食を通じて地域と未来を支える――自然食品店 やさい村が届ける“情報”と“想い”

自然食品店 やさい村 店長 角屋敷 浩太氏

自然食品店やさい村は、有機野菜やオーガニック食品、無添加食品など、こだわりの食材を取り扱う自然食品専門店です。創業から35年にわたり、食の安全性や昔ながらの製法を大切にした商品を地域へ届けてきました。現在は店舗販売だけでなく、通販や卸売、料理教室、セミナーなども展開しながら、食を通じた健康づくりを支援しています。今回は店長の角屋敷浩太氏に、創業の背景や経営への思い、今後の展望について伺いました。

母の行動力から始まった自然食品店

――事業の立ち上げの経緯について教えてください。

やさい村は創業35年目になります。もともとは母が始めたお店です。

きっかけは、私が幼稚園に通っていた頃にあった食品添加物に関する講演でした。母はそこで食べ物について深く知る機会を得て、「できれば子どもにはそうしたものを与えたくない」と考えるようになったそうです。当時は自然食品を扱う店が鹿児島にもほとんどなく、県外まで買い物に行くこともあったと聞いています。

それなら自分で始めてみようということで、最初は2年間限定のつもりでスタートしました。結果として多くのお客様に支えられ、現在まで続いています。私は12年ほど前から店に入り、一緒に事業を続けています。

――現在の事業の特徴や強みについて教えてください。

当店は自然食品の専門店です。一般的なスーパーとは異なり、有機野菜、オーガニック食品、無添加食品など、こだわりの食材だけを扱っています。

野菜からお菓子、調味料、冷凍食品まで幅広く取り揃えていますが、共通しているのは「安心して選べるもの」であることです。全国的に見ても自然食品専門店はそれほど多くありません。

また、店舗販売だけでなく通販や保育園への卸売も行っています。さらに母が30年近く続けているマクロビオティック料理教室も開催しており、食材の選び方だけでなく使い方や考え方までお伝えしています。食材をどう活用し、どう暮らしに取り入れるかまで含めてサポートすることが、他にはない特徴だと思っています。

「食を整えるサポート」を使命に

――理念やビジョンに込められた思いを教えてください。

一番大きなテーマは「衣食住のサポートをしたい」ということです。

その中でも、当店で扱う商品については、お客様に安心して選んでいただけることを大切にしています。だからこそ、取り扱う商品には誠実に向き合わなければなりません。

私は商品を選ぶ際、「なぜこの商品を扱うのか」を常に考えています。ただ売れるから仕入れるという考え方ではありません。どんなお客様に必要とされるのか、その商品がどんな役割を果たせるのかを考えながらラインナップを決めています。

地域密着のお店なので、同級生やそのご家族が来店されることもあります。そうした身近な方々を含め、地域で必要としてくださる方々の支えになりたいと思っています。

――今後のビジョンについてお聞かせください。

店舗数を大きく増やしていきたいという考えは今のところありません。大切にしたいのは、昔ながらの製法で作られている商品や、生産者の想いを未来へつないでいくことです。例えば、杉樽で仕込む醤油など、手間をかけて作られているものは年々少なくなっています。

私は製造者ではありませんが、そうした作り手のこだわりや背景を伝え、支えていくことも重要な役割だと考えています。そのためにSNSなども活用しながら、商品の背景にある文化や価値を発信していきたいですね。

経営判断の軸は「それは美しいのか」

――経営の道に進まれたきっかけを教えてください。

もともと店を継ぐつもりはなかったんです。以前は大手電機メーカーにて半導体素子の開発に携わっていました。ただ、自分が継がなければ店は廃業する状況でもありました。

私は小学校1年生の頃から現在まで薬を飲んだことがありません。もちろん体調を維持できている理由は一つではないと思いますが、食べ物の大切さを実感してきました。また、食事を変えることで体調が大きく改善した人もたくさん見てきました。そうした経験から、この店が持つ価値を失うのはもったいないと感じたんです。

また、開発職ではエンドユーザーと直接関わる機会がほとんどありませんでした。私は人と話すことが好きなので、お客様と直接つながれる仕事にも魅力を感じ、転身を決意しました。

――経営判断の軸になっている価値観は何でしょうか。

大切にしているのは「それは美しいのか」です。

例えば、売上のためだけに商品を勧めるようなことはしたくありません。本当にその人に必要なのか、一度立ち止まって考えます。場合によっては「これは必要ないと思いますよ」とお伝えすることもあります。良い情報だけではなく、気になる点があればそれも正直に伝えるようにしています。

利益だけを追うのではなく、お客様にとって意味のある選択なのか。その判断が美しいものなのかを意識しながら経営しています。

人との対話が生み出す信頼関係

――組織運営で大切にしていることを教えてください。

スタッフとはよく話をします。私は基本的に感情的に怒ることがありませんし、しっかりコミュニケーションを取ることを意識しています。

長く働いてくれているスタッフも多く、一度辞めてもまた戻ってきてくれる方もいます。休みの日に買い物へ来てくれる人もいるので、本当にありがたいですね。

仕事の話だけではなく、考え方や心のあり方についても話します。食に関わる仕事だからこそ、「目的と手段を間違えないこと」は大切にしています。

健康や幸せな人生が目的であり、オーガニック食品はそのための手段です。手段そのものが目的になってしまうと苦しくなってしまう。そうした考え方はスタッフとも共有しています。

――一緒に働きたいと感じる人の特徴を教えてください。

明るさは大切ですね。学歴などを判断基準にすることはほとんどありません。それよりも、なぜ当店に興味を持ったのか、自分で何か活動しているのかといった部分を重視しています。

実際にスタッフの中には、ヨガやサロン運営など、自分の活動を持ちながら働いている人もいます。

伝統と想いを未来へつなぐ挑戦

――今後取り組みたい挑戦について教えてください。

これから力を入れていきたいのが、動画配信などのデジタルコンテンツです。食材を活用した体の整え方や、伝統的な食品の魅力などを、より多くの方へ届けられる仕組みを作りたいと考えています。

また、お客様同士がつながれる場づくりにも取り組みたいですね。地域の中で交流が生まれ、学び合える環境を作れたらと思っています。

――現在向き合っている課題はありますか。

オーガニックや自然食品という言葉は以前より広く認知されるようになりました。一方で、商品の背景や作り手の想いを伝えられる人は減っていると感じています。

後継者不足などで閉店する自然食品店も少なくありません。だからこそ私は、商品だけではなく、その背景にある文化や価値も発信し続けたいと思っています。

SNSや情報発信を通じて、地域や業界全体の力になれるような取り組みを続けていきたいですね。昔ながらの製法や作り手の想いをなくしてはいけない。その気持ちが今の活動の原動力になっています。

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