ホラーとテクノロジーで切り拓く新しいエンターテインメント――「怖いは楽しい」で世界の好奇心を満たす闇の挑戦
株式会社闇 代表取締役社長CEO 荒井 丈介氏
株式会社闇は、ホラーというジャンルにテクノロジーや映像表現を掛け合わせ、新しいエンターテインメントを生み出そうとしている企業です。放送局グループの一員としてメディアのネットワークとクリエイティブを掛け合わせながら、独自のホラーコンテンツを生み出してきました。本記事では、代表の荒井丈介氏に、事業の特徴やホラー文化への考え方、そして今後の展望などについて伺いました。
放送局グループの中で生まれたホラーエンターテインメント企業
――まず、御社の事業の立ち位置について教えてください。
当社は、2015年に大阪で創業した企業です。現在は大阪の放送局であるMBSメディアホールディングス傘下のグループ会社として事業を展開しています。
デザイナーやエンジニアなどクリエイティブなメンバーが集まり、「ホラー」というジャンルにデザインやテクノロジーを掛け合わせて新しい体験を生み出すことを目指してスタートした会社です。私自身は放送局の社員で出向という形でこの会社の経営を担っています。いわば半分サラリーマンのような立場で社長を務めている形です。
――経営に関わることになったのには、どのような背景がありましたか。
私が代表を務めることになったのは、2018年です。放送局の立場から見ても、新しい事業を生み出す必要性が高まっていた時期でした。テレビやラジオは長い歴史を持つメディアですが、若い世代との接点が少しずつ変化してきているのを感じていました。
私自身は、放送局員のイベントプロデューサーでした。そのなかでたまたまホラーイベントに関わる機会がありました。何年か取り組むなかで、ホラーというジャンルが特に若い世代、さらに言えば女性を中心に強く支持されていることを実感しました。そうした層とコミュニケーションできるチャネル(コンテンツ)を持つことは、放送局グループにとっても意味のある挑戦になると考えたのです。
「ホラー×テクノロジー」で新しい体験をつくる
――事業の特徴について教えてください。
当社の原点は、「ホラー×テクノロジー」という考え方にあります。創業者がホラーを非常に愛していて、そこにデザインやテクノロジーを掛け合わせることで、これまでにない体験を生み出せるという発想から事業が始まりました。
これまでには、テーマパークでのお化け屋敷の企画や、ホラー映画のプロモーション、企業PRなどにも取り組んできました。ホラーというジャンルを軸にしたさまざまなプロジェクトに関わっています。
――現在はどのような事業展開をされていますか。
現在は少しフェーズを変え、クライアントワークを続けながらも、自社のIP(自社が創作・保有しているキャラクターや作品、世界観などの知的財産)を生み出すことに力を入れています。
その一つが、AIを活用したエンターテインメントです。AIをベースにした体験型コンテンツの開発などを進めています。また、映像制作の領域にも取り組んでおり、映画などの映像作品の制作も視野に入れています。
このように、テクノロジーと映像という2つの軸で、ホラーというジャンルの可能性と魅力を広げていこうとしているところです。
日本文化としての「恐怖」を世界へ
――ホラーというジャンルの可能性について、どのように考えていますか。
ここではあえて、「ホラー」ではなく「恐怖」と表現させてください。
私は、日本は恐怖という表現を非常に洗練させてきた国だと思っています。文学や民話、落語、能など日本の文化には怖い物語が多く存在します。幽霊画のような美術の分野も含め、恐怖をテーマにした表現がさまざまな形で発展してきました。
さらに映画の世界では「リング」のような作品が世界的にヒットし、いわゆるJホラーという言葉も生まれました。つまり、日本はもともとホラー文化の土壌を持っている国なのです。
それでも、日本国内ではホラーエンタテインメントの評価が高いとは言えないのが実状です。
海外ではホラーは非常に人気のあるジャンルで、エンターテインメントの王道の一つとして扱われています。ハロウィン文化のように、恐怖の要素がファッションやイベントとして楽しまれている例もあります。
一方、日本では、ホラーが少しタブーのように扱われている部分があります。好きだと言うと、少し変わっている人だと思われるような雰囲気もあります。しかし本来は、ホラーは日本が長い時間をかけて育んできた文化でもあるはずです。
このギャップを埋めていければ、日本発のポップカルチャーとして新しい価値を生み出せるのではないかと考えています。
現場の感性を尊重する
――組織運営で意識していることを教えてください。
会社の規模が小さかった頃は、私自身も現場のプロジェクトに細かく関わっていました。ただ、組織が成長するにつれて、経営のスタイルも変える必要があると感じるようになりました。
今は、できるだけ担当プロデューサーに任せることを意識しています。特にエンターテインメントの分野では、世代によって面白いと感じるものが大きく変わるため、50代の経営者の感覚だけで判断するべきではないと思っています。
――若いメンバーの感性を尊重しているのですね。
そうですね。そもそもターゲットも若い世代ですし、私より、現場のメンバーのほうが感覚的には近いはずです。だからこそ、彼らが面白いと思うことを実現できる資本含めた環境をつくることが重要だと考えています。
経営としての役割は、その挑戦を止めないこと、そして必要なリソースを用意することだと思っています。
「怖いは楽しい」で世界中の好奇心を満たす
――今後の展望について教えてください。
現在は、会社として研究開発のフェーズに力点を置いています。短期的な利益だけを追うのではなく、将来の柱になるコンテンツを生み出すための投資を行っている段階です。
自社IPの創出やAIエンターテインメントの開発に加えて映像制作会社との連携も進めており、映画や映像コンテンツの制作にも取り組んでいます。
――最後に、読者へのメッセージをお願いします。
当社のコーポレートビジョンは、「「怖いは楽しい」で世界中の好奇心を満たす」というものです。怖いという感情は、人間の大きな感情の一つです。泣くことや笑うことと同じように、人を強く動かす力があります。感情エンタメですね。
ホラーというジャンルには、まだまだ大きな可能性があります。エンドユーザーとして多くの方に楽しんでいただくことはもちろん、企業の方々ともさまざまな形で新しい取り組みができると思っています。
怖いものが苦手だからと遠ざけるのではなく、「一緒に遊んでみよう」という感覚で関わっていただけたらうれしいです。そうした出会いのなかから、新しいエンターテインメントが生まれていくのではないかと考えています。
株式会社闇
- URL
- https://yami.net