消えゆく文化を、現代の価値へ。「保存」ではなく「未来へつなぐ」仕組みをデザインする

合同会社kanazawaza 代表 澤田 雅美氏

日本各地に息づきながらも、時代の波の中で消え去ろうとしている無形の地域文化や伝統技術。それらを単にそのままの形で閉じ込める「保存」ではなく、現代の人々が自発的に「楽しみたい」「続けたい」と思える形へとリプロデュースし、未来へつなぐ挑戦を続けている企業があります。それが金沢を拠点に活動する合同会社kanazawazaです。「文化でしっかりマネタイズできる仕組みを作ることが、真の地域保全につながる」と語る代表の澤田雅美氏に、事業に込めた情熱や、独自の組織運営、そして文化が持つ本来の価値についてお話を伺いました。

地域のアイデンティティを次世代へ

――現在の事業内容や特徴について教えてください。

私たちは、一言で言えば「地域文化プロジェクト」を企画・運営している会社です。現代はグローバル化が進む一方で、自分たちの足元にあるアイデンティティが見失われがちになっています。そのアイデンティティの根幹をなすのが、まさに地域文化です。私たちは、これを単に昔のままの形でフリーズさせて「保存」するのではなく、現代の解釈を加えながらどう未来へ「繋いでいくか」を追求し、事業化しています。

具体的には、文化をテーマにしたエンターテインメントや観光プログラム、子どもたちの体験価値の提供などをプロデュースしています。特に地域の祭りや、人と人との結びつきから生まれた「民衆文化」を、次世代が主役となって巻き込まれるような仕組みづくりを得意としています。

――業界内での強みはどのような点にありますか。

形のない文化を「カテゴリ化(分類)」し、現代の受け手が最も受け取りやすい形に魅力を翻訳して届けるプロデュース力です。どうすれば人が自発的に巻き込まれる形にできるのか、今の時代にベストな継承の形は何なのかを徹底的に分析します。

また、文化保全と「マネタイズ」を両立させる仕組みづくりも私たちの大きな強みです。一般的に経済の世界では、お金を稼ぐことが豊かさと定義されがちですが、文化の世界における豊かさとは「人の関わり合い」そのものです。そのため、経済中心の視点からはマネタイズが難しい分野だと敬遠されてきました。しかし、文化を守り続けるためにもお金は絶対に必要です。「文化だから経済を入れない」のではなく、文化の価値を正当に評価してもらい、しっかりビジネスとして自立させる。このバランスを高い次元で両立させている点に、私たちの唯一無二の価値があると考えています。

「楽しい」から始まった旅。バックパッカー、ダンサーを経て経営者へ

――経営者になられた経緯を教えてください。

根底にあるのは、純粋に「文化の持つ多様性が面白いから」という知的好奇心です。例えば、世界の音楽を見ても、ヨーロッパ圏は4拍子が多いのに対して、アジア圏は変拍子が多い。当たり前の中に潜む地域性の違いを深掘りしていくのが、私にとって何よりのエンターテインメントでした。

私のキャリアのスタートは20歳の頃、バーでの店長業務でした。そこで様々なお客さんや経営者の方の話を聞くうちに、「もっと世界中の人に出会いたい」と思うようになり、バックパッカーとして世界を旅し始めました。旅費を稼いで海外へ行く生活を繰り返すなら、いっそそれを仕事にしようと、自分でアジア雑貨や衣服の買い付けを行うセレクトショップを開いたんです。

海外へ行く機会がさらに増え、現地のフェスティバルに通い詰める中で、今度は「ジプシー音楽」のリズムに強く惹かれ、私自身がダンサーとして活動するようになりました。ありがたいことに、海外から講師として呼ばれるほど活動が本格化し、次第に「踊りを教えてほしい」という生徒さんが増え、気づけば多い時で180人規模の大きなダンススタジオへと発展していったんです。

自分自身が満たされるにつれ、「周囲や地域を良くしたい」という思いが強くなりました。イベント運営の経験を活かし、現在は地域文化の再発信や活性化に取り組んでいます。

私たちの役割は、新たな価値を作ることではなく、本来ある価値を分かりやすく伝えること。その“通訳役”こそが、私のライフワークであり会社設立の原点です。

リズムを崩さない関係:ノイズがプロジェクトを磨き上げる

――仕事をする上で大切にしている価値観は何でしょうか。

関わってくれるスタッフたちの「固有のリズムを崩さないこと」です。

文化系のプロジェクトに携わるメンバーは、必ずしも「仕事を人生の軸」にしていない、独自のライフスタイルを持った人が多くいます。自分なりの生き方を一番に大切にしながら、その合間に「この文化に関わりたいから」という想いで力を貸してくれています。

すぐにレスポンスが必要な仕事はSNSやデジタルのスピード感が合う子に頼み、じっくり時間をかけて蓄積・分析する必要がある仕事はスローな時間軸で生きている人に1ヶ月前から予定を抑えて任せるなど、一人ひとりの生き方の時間を尊重して仕事を差配しています。結果として、そちらの方が自分が想像していた以上のクオリティの高いアウトプットが返ってくることが多いのです。

――社員に求める姿勢はどのようなものですか。

「周囲に流されない人」そして「自分の頭でしっかり考え、信念を持って意見を言える人」です。

たとえ私に対しても、納得がいかないことがあれば「こっちの方が良いと思います」とストレートに意見をぶつけてくれる関係が理想です。

プロジェクトって、最初から最後まで私の思い通り、計画通りに進みすぎると、私の中ではむしろ「失敗」だと思っているんです。逆に多様なメンバーから異なる意見や「ノイズ」が飛び交い、ぶつかり合うことで、当初の計画がどんどん磨き上げられ、より強固なものへと化けていくかなと考えていますね。

地域に入り込むと、時に大きな問題や衝突が起きることもあります。何も問題が起きない関係は、ただの「依頼者と受注者」で終わってしまいますが、本音でぶつかり合った人は、その後絶対に強い味方になってくれます。

終わりのないパズル:消えゆく文化を未来の「わくわく」へ

――最後に今後の展望や挑戦したいことを教えてください。

現在、特に注力しているのが、国指定の無形文化財でありながら、後継者不足によって消滅の危機に瀕している地域文化の救済です。例えば、特定の地域で各家庭ごとに取り行われてきた儀式などは、名前だけの保存会はあっても実質的に機能しておらず、全体を仕切る組織もないため、このままでは本当に途絶えてしまいます。

私は継承者ではないからこその難しさもありますが、だからこそ大学の研究者や、厳格に文化を守ってきた地域の方々と連携し、新たな「継承・協議団体」を立ち上げるための基盤づくりに挑戦しています。

これは、簡単には解けない「終わりのないパズル」に挑んでいるような感覚です。色々な人を訪ねては、歴史の糸口となる古い資料や書類を読み解き、少しずつ地域を巻き込んで味方を増やしていく。まるで壮大なロールプレイングゲームを現実の街でプレイしているようで、本当にワクワクしますね。

Contact usお問い合わせ

    お問い合わせ内容
    氏名
    会社名

    ※会社・組織に属さない方は「個人」とお書きくだい

    役職

    ※会社・組織に属さない方は「一般」をお選びください

    メールアドレス
    電話番号
    どこでお知りになりましたか?
    お問い合わせ内容

    プライバシーポリシーに同意して内容を送信してください。