“外部の人”にならないDX支援――地方企業の現場に入り込むKANMASU流の伴走支援
株式会社KANMASU 代表取締役 柳澤 裕治氏
株式会社KANMASUは、中小企業や自治体を対象に、DX・生成AIの導入支援や企業研修を手がけています。重視するのは、現場へ足を運び、働く人の本音や企業文化まで捉えた伴走型の支援です。本記事では、代表取締役の柳澤氏に、独立の背景や「五方よし」に込めた想い、組織づくり、全国展開に向けた構想について伺いました。
現場に深く入り込む伴走型DX支援
――現在の事業内容について教えてください。
当社は、中小企業や自治体へDX・生成AIの導入支援を行っています。現場で業務改革を支える伴走型支援と、生成AIやBPRに関する企業研修が事業の2本柱です。
単にツールを導入するだけでは、業務は変わりません。現場の仕事や負担、停滞の原因を整理し、その会社に合う進め方を一緒に考えます。
――他社にはない強みや、支援で大切にしていることは何ですか?
最も大切にしているのは、現場主義です。重要な局面では北海道から沖縄まで足を運び、関係者へ対面でヒアリングします。仕事内容に加え、悩みや人間関係、プロジェクトへの温度感、企業文化まで捉えるためです。
進め方に決まった型はなく、定例会議を重ねる会社もあれば、担当者と二人三脚で進める場合もあります。必要であれば、Googleへのログイン方法など基礎的なところから対応します。最終的には、社内の担当者がDX人材として育つところまで支えるのが理想です。
料理に例えると、コンサルタントがレシピを渡し、ベンダーが道具を用意する存在だとすれば、当社はその道具を使って理想の料理を一緒につくる役割です。言葉になっていない課題まで拾うことに価値があると考えています。
「五方よし」で地方企業の未来をつくる
――御社の理念には、どのような想いが込められていますか?
当社は「五方よし」を理念に掲げています。対象となるのは、従業員や業務委託の仲間、お客様、地域社会、未来、そして自社です。会社員時代に経営陣と部下の間に立ち、特定の誰かだけが得をする施策は長続きしないと実感しました。
優先順位の最初は、一緒に働く仲間です。仲間が仕事に誇りややりがいを持っていれば、お客様を喜ばせることができます。その成果が地域社会や未来にも良い影響を与え、最後に自社へ返ってくる。この循環を大切にしています。
ロゴの五角形は、5つのハッピーを表します。花束のように重なるデザインには、GIVEの精神から新しい価値を生み出したいという想いを込めました。
――地方企業の支援を通じて、どのような未来を実現したいと考えていますか?
当社のミッションは「業務改革で日本の地方をもっと良くする」ことです。
AI特化の会社を目指しているわけではありません。DXや生成AIは、地方企業の業務を変え、地域を前へ進めるための手段だと捉えています。
将来は、各地域で地元企業を支えたい人材を見つけ、KANMASU流の支援方法を伝えたいです。群馬から全国へ通うより、その土地を知る人が地域に根差して支援する方が持続可能だと考えています。
酒蔵でのDX経験から生まれた独立への決意
――独立を決意した背景を教えてください。
会社員時代は群馬県の浅間酒造株式会社で経営戦略室に所属し、コロナ禍を機に社内のデジタル化や省力化を進めました。
Google Workspaceの導入やレジのクラウド化では、50代・60代の社員にツールへのログイン方法から伝え、現場との信頼関係を築きながら改革を進めています。
その経験から、地方の中小企業にはリモート中心の支援ではなく、現場に入り込む伴走が必要だと実感しました。地元企業の困りごとを手伝う中で、街の電気屋さんのように寄り添うDX支援の需要も感じます。
全国に同じ悩みを抱える企業があると知り、副業の売上が本業を上回ったことも後押しとなって独立しました。
“外部の人”にならない関係づくりと組織への考え方
――仕事上のコミュニケーションで意識していることは何ですか?
私は、お客様との会話で「御社」という言葉をできるだけ使いません。「私たちで、この事業をどう伸ばしていきましょうか」と、常に“We”を主語にします。
「御社」と言うと外側から助言する立場になりますが、「私たち」に変えるだけで、同じ課題に向き合う仲間としての空気が生まれるからです。社長をどう説得するかも、担当者と一緒になって悩みます。
言葉だけでなく、行動や態度もコミュニケーションの一部だと考えています。プロジェクトに関わっていない社員にも声をかけ、髪型やネイルの変化に気づいたら自然に話題にします。群馬のお菓子を配ったり、従業員用の出入り口から入ったり、社員旅行へ同行したこともありました。
冗談交じりに「社員でしたっけ」と言われるほど、外部の人だと感じさせない関係づくりを大切にしています。
そうして距離が縮まると、表面上の課題だけでなく、本音や会社への愚痴まで話してもらえるようになります。「会社の人には言えないけれど、柳澤さんには言える」と打ち明けてもらえた時は、信頼していただけた一つの証だと感じます。
――今後、一緒に働きたいのはどのような人ですか?
「行儀のいいお節介」ができる人です。目配り、気配り、心配りがあり、相手のために自然と一歩踏み込める方に魅力を感じます。
DXの知識や経験は、後から身につけることが可能です。一方で、相手を思いやり、必要な場面でさりげなく手を差し伸べる姿勢は、その人が歩んできた人生に根差しています。
当社の仕事は、技術を提供するだけではなく、人に寄り添うサービス業でもあります。そのため、スキル以上にホスピタリティを持ち、相手の立場に立って動けることを大切にしています。
地域に根差した支援を全国へ
――今後の展望や挑戦したいことを教えてください。
今後は、当社の価値観に共感する地域人材と連携し、全国へ拠点を広げたいです。
すでに神奈川県小田原市では拠点づくりを進めています。地元企業を支えたい人へ当社の伴走方法を伝え、地域の拠点長として活躍してもらう構想です。
正社員に限らず、業務委託なども検討しています。地域の方が、その土地の企業に寄り添う仕組みをつくりたいです。
――事業を広げる上で、現在感じている課題を教えてください。
課題は2つありまして、1つは、先ほど挙げたような人材を見つけることです。もう1つは、私個人への信頼を起点とした紹介案件から、自社への直接問い合わせへ転換することだと捉えています。
ご紹介いただくことは大変ありがたいのですが、一方で私個人を求められると、他のメンバーへ任せにくくなります。そこで、自社サイトや取材、地域イベントへの協賛を通じて、当社の価値観を知ってもらう接点を増やしています。
――休みの日は、どのようにリフレッシュしていますか?
歴史が好きで、偉人のお墓やゆかりの地を巡っています。春日山神社や、群馬に墓がある小栗忠順のもとを訪れ、力をもらっています。
劇団四季の観劇も好きです。人の身体一つで舞台をつくる姿に触れると、「自分もプロとして頑張ろう」と活力が湧きます。最近は、カフェで働く友人を招き、自宅でコーヒーのテイスティング会も開いています。