小さな変化から大きな価値を生み出す――株式会社WOWNが挑むAIとハードウェアの未来
株式会社WOWN 代表取締役 藤岡 拓己氏
株式会社WOWNは、Web系を中心としたソフトウェアの受託開発を手がける企業です。AIを活用した業務管理ツールの開発に注力する一方、水中ドローンをはじめとするハードウェア領域にも事業の幅を広げています。未経験者をエンジニアとして育成し、単に指示されたものを作るのではなく、顧客のビジネスまで考えられる人材を育てることも同社の特徴です。藤岡拓己氏に、起業までの歩みや事業の強み、AI時代を見据えた今後の展望について伺いました。
目次
AIを軸に、ソフトウェアからハードウェアまで
――現在の事業内容について教えてください。
主な事業はソフトウェアの受託開発です。そのうち7割以上がWeb系の開発で、残りの2〜3割では、水中ドローンの開発や、OSに近い領域のソフトウェアなど、ハードウェア寄りの案件にも取り組んでいます。
以前はWeb制作にも力を入れていましたが、現在は社内で制作を内製する体制からは撤退しています。事業自体は継続しているものの、今後はソフトウェア開発や自社サービス、ハードウェア領域に、より力を集中していく方針です。
――現在、特に力を入れているサービスは何でしょうか。
「ハーバスク」というAI業務管理ツールの開発に注力しています。スマートフォンなどから依頼をすると、AIが業務を引き受けるというサービスです。
本質的には、パソコンに向かって行う仕事の多くをAIに任せられるようにするためのプラットフォームです。Googleカレンダーと接続すれば、予定の確認や登録ができます。調査を依頼すると、AIがブラウザを操作して必要な情報を探すことも可能です。
起業を目指し、ITを事業の武器に
――経営の道に進まれたきっかけを教えてください。
18歳の頃に家を出たことが、最初のきっかけです。親が経営をしていたこともあり、当時は家族を見返したいという思いから、自分の中に経営という選択肢しかありませんでした。
もともと起業するための手段としてプログラミングを学び始めましたが、仕事を続ける中で、最終的には事業部長に近い立場まで経験させてもらいました。約8年間勤めた後、準備が整ったと考え、30歳の時に会社を設立しました。
未経験者を育て、顧客の事業まで考える
――採用や育成で大切にしていることは何でしょうか。
当社では、基本的に全員を未経験から育てています。経験や高度なコミュニケーション能力よりも、真面目に仕事へ向き合えることや、顧客志向を持てることを重視しています。
私たちが考えるエンジニアは、言われたものをそのまま作る人ではありません。お客様がどのようなビジネスをしていて、今後どのように発展する可能性があるのかまで考え、その先を見据えた設計ができる人です。そのため、末端のエンジニアであっても、基本的にはお客様と直接接点を持つようにしています。
仕事を細かく分業すれば、担当する作業だけに集中できます。一方で、それによって顧客への意識を失うこともあると考えています。エンジニアが単にプログラムを書くための道具になるのではなく、自立し、自分の仕事が誰のためにあるのかを考えてほしいと思っています。
AI時代を見据え、ハードウェア領域へ
――今後、力を入れていきたい取り組みを教えてください。
短期的には、「ハーバスク」を広めていくことに注力します。中長期的には、ハードウェア領域を伸ばしていきたいと考えています。
ソフトウェア開発の仕事は、今後AIに置き換わる部分が増えていくでしょう。顧客のビジネスを理解し、考えながら提案できる仕事は残ると思いますが、ソフトウェアだけを戦場にすると、競争できる領域が狭くなっていくと感じています。
そこで当社が目指しているのが、ハードウェアとソフトウェアをつなぐ領域です。現在は水中ドローンの開発に参画し、ネットワークやソフトウェア、ハードウェアから受け取った信号の処理などを担当しています。
――水中ドローンでは、どのような活用を想定していますか。
現在、ドローン単体では釣りの市場を一つの対象として考えています。釣りをする人は、水中にどのような魚がいるのか分からないまま釣り糸を投げています。水中ドローンを使えば、実際に水中の状況を確認できます。
漁業や海洋研究においても、ダイバーが潜る代わりにドローンを沈めることで、費用を抑えられる可能性があります。水中の設備を点検するなど、メンテナンス分野でのお話をいただくこともあります。
変化の速さに向き合い、人と事業を育てる
――現在、向き合っている課題は何でしょうか。
一つは、AIの成長が想像以上に速く、今後の動きを読み切れないことです。もう少し時間をかけて進めようと考えていたことも、早く実行しなければならない状況になっています。
人材育成についても課題を感じています。技術面は比較的育てやすい一方で、仕事に対する意識や考え方を変えるのは簡単ではありません。社員それぞれの生活や仕事への向き合い方が異なる中で、どこまでを求め、給与や満足度、成果のバランスをどのように設計するかは難しい部分です。
社員が変化の時代を生き抜ける会社に
――事業を通じて、社会をどのように変えていきたいですか。
AIが進化し、その先にフィジカルAIやロボットが普及すれば、人間に必要なものの多くをAIやロボットが生産する時代が来るかもしれません。仕事が趣味の延長になったり、一つのテーマを長く研究したりするような社会になる可能性もあると思っています。
ただ、その社会へ切り替わる過程は、とても大変なものになるでしょう。まずは当社の社員が、その変化の中でも生き残れるようにしたいと考えています。当社を離れたとしても、自分の力で生活していける人材に育てることを意識しています。
当社から巣立った人が、さまざまな会社で活躍し、社会を良くしていく。そのような流れをつくることも、会社として目指してきたことの一つです。
小さな変更で、大きな影響を生み出す
――経営において、譲れない考えを教えてください。
経営理念として掲げているのが、「緩やかな変革をデザインする」という考えです。なるべく小さな変更によって、大きな影響を生み出したいと思っています。
人材育成においても、大きなストレスを与えて成長させるのではなく、できるだけ小さな負荷で大きな成長につなげたい。ソフトウェアでも、小さな修正で最大の効果を生み出し、小さなコストで大きな利益を得ることを意識しています。
大きな資本や規模だけに頼るのではなく、小さな変化を積み重ね、その先に大きな成果を生み出す。バタフライエフェクトのような考え方を、経営や事業のあらゆる場面で大切にしています。
散歩や旅先で気持ちを切り替える
――休日の過ごし方やリフレッシュ方法を教えてください。
現在は子育てが忙しく、休日にまとまった時間を取ることは多くありません。出張で地方へ行った際には、一人でバーやスナックを巡ることがあります。
会社のある湘南にいる時は、海の近くを歩いたり、海の家で焼きそばを食べながら仕事をしたりすることもありました。海を眺めながら過ごす時間が、気持ちの切り替えになっています。