生産から販売までをつなぎ、農業の未来をつくる――TATSUJIN株式会社が目指す世界に届く農業

TATSUJIN株式会社 代表取締役 森下 晃行氏

TATSUJIN株式会社は、農産物の生産・販売を軸に、農家への支援や農業に関連する不動産賃貸などを手がけています。自社だけで生産を完結させるのではなく、農家と連携しながら品質や商品の方向性を設計し、マーケティング、販売までを担うことが特徴です。さらに、田んぼの有効活用や生産環境の整備、人材育成にも取り組み、世界に農産物を届けられる体制づくりを目指しています。代表取締役の森下晃行氏に、事業への考え方や組織づくり、今後の展望について伺いました。

生産だけでなく、売れる仕組みまで設計する

――現在の事業内容や特徴について教えてください。

当社は農業を中心に複数の部門で事業を展開しています。生産部門では「マルモリファーム」として、次郎柿をはじめとした柿や、トウモロコシの「甘々娘」「甘太郎」などを扱っています。

すべてを自社で生産するのではなく、一部を農家の方に自社ノウハウを渡しながら栽培に協力いただいた農産物を当社が売り先を決めて買い取る形も取り入れています。

また、先に栽培費用を出資して、指定の自社農法で栽培を管理する仕組みも取り組んでいます。

イメージとしては、Apple社のようにマーケティングを行い、革新的な商品を設計し、良いものを作って売れる仕組みをつくることです。

販売については私自身がマーケティングやセールス、システムデザインを担当しています。

また、行政や建設・土木関係の事業者と連携し、農地を改良して有効活用するプロジェクトや、農家への支援にも取り組んでいます。不動産賃貸では、農業に携わる外国人材向けのシェアハウスなども運営しています。

少数精鋭を支える「Aプレイヤー」という考え方

――組織づくりで大切にしていることを教えてください。

当社は少数精鋭の組織です。以前の経験から、現在は「Aプレイヤー」と呼べる人材と働くことを特に重視しています。

私が考えるAプレイヤーとは、能力だけが高い人ではありません。自分より優れた人と働きたいと思えることや、細かな部分にも気づけることが大切です。

例えば、Bプレイヤーは自分より劣る人を採用して、自分のポジションを脅かさない人と仲良くして仲間になろうとします。しかし、Aプレイヤーは平気で自分より優秀で細かな気配りができる人間と仕事をしたいと思います。そうした小さな行動にも、その人の姿勢が表れると思っています。他にも10億円から100億円企業へスケールアップさせたことがある人など、既に実際に達成したことがある自社文化に合った人などがAプレイヤーに該当します。

――採用では、どのように人を見極めていますか。

特性を見るために「ウェルスダイナミクス」なども活用していますが、最終的には一緒に働いて判断しています。一度、「タイミー」などを通じてまず働いてもらい、周囲への気配りや仕事への姿勢を見ます。

そこで当社の基準に合う方を直接雇用のアルバイトとして迎え、さらに1~2年ほど働いてもらったうえで正社員にする場合もあります。時間をかけて見極めながら、将来のAプレイヤーとなる人材を見つけていく考えです。

「GLOBALG.A.P.」を軸に世界へ

――今後、会社として挑戦していきたいことは何でしょうか。

大きなキーワードが「GLOBALG.A.P.」です。農薬の使用記録などを含め、生産工程を細かく管理する仕組みで、当社も取得を目指しています。

目標は、生産だけ、販売だけを担う会社ではありません。誰が、どの畑で、その周りはどんなリスクがあるか、どのように作ったものなのかを把握し、生産から販売まで一貫して管理する。そのうえで、安心できる品質の高い農産物を世界へ届けたいと考えています。

マーケティングで売れても、品質が伴わなければ意味がありません。農家への支援や農地の環境づくり、テクノロジーを使ったトレーサビリティまで含め、生産から販売までをつなげていくことが当社の目指す姿です。

――特に田んぼの活用に注目されているそうですね。

田んぼは、日本の農業における大きな強みだと思っています。水を張れるため暑さへの対応にも可能性がありますし、整備された景観そのものにも価値があります。

現在考えているのは、田んぼで米だけを作るのではなく、米、レタス、トウモロコシなどを組み合わせて土地を有効活用することです。農家の所得を高めながら品質も上げ、当社がブランディングやマーケティングを担う。そして、若手の農家が手を挙げたけど入口で去っていくという人を減らして、そうした仕組みを地域に広げていきたいです。

農家が挑戦を続けられる環境をつくる

――農業が抱える課題を、どのように捉えていますか。

新しく農業を始めた若い人たちが、資金や人手、設備などの問題で苦しみ、辞めていく姿を何人も見てきました。農業は作業量が多い一方で、売上が安定するとは限りません。自然災害や鳥獣被害、盗難、資材価格の上昇など、自分ではコントロールできない要素も多くあります。

だからこそ、農家が安心して生産に集中できる仕組みが必要です。例えば、先に資金を渡して生産してもらい、納品された分をそこから精算し、一定量を超えればさらに利益が得られるような契約の仕組みも考えています。

お金だけではなく、ノウハウや生産環境も提供する。新規就農者が何もない状態からすべてを背負うのではなく、ある程度整った環境から挑戦できるようにしたいと思っています。

失敗を失敗のまま終わらせない

――経営するうえで、最も大切にしている考え方は何でしょうか。

「失敗を失敗とさせないこと」です。

その瞬間だけ見れば失敗だったとしても、時間が経ったときに「あれがあったから今がある」と思えることがあります。だから、自分で失敗だと決めて終わらせないようにしています。

周囲の意見も一つの情報として受け止めますが、最後は自分で決めます。主体性を持って判断し、自分で選んだことを結果につなげていく。その姿勢は、これまで崩したことがありません。

ゴルフから学ぶ、無駄を削ぎ落とす経営

――休日のリフレッシュ方法を教えてください

パーソナルトレーナーに食事管理やトレーニングを見てもらっていて、それ自体がストレス発散になっています。一番の趣味はゴルフですね。今は農業ゴルフ経営というポッドキャスト配信しており、さらに農業しくじり先生という番組も配信予定です。

私は基本的に練習をほとんどせず、その中でどう結果を出すかを考えることが好きなんです。無駄な努力をせず、必要なものを見極めて結果につなげる。余計なものを削ぎ落として、本当にやるべきことに集中するという意味では、経営にも通じるものがあります。

ゴルフを通じてさまざまな人とつながることもできますし、楽しみながら勉強もできる。私にとっては、経営や人生にもつながるスポーツです。

――これから農業を通して、どのような社会をつくりたいですか。

田んぼをもう一度有効的に使い、農家がきちんと所得を得られ、人が集まる地域をつくっていきたいです。まずは人目につく地域で、そうした産地を増やし、そこから全国へ広げていきたいと考えています。

私の中には、二宮尊徳のように地域を立て直していくイメージがあります。農地を整え、農家が生産し、当社が品質や販売を支え、地域に人が戻ってくる。その仕組みを一つずつつくりながら、日本の農業の良さを将来的には世界にも届けていきたいです。

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