お寺と神社の“何でも屋”として──日本文化の根幹を未来へつなぐ挑戦

寺社フレンズ合同会社 代表社員 草野俊哉 氏

寺社に関わる幅広い課題に向き合い、独自の立ち位置で事業を展開する寺社フレンズ合同会社。結婚相談所から始まった取り組みは、やがて寺社そのものを支える事業へと広がっていきました。見えにくい業界の内側に踏み込みながら、「お寺・神社の何でも屋」として現場に寄り添い続ける草野氏。本記事では、事業の背景や理念、組織のあり方、そして今後の展望について伺いました。

お寺・神社の“何でも屋”として向き合う現在地

――現在の事業内容について教えてください。

今は一言で言うと、お寺や神社に関わる仕事をしています。自分の立ち位置としては「お寺・神社の何でも屋」というのが一番しっくりきます。何か一つのサービスに特化しているわけではなく、現場ごとに違う課題に対して、その都度できることをやっていく。そんな関わり方を続けています。

実際に関わる中で感じるのは、お寺や神社の困りごとは本当に幅が広いということです。経営的な話もあれば、人の問題もあるし、地域との関係性もある。一つの正解があるわけではないからこそ、その場ごとに考えて動く必要があります。そういう意味では、決まった型がないこと自体が、この仕事の特徴かもしれません。

――事業の強みはどこにあるのでしょうか。

強みは、お寺や神社の内情をある程度理解したうえで話ができる点です。表から見える部分だけではなく、実際の運営や現場のリアルを踏まえて考えられる。それがあるからこそ、机上の空論にならずに済んでいると感じています。

特に、お寺や神社は外からは見えにくい独特の構造や慣習があります。その中で何が課題なのか、どこに手を入れるべきなのかを一緒に整理できる存在は多くありません。だからこそ、“何でも屋”という立ち位置で横断的に関われること自体が価値になっていると感じています。

さらに、人と人をつなぐ役割も大きいと考えています。単体では解決できない課題に対して、適切な人材や知見をつなぐことで可能性が広がっていく。そうした関係性のハブとして機能できることも、この事業の特徴です。

結婚相談から見えた課題と、日本文化への危機感

――事業を立ち上げた背景を教えてください。

結婚というテーマで深く話を聞いていくと、単なる相性の問題では終わらない現実が見えてきました。お寺の事情や後継者の問題、経済的な不安など、個人の選択に影響する要素が多すぎる。

さらに話を聞いていくと、「なぜ続かないのか」「なぜ選ばれにくいのか」という構造的な課題にもぶつかります。結婚という入り口から見えてきたのは、寺社を取り巻く環境そのものの厳しさでした。

だからこそ、結婚だけを支援しても本質的な解決にはならないと感じたんです。そこから、お寺や神社が抱える課題を丸ごと支える方向へと舵を切りました。

――理念やビジョンについて教えてください。

お寺や神社は、日本文化の根幹だと考えています。ただ現実はかなり厳しく、後継者不足や収入の問題で続けられないところが増えている。現場の話を聞くほど、その危機感は強くなっていきました。

もちろん、自分一人で状況を変えられるとは思っていません。それでも、関わった分だけでも何か残せたらいい。そんな感覚で向き合っています。大きな理想を掲げるというよりは、目の前の一つひとつをどう支えるか。その積み重ねが結果につながればいいと感じています。

好き嫌いで決める経営と、組織を持たない選択

――経営者としての考え方を教えてください。

判断基準はとてもシンプルで、自分が面白いと思うかどうかです。好きか嫌いか、それだけで決めていると言ってもいい。合理性よりも、自分の感覚を優先しています。

一見すると危うい判断軸かもしれませんが、これまでやってきた中で、自分にとっては一番ブレないやり方でした。面白いと思えることじゃないと続かないし、逆にそこに納得感があれば、多少の困難は乗り越えられる。そういう感覚でやっています。結果よりも「自分がどう感じるか」を大切にしてきたことが、今につながっている実感があります。

――組織づくりについてはどのように考えていますか。

今は社員を増やすつもりはありません。過去の経験もあって、一人でやると決めています。その代わりに、コラボできる仲間は増やしているところです。

一緒にやる相手については、「お寺や神社のことを知っているかどうか」を重視しています。好きという気持ちだけでは足りない。現場を理解している人でないと、結局うまくいかないと感じています。そこははっきり線を引いている部分です。その基準を守ることで、無理のない関係性が築けていると感じています。

残る寺と消える寺、その間にある可能性へ

――今後の展望について教えてください。

体感として、お寺が100あるとすると、そのうち確実に残るのは一部だけです。残りの多くは厳しい状況に置かれている。そういう現実を日々見ています。

その中で自分が関わりたいのは、「頑張ればまだなんとかなる」位置にいるお寺です。すでに安定しているところでも、どうやっても難しいところでもなく、その中間にある存在。少しの工夫や支援で未来が変わる可能性がある場所に力を使いたいと考えています。

実際には地道な取り組みがほとんどです。結婚の問題や後継者の問題など、すぐに成果が出るものではない。それでも、その積み重ねが未来を変える可能性につながる。現場に近いところで関わり続けることに意味があると感じています。

小さな変化を一つずつ積み上げていくしかない。その現実を受け入れたうえで、できることをやり続ける。それが今のスタンスです。すぐに結果が見えなくても、関わり続けることでしか変わらない領域だと思っていますし、その積み重ねが気づいたときに大きな違いになっていると信じています。

トラブルを受け流しながら進む──揺らがないスタンスと日常の整え方

――リフレッシュ方法を教えてください。

美術が好きで、以前はブログを書いていたこともあります。美術館に行く時間は、自分にとって静かに整う大切な時間です。作品と向き合うことで、頭の中が自然と整理されていく感覚があります。

もう一つは食事です。バイキングや食べ放題が好きで、食べている時間は純粋に楽しい。年齢的に量は減ってきましたが、それでもあの時間は特別です。

静と動、両方の時間を持つことで、自分のバランスを保っている。そうやってまた次の仕事に向かっていく。その繰り返しが、自分のリズムになっています。

――大切にしている価値観を教えてください。

これだけは譲れないという強い軸は、正直あまりありません。ただ一つ言えるのは、トラブルを抱え込みすぎないことです。お寺の世界に関わっていると、本当にいろいろな問題が起きます。

それを全部真正面から受け止めていたら、前に進めなくなってしまう。だからこそ、ある程度は受け流す感覚を持つようにしています。「そういうこともある」と距離を取ることで、次に進める余白が生まれる。

大事なのは、お寺や神社を支えるという目的です。それ以外の細かいことに引っ張られすぎない。そのバランス感覚が、この仕事を続ける上では必要だと感じています。

これからも、目の前で起きる出来事に一つひとつ向き合いながらも、必要以上に抱え込まず、自分なりの距離感を保ちながら、お寺や神社の支えとなる活動を続けていきたいと考えています。

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