徳島から全国へ――冷凍技術で水産食品の新たな価値を創造する挑戦
徳島大水食品株式会社 取締役営業統括部長 司馬 勝氏
徳島大水食品株式会社は、冷凍マグロを中心とした水産食品の加工・製造を手掛ける企業です。徳島の中央卸売市場グループの一員としてスタートし、長年培ってきた冷凍技術を強みに事業を展開してきました。近年では寿司ネタをはじめとする付加価値の高い商品の開発や独自の冷凍技術にも力を注ぎ、県外市場への販路拡大を実現しています。今回は取締役の司馬勝氏に、会社の歩みや経営への思い、今後の展望について伺いました。
徳島から全国へ広がるブランドづくり
――会社の成り立ちについて教えてください。
当社は徳島の中央卸売市場グループの会社として設立されました。私が高校卒業後に入社した頃、「これからは冷凍の時代になる」という考えのもと、冷凍事業を立ち上げることになり、その創業メンバーの一人として携わりました。以来41年間、この会社で冷凍マグロに携わっています。37歳で取締役となり、現在は経営全般を担っています。
――現在の事業の特徴や強みを教えてください。
当社は冷凍マグロを中心とした製造・加工を行っています。中央卸売市場のグループ会社であるため、市場に入荷した魚をすぐに加工できることが大きな強みです。
創業当初は冷凍マグロを「ロイン」の状態で販売していましたが、時代のニーズに合わせて加工技術を発展させてきました。現在では血合いや皮を取り除いた商品や、寿司ネタとして提供する商品が売上の半分以上を占めています。また、サーモンやイカなどの加工にも取り組み、水産加工品の幅を広げています。
――会社の理念やビジョンについてお聞かせください。
ビジョンとして掲げているのは、「徳島を拠点として全国で通用するブランドを確立すること」です。20年以上前から目標として掲げてきましたが、当初は県内での販売が中心でした。その後、展示会や県外の商談会へ積極的に参加し続けた結果、現在では県外売上が県内売上を上回るようになりました。
また、「水産食品の提供を通じて社会に貢献すること」を理念として掲げ、事業に取り組んでいます。
41年積み重ねた経験と冷凍技術へのこだわり
――経営を行う上で大切にしている考え方を教えてください。
41年間冷凍マグロに携わってきた経験と知識は、私にとって最も大切な財産です。その知識を活かしながら、新しい技術も積極的に取り入れています。
例えば、市販の設備ではなく、冷凍機メーカーと共同で独自のアルコール凍結機を開発しました。「アルコール凍結」によって魚の細胞が壊れにくくなり、鮮度を保ったまま寿司ネタやフィレを製造できるようになっています。設備投資を抑えながら、自社に最適な環境を構築できたことは大きな成果だと考えています。
――経営者として譲れないものはありますか。
冷凍マグロの加工方法や販売方法については、長年培ってきた知識があります。そのノウハウは簡単に譲れるものではありません。
今後もその経験を活かしながら、新しい商品づくりや製品化を進め、冷凍マグロの可能性をさらに広げていきたいと考えています。
全員が現場を理解する組織づくり
――組織運営で意識していることを教えてください。
当社は20名ほどの会社ですので、社員同士のコミュニケーションは欠かせません。その中でも特に力を入れているのが「多能工化」です。
例えば、マグロを切る担当者が魚も加工できるようにするなど、一人ひとりが複数の工程を理解し担当できる体制を目指しています。工程全体を理解することで、「どこが遅れているのか」「どこに人を配置すれば効率が上がるのか」を現場の社員自身が考えられるようになります。
それぞれの得意分野を伸ばしながらも、お互いの仕事を理解し助け合える組織づくりを進めています。
――採用や育成で期待する人物像はありますか。
現在は若い技術者の確保が課題の一つです。これまではスーパーや寿司店などで経験を積んだ方が多く入社していますが、今後は魚料理が好きな方や魚に興味を持つ女性にも積極的に活躍していただき、寿司ネタを加工できる技術まで身につけてもらえるような育成環境を整えていきたいと思っています。
独自の商品開発で新たな市場へ挑む
――今後の展望や挑戦したいことを教えてください。
現在力を入れているのが冷凍握り寿司の開発です。独自のアルコール凍結技術を活用し、何度も試行錯誤を重ねた結果、多くの方から「おいしい」と評価していただける品質まで高めることができました。
今後はBtoB向けの展開だけでなく、インパクトのある商品づくりにも挑戦し、当社ならではの商品として発信していきたいと考えています。
また、海外展開も視野に入れています。海外輸送では時間がかかるため、ご飯の白蝋化や品質維持といった課題がありますが、それらを解決しながら海外でも通用する商品づくりを進めています。
さらに、マグロ加工を軸としながら、刺身だけではない新しい食べ方や商品の提案など、「ここでしかできないもの」を今後も発信していきたいと考えています。
カフェで人と語り、次の発想を育む
――仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。
休日はカフェへ行くことが多いですね。お店の方といろいろな話をしながらゆっくり過ごすことで、気持ちをリフレッシュしています。また、休日前には食事やお酒を楽しむこともあります。
長年積み重ねてきた冷凍技術と現場で培った経験を活かし、これからも新たな商品づくりと全国、そして海外へ向けた挑戦を続けていきます。