白いイチゴを世界へ――株式会社イチゴラスが描く農業の新しい可能性

株式会社イチゴラス 代表取締役 森川竜典氏

株式会社イチゴラスは、白いイチゴ「淡雪」の栽培・販売を手がける農業法人です。祖父の代から続くイチゴ農家を受け継ぎながら、現在は国内のみならず12カ国への輸出にも取り組んでいます。単にイチゴを生産するだけではなく、「笑顔」や「会話」が生まれる存在として価値を届けたい――そんな思いを大切にしながら事業を展開しています。今回は、代表取締役の森川竜典氏に、事業への思いや経営観、今後の展望について伺いました。

“笑顔を生む果物”としてのイチゴづくり

――現在の事業内容や特徴について教えてください。

株式会社イチゴラスでは、イチゴの生産・販売を主に行っています。中でも特徴的なのが、白いイチゴ「淡雪」という品種を栽培している点です。白いイチゴはまだ珍しく、国内だけでなく海外からも注目されており、現在は12カ国へ輸出を行っています。

単に珍しいイチゴを作るだけではなく、「イチゴを通じてどんな時間を届けられるか」という部分も大切にしています。イチゴは小さな子どもから大人まで幅広い世代に親しまれている果物です。ただ食べるだけではなく、家族の会話が増えたり、食卓に笑顔が生まれたり、そうした空間そのものを演出できる存在になればいいと考えています。

会社名の「イチゴラス」にも、イチゴに“プラス”の価値を加えていきたいという思いが込められています。祖父の代から続くイチゴ栽培を受け継いできたからこそ、「イチゴと共に暮らす」という感覚を大切にしながら事業に向き合っています。

異業種経験を経て感じた、農業の可能性

――経営者になられた経緯を教えてください。

祖父がイチゴ農家を営んでおり、その事業を孫である自分が受け継いだことが始まりでした。もともとは農業一筋だったわけではなく、以前はまったく別の仕事に就いていました。異業種から農業の世界に入ったことで、農業特有の課題や可能性を客観的に感じることができました。

他産業では当たり前に取り組まれていることが、農業ではまだ十分に取り入れられていない部分も多いと感じています。そのため、農業以外の業界で培われている考え方や仕組みの良い部分を農業にも活かしていければという思いを持ちながら経営に取り組んでいます。

――経営判断をする上で大切にしていることはありますか。

経営者としては、日々多くの判断を迫られる場面があります。良い選択をすれば前向きな方向へ進み、間違った判断をすれば悪い方向へ進んでしまう。その責任の重さを強く感じています。

その中で大切にしているのは、「自分が惹かれる方を選ぶ」という感覚です。「これは面白そうだ」と感じる方向へ進むことを意識しており、実際にイチゴの輸出についても、「この国は面白そうだ」という直感から挑戦してきた部分が大きいですね。

もちろん結果が伴わなければ意味はありませんが、自分の感覚を信じて動くことは、経営者として譲れない軸の一つになっています。

“働きやすさ”を大切にした組織づくり

――社内コミュニケーションで意識していることを教えてください。

業務内容や指示をしっかり伝えることはもちろん大切ですが、それ以上に「業務以外のコミュニケーション」が重要だと考えています。

農業業界は人材不足が続いており、特に若い世代が入りづらい環境があると感じています。だからこそ、働く人が安心できる空気づくりを意識しています。

実際に、スタッフの中には小さな子どもを育てながら働いている方も多く、休日出勤の際には子どもを連れてくることもあります。子どもたちが遊びながら過ごせるような、アットホームな環境づくりを心がけています。

また、社員やスタッフだけでなく、取引先の担当者とも業務以外の会話を積極的に行うようにしています。そうした日常的なコミュニケーションが、信頼関係につながっていると感じています。

――どのような人と一緒に働きたいですか。

私自身は勢いで物事を進めるタイプです。だから、真逆のタイプに魅力を感じます。

慎重に物事を考えられる人や、現実的な視点を持てる人がいることで、組織としてのバランスが取れる。最近はそうした考え方をより強く持つようになりました。

農業の未来を広げるために

――今後取り組みたい挑戦について教えてください。

今後の大きなテーマとして掲げているのが、「輸出拡大」と「人材育成」です。

輸出については、現在12カ国に展開していますが、さらに多くの国へ届けていきたいと考えています。すでに輸出している国でも販路を広げ、より多くの人にイチゴラスのイチゴを知ってもらいたいですね。

もう一つの課題が、人材育成です。農業は若い世代に選ばれにくい業界であり、設備投資のハードルも高いため、新しく農業を始めることが簡単ではありません。だからこそ、制度なども活用しながら、次世代の農業人材を育てていきたいと考えています。

また、現在の農業は「生産」に追われている農家が多いとも感じています。そこに外部の人材や異業種の企業が関わることで、新しい販路や価値の届け方が生まれるのではないかと期待しています。

農業と別業界が掛け合わさることで、これまでとは違う見え方や可能性が生まれる。そうした変化によって農業全体が発展し、さらに良いもの、おいしいものを生み出せる環境につながっていくと考えています。

直感を信じながら、農業の魅力を広げていく

――最後に、これから伝えていきたいことを教えてください。

農業の現場に入ってから、業界の魅力をたくさん感じてきました。一方で、農業はまだ閉鎖的に見られる部分もあり、若い世代が入りづらい環境が残っているとも感じています。

だからこそ、もっと多くの人に農業の魅力を知ってほしいと考えています。異業種の企業や新しい人材が関わることで、農業にはさらに新しい可能性が生まれるはずです。

休日は、子どもたちと出かけることがリフレッシュになっています。家族との時間を大切にしながら、これからも“笑顔が生まれるイチゴ”を世界へ届けていきたいです。

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