木の価値を未来へつなぐ――清水材木店が家具づくりの先に描く山づくり
株式会社清水材木店 代表取締役 江崎 奨平氏
創業60年を迎えた株式会社清水材木店は、材木店として培ってきた知識と技術を生かし、現在はオンラインを軸としたオーダーメイド家具の製造・販売を手掛けています。無垢材にこだわった家具づくりだけでなく、その先にある山や森林の未来まで見据えた事業展開を進めているのが特徴です。本記事では、代表取締役の江崎奨平氏に、事業へのこだわりや経営に対する考え方、今後の展望について伺いました。
目次
無垢材へのこだわりから生まれたオーダーメイド家具
――現在の事業内容と、こだわりについて教えてください。
当社は長年材木店として事業を続けてきました。そのため、家具づくりにおいても無垢材を使うことに強いこだわりを持っています。また、自分が経営を担う以上、「木に関係しないことはやらない」と決めています。
製造についても岐阜の自社工場で行い、お客様一人ひとりの要望に応えるオーダーメイド家具を、自社で責任を持って製作しています。
――家具事業へ転換された経緯を教えてください。
祖父が営んでいた材木店を引き継いだことがきっかけです。私はもともとシステムエンジニアとして働いており、木材業界とは無縁でした。当時は祖父も高齢となり、事業を終える話も出ていましたが、長年続いた会社をなくすのはもったいないと考え、事業を引き継ぐことを決意しました。
しかし、従来の事業をそのまま続けるのは難しい状況でした。そこで、今ある設備や材料を活用できる方法を考え、まずはDIY向け木材の販売を開始しました。その後、お客様から「脚も欲しい」「テーブルとして販売してほしい」といった声をいただくようになり、家具づくりへと発展していきました。大量生産ではなく、お客様の要望に応えるオーダーメイドという形が自然な流れでした。
木の価値を高め、山へ還元する未来を目指して
――会社として大切にしている考え方を教えてください。
今取り組んでいる家具事業は、木材業界でいう「川下」の仕事です。しかし、本当に目指しているのは、木を育てる山や林業まで含めた「川上」に関わることです。
現在の山にはさまざまな課題があります。その課題を解決するためには、木の価値を高め、その価値を山へ還元していく仕組みが必要だと考えています。木に関わる仕事をしているからこそ、木の立場に立って考えたい。その思いを軸に事業を進めています。
特に、「国産広葉樹」の需要を生み出すことが重要だと考えています。家具として木材の価値を高め、国産材の活用を広げることで、山の未来にもつなげていきたいと思っています。
祖父の背中から学んだ「物を大切にする心」
――経営の軸となる価値観について教えてください。
祖父から直接何かを教わったことはほとんどありません。昔ながらの職人でしたので、「背中を見て覚えろ」というタイプでした。
それでも、祖父の仕事ぶりや普段の生活を見ている中で、「物を大切にすること」の大切さは自然と身につきました。道具を何十年も使い続けたり、日常生活でも物を無駄にしなかったりする姿が印象に残っています。
木材加工ではどうしても端材が出ますが、できる限り無駄が出ないよう工夫していました。その姿勢は、現在の家具づくりにも受け継がれています。
見守ることで人は成長する
――社員とのコミュニケーションで意識していることはありますか。
危険な機械の使い方や基本的な作業はしっかり教えますが、その後は必要以上に口を出さないようにしています。
人は自分で考え、実践し、成功や失敗を経験することで成長します。時間はかかりますが、その過程を待つことが大切だと思っています。失敗しても、その責任は会社が負えばいい。その経験を次に生かして成長してもらえれば、それが一番だと考えています。
――採用ではどのような人物を求めていますか。
経験よりも人柄を重視しています。未経験者でも木が好きになってくれる人、興味を持ってくれる人であれば歓迎しています。
木材業界全体では高齢化が進んでいます。そのため、経験者を奪い合うのではなく、未経験の若い世代に興味を持ってもらい、この業界に入ってもらうことが大切だと考えています。
家具づくりから山づくりまで、一貫したものづくりへ
――今後の展望について教えてください。
将来的には、丸太の仕入れから製材、乾燥、家具製作まで、自社で一貫して行える体制をつくりたいと考えています。その先には山を購入し、林業にも取り組み、木を育てるところから家具になるまでを自社で手掛けることを目指しています。
また、これまで木で作られてこなかったものを木で表現する挑戦も続けていきます。最近では、次世代電動昇降デスク「木動デスク」を開発しました。従来は金属製が一般的だった部分にも木を取り入れ、日本の住空間になじむ新しいデザインを提案しています。
今後も新しい製品づくりに加え、SNSやYouTubeなども活用しながら、木の新たな可能性を発信していきたいと考えています。
木に関わることだけを続け、その価値を未来へ
――最後に、経営の中で譲れない思いを教えてください。
会社として一番大切にしているのは、「木に関係しないことはやらない」という考えです。事業を続けていると、木とは関係なく利益を出せる仕事も見えてきます。しかし、それでは自分たちが目指している未来にはつながりません。
木の価値を高め、その価値を山へ返していく。そのために家具をつくり、新しい需要を生み出していくことが、自分たちの役割だと考えています。これからも木に向き合い続けながら、未来につながる事業を育てていきたいと思っています。