――子ども食堂の概念を変える挑戦
特定非営利活動法人lien 代表理事 中野莉子氏
子育てと仕事の両立に悩む家庭が増える中、「誰もが頼れる場所」をつくりたいという想いから活動を広げているのが、特定非営利活動法人lienの代表理事・中野莉子氏です。小売事業やキャリア支援など多岐にわたる事業を手がけながら、現在は「子ども食堂つむぎ」の運営に力を注いでいます。自身の経験をもとに、子どもだけでなく親も支えられる場所づくりに取り組む中野氏に、事業の背景や想い、今後の展望について伺いました。
子育ての現実から生まれた「頼れる場所」
――現在の事業内容について教えてください。
現在は、小売事業やキャリア支援、ワークショップの開催などを行っています。また、カンボジアへの支援活動など助成支援にも取り組んでいます。その中で、NPO法人として「子ども食堂つむぎ」を運営しています。
――子ども食堂を始めたきっかけを教えてください。
もともとは保育園で働いていた経験があり、子どもたちや保護者と接する中で、家庭での食事環境に課題を感じていました。忙しい中で、どうしてもファストフードやコンビニ食に頼らざるを得ない状況があり、「もっと手軽に栄養のある食事が取れたらいいのに」と思っていました。
その後、自身が子育てをするようになり、仕事と育児の両立の大変さを実感しました。さらに双子を出産した際、SNSのコミュニティを通じて、頼れる人がいない中で苦しむ母親たちの声を知りました。「逃げたいけど逃げられない」「毎日涙が出る」という声に触れ、支え合える場所の必要性を強く感じたことが、子ども食堂を始めた大きなきっかけです。
「行きたくなる場所」に変える子ども食堂
――子ども食堂ではどのような価値を提供していますか。
私の中で大きなテーマは「子ども食堂の概念を変える」ことです。現在の子ども食堂は、「困っている人が行く場所」「かわいそうな子どもが集まる場所」というイメージが強く、それが利用のハードルになっています。
そこで、「つむぎ」では、子どもたち自身が「行きたい」と思える場所づくりを意識しています。友達を誘って行きたくなるような楽しい空間にすることで、親も「休むために行かせる」のではなく、「子どもが行きたいから行かせる」という自然な形で利用できるようになります。その結果、親も自分の時間を持てるようになり、心に余裕が生まれると考えています。
――具体的な取り組みについて教えてください。
食事の提供だけでなく、ワークショップやお菓子作りなどの体験も重視しています。デザートは子どもたち自身がトッピングをしたり、普段家庭では難しい体験ができるように工夫しています。私自身、お菓子作りやハンドメイドが好きでこれまで取り組んできたので、その経験を活かしながら、毎回違った楽しみを提供しています。
実際に「来るのが毎回楽しみ」という声を多くいただいており、食事後もすぐ帰るのではなく、ぎりぎりまで過ごしたいと言ってくれる子どもたちも多いです。
多くの人が関わるコミュニティへ
――運営体制について教えてください。
NPOの役員は約10名ですが、それ以外にもスタッフやボランティアの方々が多く関わってくださっています。子ども食堂の運営時には大人が約15名ほど関わり、さらに全体としては約125名ほどの方が何らかの形で関わっています。
学生の方が宿題を教えてくれたり、一緒に遊んでくれたりと、多世代が関わる場になっています。もともとは子ども関連の事業に興味がある方と始めましたが、現在は子育て中の母親を中心に、ビジョンに共感して参加してくださる方が増えています。
――人のつながりはどのように広がっていますか。
最初はSNSでの発信がきっかけでしたが、実際に利用した方が共感してくださり、「もっと広めたい」と紹介してくださることで広がっています。親子で参加しながらボランティアとして関わるケースも多く、人と人とのつながりによってコミュニティが広がっています。
子育てしやすい社会を目指して
――今後の展望について教えてください。
目指しているのは、「子育てしやすい町をつくる」ことです。その第一歩として、子ども食堂の概念を変え、誰もが当たり前に利用できる場所にしていきたいと考えています。
子どもたちが笑顔でいるためには、まず親が笑顔であることが大切です。そのため、子どもだけでなく親も支えられる仕組みをつくっていきたいです。また、ここで育った子どもたちが将来、同じような場所をつくる側になってくれれば、その輪はさらに広がっていくと思います。
――現在の課題について教えてください。
大きな課題は、受け入れ人数の限界です。現在は自宅を中心に開催しており、1回あたり約35人の子どもたちが参加していますが、これ以上増やすのは難しい状況です。公民館などを活用して開催回数を増やしたいと考えています。
また、本来支援が必要な幼い子どもやその親への対応も課題です。安全面や人員、場所の問題から、現状では小学生から中学生を対象としていますが、より広い世代への支援をどう実現するかを模索しています。
さらに、本当に必要としている人に情報が届いていないことも課題です。SNSだけでは限界があり、概念そのものを変えていく必要性を感じています。
挑戦することが人生を豊かにする
――最後に読者へメッセージをお願いします。
人生は一度きりです。自分の可能性に制限をかけず、挑戦していくことがとても大切だと思っています。私自身、挑戦する中で人生の楽しさや幸せを実感してきました。
どんな状況でも、努力することで変わっていけると信じています。このメッセージが、誰かの「一歩踏み出すきっかけ」になれば嬉しいです。