女性が望む人生を選べる社会へ――ピルの民主化と「人を大切にする経営」
mederi株式会社 代表取締役 坂梨 亜里咲氏
オンラインピル診療サービス「mederi Pill(メデリピル)」と、企業の福利厚生として女性の健康を支援する「mederi for biz(メデリフォービズ)」を展開しているmederi株式会社です。目指しているのは、一人でも多くの女性が望むタイミングで妊娠や出産、キャリアを実現できる社会です。今回は、代表取締役の坂梨亜里咲氏に、事業に込めた思いや組織づくり、今後の展望、経営において大切にしている価値観について伺いました。
ピルを民主化し、女性の選択肢を広げる
――現在取り組まれている事業の特徴や強みについて教えてください。
現在は、オンラインピル診療サービスの「メデリピル」と、それを企業の福利厚生として導入していただく「メデリフォービズ」の二つを大きな軸としています。メデリフォービズは、女性活躍推進やダイバーシティ推進につなげていただくためのサービスです。
現在、日本におけるピルの服用率は、対象となる女性のうち6%台といわれています。一方、欧米諸国では20%から30%、国によっては40%に達しています。私は、ピルの服用率とジェンダーギャップ指数には相関があると捉えているんです。
女性が主体的に避妊や健康管理を行えることは、社会での活躍にもつながります。だからこそ、私たちは「ピルを民主化する」ということに力を置いています。
――会社のビジョンには、どのような思いが込められていますか。
私たちが掲げているビジョンは、「だれもが愛でりあえる社会へ」です。男女にはそれぞれ性差があり、得意なことにも違いがあると思います。そうした違いを受け入れ、お互いに支え合える社会にしたいという思いを込めました。
私自身、一人でも多くの女性が、望むタイミングで妊娠や出産、キャリアを実現できる社会にしたいと考えています。そのために、この会社を経営しているんです。
会社を守る責任と、学び続ける姿勢
――経営の道に進まれたきっかけを教えてください。
子どもの頃から経営者や起業家になりたいと思っていたわけではありません。大きなきっかけになったのは、大学時代の友人が起業したことです。その会社に新卒2年目から入社し、主体的、積極的に行動していく中で、起業が身近なものになりました。
自分で起業して特に違いを感じたのは、資金のやりくりや資金調達も経営者の重要な仕事になることです。会社を潰さないことを強く意識してきましたし、お金の使い方についても、よりシビアに検討するようになりました。
――経営判断において意識していることは何でしょうか。
私は経営学部出身ではなく、今回の起業を通して経営を学んできました。大学時代からの友人や、株主だった前澤友作さんなど、身近な経営者の姿から学び、自分自身も会社を進める中で数多くの判断を重ねてきたんです。
一方で、もう少し再現性の高い決断ができるようになりたい、自分の決断力をさらに高めたいという思いもあります。そのため、最近はMBAで経営を学び直しています。
傾聴と共感から生まれる主体的な組織
――社内のコミュニケーションで大切にしていることを教えてください。
現在は約20名の組織です。社員との距離が近いからこそ、私自身が意識しているのは「傾聴すること」ですね。
メンバーの意見を尊重して話を聞き、自分が正解だと決めつけて発言したり、行動したりしないようにしています。
また、女性が多い組織なので、コミュニケーションでは共感も非常に大切です。私から共感できる点を伝え、メンバー同士でも相手の言葉を受け止められる関係をつくりたいと思っています。
――社員の主体性を引き出すために、どのような工夫をしていますか。
小さな組織なので、自ら提案し、主体的に行動することが受け入れられる文化になっています。
具体的には、毎週月曜日の定例会で「先週あった気づき」を発表してもらっているんです。日々忙しく働いていると、自分が何を得たのか分からなくなったり、達成感を得にくくなったりします。ただ、日常の小さな業務の中にも、成長を感じる瞬間や振り返るべき点はあるはずです。
それらを自分で認識してほしいと思い、この取り組みを始めました。実際に導入してから、会社の雰囲気も少し良くなったと感じています。
――どのような方と一緒に働きたいと考えていますか。
常に前を向いている人ですね。仕事をしていれば、失敗はどうしても起こります。ただ、その失敗を今後どう生かすかによって、経験の価値は大きく変わるものです。
ネガティブな感情だけで終わらせず、「次はここを改善しよう」「この経験から得たことを生かそう」と考えられる方と一緒に働きたいと思っています。
企業や社会を巻き込み、医療へのアクセスを身近に
――今後、取り組んでいきたい挑戦について教えてください。
これまでは消費者向けにサービスを展開し、プロモーションにも力を入れてきました。ただ、ピルの市場を大きく広げるには、企業や社会を巻き込み、より上層の部分から意識を変えていく必要があると感じています。
企業向け福利厚生サービスのメデリフォービズは、消費者向けサービスよりも意思決定に時間がかかります。一方で、「勤務先の福利厚生として導入されているなら使ってみよう」と考える女性も多くいらっしゃいます。導入企業を増やし、企業や社会と一緒にピルの服用率を高めていきたいですね。
また、自由診療だけでなく、「ウェルクリ」という関連サービスで保険診療にも取り組んでいます。オンラインを通じて保険診療へのアクセスも身近にしていきたいと考えており、模索しているところです。
――今後の課題には、どのように取り組んでいきますか。
メデリフォービズを広げていくには、営業力が重要です。これまでは営業に強い人材が社内におらず、採用にも苦戦していました。
現在はレバレジーズ株式会社にグループインしており、親会社が持つ人材含めたリソースを活用できるようになっています。営業に強い人材にも参画いただいているため、さらに強化していきたいですね。
「ギブ」とスピードを経営の根幹に
――経営者として影響を受けた方について教えてください。
大きな影響を受けた方が二人います。一人は、大学時代からの友人であるAiIロボティクス株式会社の龍川誠さん。もう一人は、株主だった前澤友作さんです。
龍川さんは、自分の利益よりも、まず相手の利益を考える方なんです。「ギブ、ギブ、ギブ」の精神で物事を組み立て、本当にこれでもかというほど相手に与えます。その姿を近くで見て、私自身も実践してきたからこそ、今があると感じています。
前澤さんからは、あらゆる場面でスピードが重要だと教わりました。ユーザー体験も意思決定も、スピードが感動を生む。その考え方を学び続けた4年間でした。
人を大切にし、自分の利益よりも相手の利益を考えること。それはユーザーの方々だけでなく、関係者やメンバーに対しても同じです。
「ギブ、ギブ、ギブ」の精神とスピードを意識する経営スタイルは、これからも私の根幹にあり続けたいと思います。