精密機器のクラウド化を段階的に支援し、現場で長く使われるシステムをつくる

アルドネット株式会社 代表 サファ・ローラン氏

アルドネット株式会社は、日本の精密機器メーカーに向けて、クラウド連携システムの開発と提供を行っています。既存製品に遠隔制御や遠隔管理などの機能を加え、人材不足への対応や業務プロセスのデジタル化を支援する事業です。顧客の要望を段階的に取り入れ、納品後も長く支える姿勢を大切にしています。

精密機器を「もの」から継続的なサービスへ

――現在の事業内容について教えてください。

当社は、日本の精密機器メーカーを主な顧客として、クラウド連携システムの開発と提供を行っています。既存の製品に現代のニーズに合った機能を加え、これまで「もの」として提供されていた製品を、継続的なサービスへ発展させるための支援です。精密機器の遠隔制御や遠隔管理、人材不足への対応、業務プロセスのデジタル化などに関わっています。

当社の特徴は、最初にすべての仕様を決めて一気に開発するのではなく、顧客の状況にあわせて段階的に進めることです。開発を進めるなかで、顧客自身が本当に必要な機能や、次に実現したい内容に気づく場合があります。途中で要望が変わったときも、その背景を確認しながら柔軟に対応します。

――他者にはないポイントを教えてください。

指定されたハードウェアや古いコードがあるために、ほかの企業が対応をためらう案件もあります。当社は使いやすさを優先し、現状を分析した上で、実行可能な解決策を考えます。新しく見栄えのする技術を採用することよりも、信頼性があり、安心して導入できる技術を選ぶ方針です。

また、国内外の拠点をまたぐ開発経験があります。私はフランス語と英語に対応でき、文化や言語の違いを踏まえながら、日本企業と海外企業の共同開発も支援しています。現在の顧客は日本企業ですが、海外向けのプロジェクトにも関わっています。

――サービスを提供するうえで大切にしていることを教えてください。

納品して終わりにしないことを大切にしています。当社には、10年以上使っていただいているシステムがあります。不具合が発生したときは迅速に対応し、顧客の負担をできる限り抑えることがモットーです。長い年月のなかで変化する要望に応じて、システムも継続的に更新しています。

当社は単なる受託先ではなく、顧客と同じ目線で考える協力相手でありたいと思っています。決められる部分から始め、対話を重ねながら方向を明確にしていきます。当社からもアイデアを出し、顧客と一緒に長く使える仕組みをつくる姿勢を大切にしています。

技術者としての経験を、日本の中小企業の課題解決に活かす

――経営者として大切にしていることを教えてください。

私はフランスの大学でITを学び、卒業後はフランスとイギリスで約7年間、産業分野の開発に関わりました。その後、日本に移り、松下電器、現在のパナソニックに入社しました。開発者から研究者となり、デバイスネットワークやビル管理システムに関わる国際的なプロジェクトにも参加しています。

――起業した背景について教えてください。

大学時代から経営者を目指していたわけではありません。私が一貫して取り組みたかったのは、困っている人に、自分が持つITの知識で解決策を届けることです。日本の中小企業には、優れた製品を持ちながら、クラウドやスマートフォン向けの機能をどのように加えればよいのかわからない企業があります。技術者と研究者としての経験を、そうした企業の支援に活かしたいと考え、当社を設立しました。

仕事のなかで特にうれしいのは、開発したシステムが実際の現場で使われ、働く人の負担が減ることです。ある顧客では、人材不足によって残業が続き、毎月厳しい日程に対応していました。手作業をデジタル化して自動化した結果、数週間かかっていた業務を数日で進められるようになりました。そのシステムは、その後も継続して利用されています。

誰もが自分の意見を出せる環境づくり

――現在の組織体制について教えてください。

現在は少人数のコアチームを中心に、案件に応じて外部の専門エンジニアとも連携しています。長期的な支援体制を整えるため、今後は少しずつ人を増やす予定です。組織を運営する上で大切にしているのは、誰もが自分の意見を出せる環境をつくることです。

私は、上から指示を出し続けるのではなく、進む方向を示した上で、一人ひとりに自ら考えて動いてもらいたいと思っています。最終的な判断が必要な場面はありますが、社長に対して意見を言いにくい雰囲気では、チームとして機能しません。立場に関係なく、「私はこう考えます」と率直に伝えられる組織を目指しています。

採用では、学歴や経験、第一印象など、1つの要素だけで判断しないようにしています。面接で緊張して力を出せない人もいれば、面接での印象と実際の仕事ぶりが異なる人もいます。何が得意なのか、何をすることが好きなのかも確認しながら、その人を理解することが必要だと考えています。

AIとノーコードで、現場の発想を形にする

――今後の展望について教えてください。

今後挑戦したいのは、AIを宣伝のための言葉として扱うのではなく、現場で実際に使える形にすることです。AIを導入したという事実だけではなく、顧客の業務に無理なく組み込み、具体的な課題の解決につながる仕組みとして提供したいと考えています。

もう1つ力を入れたいのが、ノーコードやコードレスの技術です。プログラミングの知識がない人でも、画面上の操作によって必要な仕組みをつくれるようになれば、現場の人が持つアイデアを形にしやすくなります。現在開発しているシステムや自社製品に、そうした機能を組み込むことを検討しています。

――チームで動くことについてどう考えているかを教えてください。

現場をもっともよく知る人が、自分の発想をシステムに反映できれば、実用性の高い仕組みが生まれます。その実現には、チームの多様性も必要です。国籍や性別だけではなく、考え方や得意分野の違いを増やしたいと思っています。

技術者だけで構成された組織では、発想が似ている場合があります。ITの専門家ではなくても、コンテンツづくりが得意な人や、異なる視点を持つ人には多くのアイデアがあります。異なるスキルを持つ人が協力できれば、より強いチームをつくれると考えています。

――リフレッシュ方法について教えてください。

経営者になると、仕事と私生活を完全に分けることは難しくなります。それでも、料理や写真に取り組む時間は、仕事から離れて気持ちを切り替える機会になっています。私には娘が2人いますが、以前、娘から「社長になってから前よりパパとよく遊べるようになった」と言われました。

企業に勤めていたときは、月曜日から金曜日まで朝から晩まで働き、平日に家族と会えないこともありました。経営者になってからは、仕事が生活のなかに入る一方で、昼の時間を家族と過ごすなど、以前より家族との時間をつくれるようになりました。

長く仕事を続けるためには、自分の健康を管理することも経営の一部です。睡眠時間を確保し、体調に気を配らなければ、顧客や組織を支え続けることはできません。今後も仕事、家族、健康のバランスを整えながら、AIやノーコードを現場で本当に役立つ技術へ育てていきます。

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