“子育ての孤立”をなくしたい──日本ペアレントトレーニング子育て支援協会が広げる、支援の循環

一般社団法人日本ペアレントトレーニング子育て支援協会 代表理事 平ひかり 氏

子育てに悩みを抱えながらも、「誰にも相談できない」と孤立してしまう保護者は少なくありません。そんな中、子どもへの関わり方を学ぶ「ペアレントトレーニング」を通じて、保護者支援や資格認定事業に取り組んでいるのが一般社団法人日本ペアレントトレーニング子育て支援協会です。自身も双子育児や発達障害児の子育てに悩んだ経験を持つ平ひかり氏に、事業への想いや立ち上げの背景、そしてこれから実現したい未来について伺いました。 

子育て支援を“学び”で終わらせない──協会が取り組む現在の事業

――現在の事業内容について教えてください。

メインは資格認定事業です。「ペアレントトレーニング」という、子どもへの関わり方を学ぶプログラムを提供しておりまして、学んでいただいた後に資格試験を受けていただき、合格された方へ資格を付与しています。

資格名は「ペアレントトレーニング支援士」と言いまして、子育てに悩む保護者の方はもちろん、保育士さんや教育関係の方、療育現場の方など、本当に幅広い方に学んでいただいています。最近では、自分の子育て経験を地域の役に立てたいというお母さん方も多いですね。

行政や保育園、小学校、高校、大学、療育施設などに伺い、研修やセミナーも行っています。支援者向けだけではなく、保護者向けの講演も多いです。PTAや子ども食堂など、地域のコミュニティでお話しさせていただくこともあります。

私たちが大切にしているのは、「学んで終わり」にしないことです。子育て支援の分野では、知識だけ学んでも、実践が続かないケースが少なくありません。せっかく良い内容を学んでも、家庭に戻った時に継続できなければ意味がないんです。

だからこそ当協会では、実践継続につながる仕組みづくりやプログラム改善を重ねています。子どもを変えるのではなく、関わり方を変えることで親子関係を整えていく。その考え方を、もっと広げていきたいですね。

“もう限界かもしれない”から始まった──平ひかり氏の原点

――この道に進まれたきっかけを教えてください。

もともとは教育業界にいて、塾で保護者対応や相談業務をしていました。ただ、その後は専業主婦として子育てに専念する期間が長かったんです。

私には双子の男の子がいるのですが、そのうちの一人が自閉スペクトラム症でして、子育てに本当に悩みました。言葉がなかなか通じなかったり、癇癪が強かったり、「どう対応すればいいんだろう」と毎日必死でしたね。

転勤先での子育てだったので周囲に頼れる人もおらず、孤立感も強かったです。双子育児というだけでも大変なのに、発達特性への対応も重なって、精神的にかなり追い込まれていました。

本を読んだり講座を受けたりもしましたが、なかなか状況は変わらなくて。そんな時に出会ったのが、このペアレントトレーニングでした。

実際に自分で学び、実践していく中で、まず私自身のイライラやガミガミが減っていったんです。すると、子どもたちにも変化が出始めました。言葉が伸びたり、関係性が穏やかになったり、「こんなに違うんだ」と驚いたのを覚えています。

そこから、「どうしてこんな良いものが広まっていないんだろう」と思うようになりました。最初は周囲のお母さんたちに伝える活動から始まり、それが少しずつ広がって、今の活動につながっています。

あの頃の私は、本当に一線を越えるか越えないか、紙一重だったと思っています。だからこそ、同じように苦しんでいる人を一人でも減らしたい。その想いが、今も活動の原点ですね。

小さな団体だからこそできる、“共感”を軸にした活動

――組織づくりや活動の中で大切にしていることを教えてください。

現在は、私と理事1名の2人体制で運営しています。法人化したのは2025年なので、まだ本当に始まったばかりの団体です。

大きな組織ではありませんが、その分、理念を大切にしながら動けている実感があります。私たちは単純に資格を販売したいわけではなく、「子どもは変えなくていい」という考え方を社会に広げたいんです。

そのため、広告を大きく打つというよりは、共感を広げる活動を重視しています。発達障害啓発週間に合わせてオンラインイベントを開催したり、地域や行政、教育委員会、小学校などと連携したり。毎回100名ほどの方にご参加いただけるようになり、少しずつ広がりを感じています。

小さな団体だからこそ、草の根で丁寧に信頼を積み重ねていきたいんですよね。

また、最近は企業向けの取り組みにも力を入れています。福利厚生や社員研修として導入していただける企業を増やしたいと思っています。

実はこのスキルって、子育てだけじゃないんです。上司部下の関係や夫婦関係、コミュニケーション全般に活かせる内容なんですよ。新人研修やマネジメント研修として興味を持ってくださる企業も増えてきました。

子育ての悩みが軽くなることで、仕事にも良い影響が出る。そういう循環を企業の中にも広げていけたら嬉しいですね。

“地域に一人いる安心”を全国へ──これから実現したい未来

――今後の展望について教えてください。

まずは「ペアレントトレーニング支援士」という資格を、もっと全国に広げていきたいです。

例えば「野菜と言えば野菜ソムリエ」というように、「子育てや発達支援と言えばこの資格」と言っていただけるくらい、認知を高めていきたいですね。

ただ、私が目指しているのは単なるライセンスではありません。この資格を通して、その人の人生そのものが変わっていく。私はそれをたくさん見てきました。

子育てに悩み、自信を失っていたお母さんたちが、学びを通して自己肯定感を取り戻し、「本当はこんなことをやってみたかった」と、新しい挑戦を始められるようになるんです。

だからこそ、全国各地に支援士さんを増やしていきたい。「困った時は、あの人に相談してみよう」と自然に頼れる存在が地域にいる。そんな世界をつくりたいですね。

私は、ペアレントトレーニングには、虐待や孤立、うつ、自殺といった社会課題を減らす力があると思っています。

親子の笑顔と命を守るためにも、この活動をもっと多くの方に届けていきたいです。これからも、一人ひとりの悩みに寄り添いながら、“孤立しない子育て”が当たり前になる社会を目指して活動を続けていきます。

静かな場所で心を整える──神社仏閣で過ごすリフレッシュ時間

――最後に、休日の過ごし方やリフレッシュ方法について教えてください。

私は神社仏閣が好きで、よく歩きながら巡っています。普段ずっと頭を動かしているので、静かな場所に行くとすごく落ち着くんです。

人が少ない場所で、ゆっくり空気を感じながら歩いていると、自然と気持ちが整っていく感覚がありますね。

山や海というよりは、神社仏閣の静けさが好きなんです。落ち着いた空間に身を置くことで、また次の日から頑張ろうと思えます。

これからも、自分自身の経験を原点にしながら、子育てに悩む方々が「一人じゃない」と思える社会づくりに取り組んでいきます。

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