“接客しない”という選択が、新しい買い物体験をつくる──株式会社UPBEARが挑む無人アパレルの未来
株式会社UPBEAR 代表取締役 中谷 駿志 氏
「洋服屋なのに、店員がいない。」──そんな新しいスタイルで無人アパレルを展開しているのが、株式会社UPBEARです。現在は“24時間無人の洋服店”のフランチャイズ展開に注力しており、接客をあえて行わない新しい買い物体験を提供しています。本記事では、中谷駿志氏に事業への想いや今後の展望について伺いました。
目次
“気軽に服を選べる場所”をつくる──UPBEARの現在地
――現在の事業内容や、特に力を入れている取り組みについて教えてください。
現在は、アパレル事業を中心に、美容サロン、飲食店、結婚相談所の4事業を展開しています。その中でも、今特に注力しているのが「24時間無人の洋服店」です。
もともとアパレルから事業をスタートしていることもあって、今でも売上の軸はアパレル事業ですね。最近は無人店舗のフランチャイズ展開にも力を入れていて、そこを事業の大きな柱にしていきたいと考えています。
無人化の一番のメリットは、やはり価格に還元できることです。人件費を抑えられる分、一般的な古着店よりも比較的手に取りやすい価格帯で提供できますし、24時間いつでも来店できるので、お客様が自分のペースで洋服を選べる環境をつくれるんです。
僕自身、販売員時代から「接客されすぎるのが苦手」という感覚があったんですよ。もちろん良い接客もありますが、自由に見たい時もあるじゃないですか。だから独立した時には、店頭に「不要なお声がけは一切しませんので、お気軽にご来店ください」と貼り紙を出していたくらいでした。
販売員として約8年働いていたので、接客の良さも難しさも両方理解しているつもりです。その経験があるからこそ、「人がいない状態で、自由に洋服を選べる空間 」を作りたいという想いにつながっています。
“起業家志向”ではなかった──中谷氏が経営の道へ進んだ理由
――ご自身のキャリアや、起業に至るまでの経緯について教えてください。
実は、最初から「起業したい」と強く思っていたタイプではないんです。もともとは新卒で化粧品会社に入社したんですが、数ヶ月で退職しました。その時に、「もっと自由に働ける環境がいいな」と感じたんですよね。
服装や髪型も含めて、自分らしく働ける仕事をしたいと思ってアパレル業界に入りました。当時は今みたいに洋服が大好きだったわけでもなくて、本当にシンプルな理由だったと思います。
ただ、アパレル販売員として働く中で、現実的な将来も見えてきました。転職を考えても、営業職の中でもかなり厳しい環境の求人が多かったですし、「それなら自分でやった方がいいんじゃないか」と自然に考えるようになったんです。
だから、すごく高い志を掲げて始めたというより、「今まで培ってきた知識や経験を活かせるのがアパレルだった」という感覚に近いですね。
でも、経営を続ける中で考え方はかなり変わりました。今は、「自分のために事業がある」とは全く思っていません。お客様や社会に貢献できるからこそ事業が存在すると思っています。
なので、自分たちがやる以上は“業界上位のサービス”を作らなければ意味がない。その想いはずっと変わっていません。プロダクト設計も現場づくりも、全部そこにつながっています。
“言っただけ”で終わらせない──組織づくりで大切にしていること
――組織運営や、メンバーとのコミュニケーションで大切にしていることを教えてください。
一番大事にしているのは、「最後までしっかり議論すること」です。
職場によっては、話しただけで終わってしまうケースって結構あると思うんですよ。でも僕は、“伝わったかどうか”まで含めてコミュニケーションだと思っています。
さらに、その内容に納得した上で実行できるかどうかも大事なんです。だから、うちでは途中で曖昧に終わらせず、最後までちゃんと話し切ることを意識しています。
採用でも、スキルより人間性を見ることが多いですね。もちろん条件面を整えるのは会社として当然ですが、それ以上に「お客様に気持ちを向けられる人か」を重視しています。
その中で、唯一かなり強く見ているポイントがあって、それは“前職の悪口を言わない人”です。
過去の経験上、初対面で前職の不満ばかり話す人は、あまり良い方向にいかないケースが多い印象があるんですよね。だから、そこだけはかなり大事にしています。
逆に言えば、それ以外は幅広く個性を活かしてほしいと思っていますし、会社としても、あまり縛りを作らないようにしています。髪型や見た目についても厳しいルールはありません。僕自身がそういう環境に違和感を持ってきたので、自由度は大切にしています。
“無理なく伸ばす”を貫く──2030年に向けた挑戦
――今後の展望や、これから挑戦していきたいことについて教えてください。
事業としては、無人洋服店の店舗拡大が大きなテーマです。来年には業界ナンバーワンの店舗数を目指していて、2030年には200店舗達成を目標にしています。
ただ、無理に背伸びして拡大したいわけではありません。僕自身、誰かに迷惑をかけながら進めるやり方は好きじゃないんです。だからこそ、「ちゃんとできる体制」を整えた上で、この目標を掲げています。
もちろん、防犯面などの課題がゼロではありません。ただ、それも含めて運営設計をしていますし、清掃や巡回も毎日行っています。
何より、自分たちが提供したいのは「販売員がいない状態で、自由に洋服を選べる環境」です。自分のペースで洋服を選べる空間を、もっと広げていきたいと思っています。
経営の中で譲れないのは、“良いサービスを作ること”です。事業には必ずお金を払ってくださるお客様がいるからこそ、ちゃんと良いものを作って、その対価をいただくべきだと思っています。そこはこれからも変わらないですね。
インドア派だからこそ分かる“消費者目線”
――最後に、休日の過ごし方やリフレッシュ方法について教えてください。
僕はかなりインドア派ですね。映画やドラマを見るのが好きで、家でゆっくり過ごす時間が一番落ち着きます。
周りからはアウトドアっぽく見られることも多いんですけど、実際は全然そんなことなくて(笑)。買い物は好きですが、それも仕事とつながっている感覚があります。
やっぱり消費者として店舗を見ることで、「こういう見せ方いいな」とか、「こういう空気感は入りやすいな」と気づけることが多いんですよ。職業柄、自然とそういう視点になってしまいますね。
もちろん、結婚しているので妻に合わせて出かけることもありますが、自分自身としては、家で映画を見たり、ゆっくり過ごしたりする時間がリフレッシュになっています。
最近だと、Netflixのドラマを観たりしていました。家でゆっくり過ごす時間が、自分にとってのリフレッシュになっています。 そういう時間を挟むことで、また自然と仕事にも向き合える感覚があります。無理に気合いを入れるというより、自分のペースを整える時間なのかもしれません。
これからも、自分の感覚や消費者目線を大切にしながら、より多くの方が気軽に楽しめる店舗づくりを追求していきたいですね。