“女性ファンダム”の視点で、日本のエンタメを世界へ──エクスアールジョン株式会社が挑む新しいデジタル体験

エクスアールジョン株式会社 代表取締役社長  島藤純奈 氏

3D制作やアニメーション制作をルーツに持ちながら、現在は“デジタルボイス”という新たな領域に挑戦しているエクスアールジョン株式会社。アーティストやアスリート、タレントの“生の声”をデジタル化し、女性ファンダムを中心に新たなエンタメ体験を提供しています。リアルな推し活を大切にしてきた島藤純奈氏だからこそ生まれた発想や、日本のクリエイティブを世界へ届けたいという想いについて伺いました。

“リアルな推し活”をデジタルにつなげる──エクスアールジョン株式会社の現在地

――現在の事業内容について教えてください。

私たちは、アーティストやタレント、アスリートの“生の声”をデジタル化して販売する「デジタルボイス」の事業を展開しています。AI音声ではなく、本人の声そのものを届けている点が特徴ですね。

もともとは3D制作やアニメーション制作を行う会社としてスタートしました。BtoB向けの制作だけでなく、ゲーマー向けに3Dアバターツールも提供していたのですが、そこから事業の方向性を大きく転換しています。

私自身、創業期から事業を見てきた中で、「もっと若い世代、特に女性向けに寄せたサービスが必要なのではないか」と感じていました。Webサービスよりスマホ中心、男性向けより女性向けへとシフトしていった形です。

――現在の事業の特徴や強みについて教えてください。

現在は、ユーザーの約90%が女性です。そこが私たちの大きな特徴でもあります。女性ファンダムを理解したうえで、企画段階からIPホルダー様や企業様と伴走できるのは、これまで3D制作やクリエイティブ制作の現場を持ってきた強みだと思っています。

また、私たちは“日本のクリエイティブを世界へ出していく”というビジョンを創業期から掲げています。AIの進化によってクリエイティブ業界の変化も語られていますが、実際に制作の現場にいる立場としては、まだまだ日本人の感性や手仕事には大きな価値があると感じています。

だからこそ、日本のクリエイティブを国内でしっかり育て、世界に発信していきたいですね。

“歴18年の推し活女子”だからこそ見えた違和感

――経営の道に進まれたきっかけについて教えてください。

母が会社を立ち上げたこともあり、経営というものは幼い頃から身近な存在でした。現在も母は会長として関わっています。

ただ、それ以上に大きかったのは、自分自身がずっとエンタメを好きだったことです。私は18年ほど“推し活女子”をしていて、野球も大好きなんです。そういう中で、「リアルなエンタメがどんどん置いていかれている」という感覚がずっとありました。

世の中ではVTuberやメタバースなど、仮想空間のコンテンツがどんどん広がっていますよね。でも私は、リアルな存在を応援する感覚や、人そのものに惹かれる気持ちをすごく大切にしていました。

だからこそ、「もっとリアルの価値を底上げするためのデジタル体験は作れないのか」と考えるようになったんです。その中でたどり着いたのが、“声”でした。声って、すごく手前の情報なんですよ。リアルに近い温度感がある。そこに可能性を感じました。

エンタメ業界やSNSの世界って、どうしても男性視点で作られているものが多いんです。もちろんそれ自体が悪いわけではありません。ただ、女性ファンならではの熱量や感覚が、まだ十分に拾われていないとも感じていました。

だから私は、“女性の視点で作るエンタメ”に挑戦したかったんです。自分自身が当事者だからこそ分かる感覚を、サービスに落とし込みたいという想いがありました。

リモート組織だからこそ、“未来を語る時間”を大切にする

――組織運営やコミュニケーションで意識されていることはありますか。

うちは、ほぼ全員がリモートで働いています。実際、まだ直接会ったことがないメンバーもいますね。

その中で難しいのは、リアルと同じ熱量でどうコミュニケーションを取るかということです。だからこそ、毎週のミーティングでは「この会社でどうなりたいか」「どんな未来を描いているか」を発表してもらっています。

単なる業務報告だけではなく、「この人はこんなビジョンを持っているんだ」と互いに知ることを大切にしています。

また、拍手をしたり、褒め合ったり、そういう小さなコミュニケーションも意識していますね。リモートだと空気感が伝わりづらいので、意図的にポジティブなリアクションを増やすようにしています。

採用については、今も試行錯誤の連続です。お試し期間を設けたり、課題に取り組んでもらったりしながら、お互いに信頼できるかを見ています。

その中で、やはり一番大事なのは“素直さ”だと思っています。私たちの周りにはクリエイター気質の方が多く、自分のスタイルを強く持っている人も少なくありません。もちろんそれは素晴らしいことなのですが、そのうえで「まずやってみる」という柔軟さを持っている人とは、一緒に挑戦しやすいですね。

日本のコンテンツを、もっと世界へ届けたい

――今後の展望について教えてください。

まず、デジタルグッズの第一歩として「デジタルボイス」をさらに広げていきたいです。

この事業には、アスリートやタレントの“セカンドキャリア支援”という側面もあります。声を資産として活用できる新しい収益モデルとして、もっと広げていけたらと思っています。

私たちはデジタルボイスだけではなく、デジタルグッズをコレクトできるスマホアプリも展開しています。今後は、そのサービスを通じて新しい国産SNSのような存在を作っていきたいです。

日本のエンタメって、本当にクオリティが高いんです。ゲーム、アニメ、スポーツ、リアルイベントも含めて、世界に通用する魅力がある。だからこそ、もっと海外へ届けていきたいです。

一方で、課題として強く感じているのは“人”ですね。特にクリエイティブな人材の採用は、今後さらに重要になると思っています。AIを活用できる部分は増えていくと思いますが、最終的な感性や表現には、人の力が必要です。

だからこそ、クリエイティブを本気で楽しめる人たちと一緒に、これからも新しいエンタメを作っていきたいです。

“推し活”から学ぶ、リアルな熱量

――最後に、リフレッシュ方法について教えてください。

やっぱり“推し活”ですね。野球が本当に好きなので、休日も試合を観に行ったり、グッズを見に行ったりしています。

でも、それって単なる趣味ではなくて、仕事にもつながっている感覚があるんです。「今、女性ファンはどんなものを求めているんだろう」とか、「どんな体験に熱量が生まれているんだろう」とか、自然と見てしまうんですよね。

野球だけではなく、他のスポーツやキャラクター、舞台など、界隈を決めずに幅広く足を運びます。実際に現地へ行くと、ファンの空気感や熱狂がすごく伝わってくるんです。

私はやっぱり、“リアル”が好きなんだと思います。人が実際に熱狂している空間や、その場でしか生まれない感情に魅力を感じますし、これからもそんな体験をデジタルと掛け合わせながら、新しいエンタメの形を作っていきたいです。

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