ビールがつないだ縁を、日本でも――50代からの挑戦で描くクラフトビールの新しい未来
株式会社クラフトネクサス 代表取締役 竹柴 寿夫氏
2026年3月に設立された株式会社クラフトネクサスは、クラフトビールを通じて人と人、人と文化をつなぐことを目指す企業です。
代表を務める竹柴寿夫氏は、30年以上にわたり製造業の現場でキャリアを重ね、オランダやアメリカでの海外赴任を経験。その地で出会ったビール文化に大きな影響を受けました。
言葉が十分に通じなくても、ビールを囲めば自然と会話が生まれ、国籍や文化を越えて人との距離が縮まっていく。その体験が、竹柴氏にとって新たな人生の扉を開くきっかけとなりました。
現在は、クラフトビールイベントの企画運営、EC事業、コミュニティづくり、ビールツアーなどを通じて、クラフトビールの魅力を「飲む」だけでなく、「出会う」「学ぶ」「体験する」価値として届けようとしています。
本記事では、50代から新たな挑戦を始めた竹柴氏に、起業に至るまでの歩み、大切にしている価値観、そしてクラフトビールを通じて描く未来について伺いました。
目次
クラフトビールが生み出す、人と人とのつながり
――現在の事業内容について教えてください。
当社は、クラフトビールを通じて人と人、人と文化をつなぐことをコンセプトに事業を展開し、クラフトビールを売るだけではなく、出会い・学び・体験まで設計する会社です。
会社名の「クラフトネクサス」にも、その想いを込めました。「クラフト」と「ネクサス(つながり)」を組み合わせた名称で、クラフトビールを通じてさまざまなつながりを生み出したいと考えています。
日本には数多くのクラフトブルワリーがありますが、その魅力はまだ十分に知られていません。クラフトビールをきっかけに新たな出会いや交流が生まれる場をつくっていきたいですね。
現在はイベントの企画運営やEC事業、コミュニティづくりなどを通じて、クラフトビールの魅力を伝える活動に取り組んでいます。
――会社として大切にしている考え方はありますか。
会社の理念として掲げているのは、「文化」「Joy」「教育」の3つです。
文化をリスペクトしながら楽しむこと。そして、楽しむだけではなく、体験や学びを通じて未来へつないでいくことを大切にしています。
クラフトビールをきっかけに新しい出会いが生まれ、人と人がつながっていく。そんな場を増やしていきたいですね。
海外で出会ったビール文化が新たな人生の扉を開いた
――これまでのキャリアと起業のきっかけについて教えてください。
もともとは大手の機械メーカーで30年以上勤務していました。オランダには2度、アメリカにも赴任するなど、海外での経験も重ねてきました。
その中で出会ったのが海外のビール文化でした。当時は英語もほとんど話せませんでしたが、ビールを囲むことで自然と会話が生まれ、国籍や文化の違いを越えて人との距離が縮まっていったんです。
ビールをきっかけに仲間が増えたり、そこから仕事につながったりすることも珍しくありませんでした。ビールには人と人をつなぐ力がある。そうした魅力を実際に経験する中で、日本にももっと広げていきたいという気持ちが強くなりました。
その後、ビールソムリエのドイツ国際資格 Doemens Beer Sommelierを取得し、さらに学びを深めながら準備を進めてきました。そして長年勤めた会社を離れ、クラフトネクサスを立ち上げました。
――独立にあたり、最初から法人化を選ばれた理由は何だったのでしょうか。
一番大きかったのは覚悟ですね。
個人事業という選択肢もありましたが、会社を立ち上げるなら最初から法人にしようと決めていました。
もう元の道に戻るつもりはありませんでしたし、中途半端な形で始めるつもりもありませんでした。挑戦するなら一気にやろう、と。
会社という器を先につくることで、自分自身へのプレッシャーにもなります。その覚悟を形にしたのが法人設立だったと思います。
すべての原点は「Give」から始まる
――経営判断の軸になっているものはありますか。
やはり信頼関係ですね。
そして、自分から与えることです。
よく「Give and Take」と言いますが、まずはGiveが大事です。相手に何かを求める前に、自分から動く。与えたものは巡り巡って返ってくるものだと思うんです。
長く仕事をしていると、結局最後は人との信頼関係なんですよね。
会社を立ち上げる前からさまざまな交流会やコミュニティに参加してきましたが、そこで生まれたご縁が今の事業にもつながっています。改めて、人とのつながりのありがたさを実感しています。
――今後採用するとしたら、どのような人と働きたいですか。
コミュニケーションがしっかり取れる方ですね。
今後はイベント事業やコミュニティづくり、クラフトビールのEC事業など、さまざまな取り組みを進めていく予定です。そのため、事業の広がりに合わせて必要な人材も変わってくると思います。
現時点では事務や営業などを含めて検討していますが、人と関わることが好きで、周囲としっかりコミュニケーションが取れる方と一緒に働きたいですね。
「未来に乾杯」をテーマに新しい価値を生み出す
――現在取り組まれている事業について教えてください。
現在はいくつかの取り組みを進めています。
その中でも力を入れているのが、ビアフェスです。クラフトビールだけでなく、フードやクラフト製品も楽しめるイベントとして準備を進めています。
また、EC事業にも取り組んでいます。酒類販売の免許を取得し、クラフトビールの販売に向けた体制を整えているところです。
さらに、利用者の好みや気分、その日のシチュエーションに合わせておすすめのビールを提案するアプリの開発も進めています。クラフトビールは種類が多く、何を選べばよいか迷うこともあります。そうした方が、自分に合った一杯と出会うきっかけになればうれしいですね。
そのほかにも、実際にブルワリーを訪れたり、ビールづくりを体験したりできるビールツアーも企画しています。
――今後挑戦していきたいことを教えてください。
ビアフェスについては、ただビールを飲んで楽しむだけのイベントにはしたくないんです。
テーマとして掲げているのが「未来に乾杯」です。
例えば、ビール製造の工程で出る副産物を活用したグラスづくりなど、サステナブルな取り組みも取り入れていきたいですね。
また、ビールとフードのペアリングにも力を入れたいです。この料理にはこのビールがおすすめです、このビールにはこの料理が合いますといった提案ができれば、クラフトビールの楽しみ方ももっと広がるはずです。
人と人がつながり、新しい出会いが生まれる。そして、そのつながりが未来へ続いていく。そんな場をつくっていきたいです。
挑戦に遅すぎることはない
――仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。
休日はウォーキングや山歩きを楽しんでいます。自然の中を歩くことで気持ちもリフレッシュできますし、仲間と交流する時間にもなっています。
以前はサッカーも続けていましたが、怪我をきっかけにやめました。一人で会社を経営している以上、健康管理は欠かせません。日頃から体調管理には気を配るようにしています。
――最後に、読者へメッセージをお願いします。
挑戦には勇気が必要です。特に50代を超えると、どうしても守りに入ってしまう人も多いと思います。
私自身も長年勤めた会社を離れ、新しい挑戦を選びました。自分が本当に何をしたいのか、一度しっかり考えてみることは大切です。
もちろん家族の理解も必要ですし、簡単な決断ではありません。それでも、本当にやりたいことがあるなら、一歩踏み出してみる価値はあると思います。