伝統芸能をもっと身近に――狂言の新たな可能性を切り拓くオフィスKAJAの挑戦
合同会社オフィスKAJA 代表 河田 圭輔氏
合同会社オフィスKAJAは、「難しそう」「敷居が高い」といった印象を持たれがちな狂言を、より身近な存在として多くの人に届けるために新たな取り組みを続けている団体です。本記事では、狂言師として活動を続けながら法人を設立した代表の河田圭輔氏に、事業への想いや経営の考え方、今後の展望などについて詳しく伺いました。
目次
狂言をもっと身近な文化へ――オフィスKAJAの取り組み
――現在の事業内容や特徴について教えてください。
当社は、伝統芸能である狂言をより身近な文化として多くの方に届けることを目的に活動しています。公演だけでなく、体験や学びの機会を提供することで、これまで狂言に触れる機会の少なかった方々との接点づくりにも力を入れています。
狂言の世界では伝統の継承が重視されますが、私たちはその価値を守りながらも、現代のニーズに合わせた新しい見せ方や提供方法に挑戦できる点が特徴です。体験型の企画なども取り入れながら、狂言との新たな接点を創出しています。
――理念やビジョンについてもお聞かせください。
私たちが目指しているのは、狂言に対する「難しい」「とっつきにくい」といった固定観念を変え、より多くの方に親しまれる文化として定着させることです。伝統を守るだけでなく、時代に合わせてその価値を届ける方法を進化させることで、新たなファン層の創出につなげたいと考えています。
狂言を特別なものではなく、日常の中で気軽に楽しめる存在にしていくことが私たちのビジョンです。
狂言の可能性を広げるために――経営者としての歩みと価値観
――どのような経緯で会社を設立されたのでしょうか。
私はもともと狂言師として活動しており、専業になるまでは、会社員やアルバイトなど狂言以外の仕事と並行しながら舞台に立っていました。しかし活動を続けるなかで、次第により多くの方に狂言を届けたいという想いが強くなり、活動の幅を広げる方法を模索するようになりました。
そんななか、以前から私の活動を応援してくださっていた経営者の方に相談したところ、法人化という選択肢をご提案いただきました。その方の助言や支援を受けながら、活動を継続的に発展させていくための基盤として会社を設立したのが始まりです。
――経営の道を選んだきっかけは何でしたか。
経営者という立場を選んだのは、演者として活動するだけでなく、狂言そのものの可能性を広げる役割も担いたいと考えたからです。
伝統芸能には守るべき価値がある一方で、時代に合わせて届け方を工夫していくことも必要だと思っています。経営という立場であれば、自らの考えで新しい取り組みに挑戦し、より多くの方に狂言を届けるための仕組みづくりにも関われます。
演者として舞台に立つだけでなく、狂言の未来を見据えながら新たな価値を生み出していきたい――そうした想いから、経営の道を選びました。
――経営判断の軸となっている考え方を教えてください。
私が経営判断を行ううえで最も重視しているのは、「お客様視点」です。狂言には長い歴史の中で受け継がれてきた価値がありますが、その価値を多くの方に届けるためには、時代やニーズに合わせて提供方法を見直していくことも必要だと考えています。
そのため、業界の慣習にとらわれるのではなく、「お客様にとってわかりやすいか、楽しみやすいか」といった視点を常に意識しています。伝統の本質を守りながらも、より多くの方に親しんでいただける形へと進化させていくことが、私たちの経営の軸になっています。
次の時代へつなぐ――組織づくりと人材への想い
――組織運営において大切にしていることは何でしょうか。
現在は役員がもう一名おり、経営方針の策定やプロデュース、広報、営業面を支えてもらっています。また、実演を支える役者たちも継続的に協力してくださっています。
そうしたメンバーと共有しているのは、「狂言を次の時代にも残していく」というビジョンです。その実現のために、どのような届け方ができるのかを常に話し合いながら活動しています。
――どのような人と一緒に取り組みたいと考えていますか。
当社の理念に共感し、狂言の新しい可能性について前向きに考えてくださる方と一緒に活動したいと考えています。
単に狂言ができるだけではなく、「どう見せればもっと面白く伝わるか」「どうすれば多くの方に届くか」といった視点を持ち、自らアイデアを出してくださる方は非常に心強い存在です。
参加する伝統芸能へ――今後の展望と挑戦
――今後取り組んでいきたいことを教えてください。
今後は、狂言を鑑賞するだけでなく、自分たちの文化として親しんでいただける機会を増やしていきたいと考えています。
その一環として進めているのが、参加者自身の身近な出来事やエピソードを題材にした狂言作品の制作です。狂言の物語を一方的に届けるのではなく、自分たちの経験が作品になることで、より親近感を持って楽しんでいただけるのではないかと思っています。
――今後の事業展望についてもお聞かせください。
将来的には、私たちが作品を制作して提供するだけでなく、その制作や上演のプロセスそのものに多くの方が関われる環境をつくっていきたいと考えています。
観客として鑑賞するだけでなく、企画や創作の段階から参加していただくことで、狂言との関わり方はさらに広がるはずです。そうした取り組みを通じて、狂言を現代の暮らしのなかに根付く文化へと発展させ、その可能性を広げていきたいと考えています。
フラットな関係性を大切に――河田氏の価値観と素顔
――影響を受けた人物はいますか。
私自身は、ガンジーに強い敬意を持っています。特に、一部の権力や立場に依存するのではなく、一人ひとりが主体的に考え、協力しながら物事を前に進めていく姿勢に大きな影響を受けました。
組織運営においても、上下関係だけで意思決定を行うのではなく、それぞれの立場から意見やアイデアを出し合える環境を大切にしています。多様な視点を取り入れながら価値を創り上げていくことが、よりよい活動や事業の発展につながると考えています。
――休日はどのように過ごされていますか。
普段は企画書や営業資料の作成などデスクワークが中心のため、休日は意識的に仕事から離れ、気分転換の時間をつくるようにしています。時間が取れた際には、瀬戸内海の港町など落ち着いた場所を訪れ、普段とは異なる環境に身を置くことで頭をリフレッシュしています。日常から少し距離を置くことで、新しい視点や発想を得られることも少なくありません。
また、囲碁が趣味なので、仲間と対局を楽しむこともあります。戦略を考えながら相手と向き合う時間はよい刺激になっており、気持ちを切り替える大切な機会でもあります。
――最後に読者の皆さまへメッセージをお願いします。
狂言は、決して特別な人だけが楽しむものではありません。本来は多くの方が気軽に笑い、楽しめる伝統芸能です。
私たちは、狂言をもっと身近な存在として感じていただけるよう、さまざまな形で新しい取り組みを続けています。ぜひ一度、狂言に触れていただき、その面白さや魅力を体験していただければ幸いです。